遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

ハイブリッドは強い!

2011-06-24 21:31:33 | BIONEWS
暑いっすねー。今日、長袖の服と夏用の半袖の服に入れ替えましたよ。扇風機も出したし・・・え? 遅い?? ホットカーペットはまだ敷いてるよ・・・。

欧州大腸菌、2種交配し毒性強まる 英チーム発表
交雑してパワーアップしてたみたいですねー。毒性を持つ種と体内吸収性が高い種が交配し毒性が強まった新種ってわけです。細菌類は原核生物なので、厳密な意味で性的な接合というもんはないのですが、遺伝子のやり取りをする性質はあります。そもそもベロ毒素を与えるプラスミドDNAも赤痢菌のと元は同じようですから、交雑で伝播したもののはずです。新しい機能を得た生物が出現した時に研究者が最初に考える可能性は『異種間との交雑』です。突然スーパー生物が生まれる可能性なんて極めて低いんよ。
こういう近縁種間の交雑で新しい種が生まれるのは真核生物でもありまして、そもそもパン酵母も古代にモンゴルでKluyveromyces属の酵母ともうひとつの酵母が交雑してできたといわれてますし、ビール酵母として知られるSaccharomyces pastorianus (carlsbergensis)もパン酵母Saccharomyces cerevisiaeとSaccharomyces bayanusのハイブリッドと言われています。交雑すると減数分裂がうまくいかない場合が多いのですが、単細胞生物の場合は自分が分裂して増えればええわけですからセックスしなくても『遺伝的コピー』は増えるのです。そんなわけで、微生物の異種間での交雑は時間のかかる「進化」のプロセスを吹っ飛ばしてしまい、短い時間で新しい能力を得る有効な手段になるんですな。
ちなみに、太古の昔Homo sapiensも近縁種との交雑を経ているという学説もあるんですよ。生物では珍しいことではないのです。

本日のお酒:BALLANTINE'S FINEST
コメント (2)
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