遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

ヒストンを制御する因子達

2012-03-28 22:34:40 | BIONEWS
産総研、「U7 RNA」が状況に応じて2つの遺伝子制御を行なうことを発見(マイナビニュース) - goo ニュース
マイナビニュースは、毎度詳しいバイオ関係のニュースをのせてくれるんですが、この記事はいたずらに長くてまとまりがなく、というか、無駄な情報多すぎ♪ 素人にも玄人にも読み辛いぞ。
U7 RNAという核内低分子量RNAのお話。これは合成期に発現するヒストンのmRNAをプロセッシングして成熟させる小さなRNAです。ヒストンはDNAが巻き付くコアを構成するタンパク質でしてDNA合成時に新たに必要になるので、合成期にのみ供給されます。ここら辺はまあ、想定内の機能なんですが・・・このU7 RNAは合成期以外の時にヒストンの発現抑制に必要であることが分かりました。この時にはU7 RNAの結合タンパク質hnRNPUL1が必要であることも示されました。このタンパク質はRNA結合領域に加えてDNA結合領域もあるので、この領域がヒストン遺伝子に結合して転写開始抑制に働いているのか、ヒストンの転写産物にU7 RNAをくっつけて(プロセッシング機能は阻害して)分解させてるのかよーわかりませんが、まあ合成期特異的なヒストンの発現の制御のキー因子であることは間違いないでしょう。
これはヒト細胞で明らかにされたのですが、出芽酵母のヒストンにも介在配列は存在します。出芽酵母の遺伝子では、ヒストンのようなハウスキーピング遺伝子にプロセッシングを必要とする介在配列がよく見られます。ヒストン以外だったら、チューブリンとかね。もしかしたら酵母でも同じメカニズムを使って細胞周期特異的発現制御を行ってるのかもしれません。

酵素が代謝抑制=メタボ治療に道―熊本大(時事通信) - goo ニュース
これも核内でのお話。主人公はLSD1 (Lysine-specific demethylase 1)。リジン特異的脱メチル化酵素をコードしております。リジンはタンパク質中でメチル基をくっつけられるアミノ酸残基でして、ヒストンのN端側でよくあるんですな。最近流行のエピジェネティクスであります。でも、この酵素は正反対の効果を持つヒストンH3のK4もK9も脱メチル化できるそうなんで、「どっちやねん?」てな感じです。
この記事では薬剤などを使ってLSD1の働きの邪魔をすると、エネルギー代謝や細胞内のミトコンドリアでエネルギーを作る機能が向上するということで、肥満マウスの高脂血症や脂肪肝などの症状が改善されたことが注目点となってますな。実は癌化にも関わっていそうな遺伝子なので、僕には簡単に阻害してええのか疑問でありまするが、その機能について調べるきっかけとしてはエネルギー代謝に対する効果もよいではないかと思います。遺伝屋としては、表現形質の観察が容易な方がええからね。

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