ファイナンシャルプランナーのニュースチェック

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名ばかり管理職問題 企業の対応 マクドナルド、トヨタ、スズキ、コマツ、すかいらーく

2008-05-24 18:49:11 | Weblog
マクドナルド、残業代払って店長手当て打ち切り 2008年05月21日
朝日 http://www.asahi.com/business/update/0520/TKY200805200266.html
日経 http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080520AT2F2003820052008.html
読売 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080520-OYT1T00716.htm
毎日 http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080521k0000m040103000c.html
 ハンバーガーチェーンの日本マクドナルドは20日、直営店の店長約2千人に、8月から残業代を支払うと発表した。権限が大きくないのに残業代が支払われない「名ばかり管理職」だと指摘されていたためだ。ただ、店長手当は打ち切り、支払う給与の総額は増やさないといい、待遇改善の効果は薄いとみられる。
 残業代を払うようにするのは、直営店の店長のほか、複数の拠点を管理する「エリア営業管理職」数百人。社内では管理職との位置づけは変えないが、法的には「経営者と一体的な立場」とされる「管理監督者」ではなくなる。上に立つ管理監督者は、「ディレクター・オブ・セールス(販売部長)」が務める。
 店長には、これまで基本給、成果給に加え、店長手当などの「職務給」があった。今回の制度変更で職務給がなくなり、代わりに残業代にあたる「時間外労務手当」を払う。残業代の支払い総額の見込みは示さなかったが、店長らへの給与の支払い総額は、いまと変わらないという。
 「労務監査室」を新設し、店長の勤務時間を管理。残業代を申請しない「サービス残業」の発生を防ぐと説明している。
 マクドナルドに対しては、直営店の店長が未払いの残業代の支払いを求めた訴訟を起こした。東京地裁が今年1月に訴えを認め、約750万円の支払いを命じる判決を出している。
 20日に会見した原田泳幸(えいこう)・日本マクドナルド会長兼社長は、「『名ばかり管理職』の報道の度に、弊社の裁判のケースが出るのは残念だ」と話したが、一方で「本制度の発足と係争中の裁判のことは、別々で独立した議論だ」と述べ、すぐに和解はしない考えを示した。店長への残業代も「(過去に)さかのぼって支払うことはない」と明言した。
 今後、残業を厳しく抑制する方針を示しており、店長らが会社からの評価が下がることを恐れ、申告しないまま残業を増やす可能性も指摘される。

マクドナルド:イメージ悪化避ける思惑も 残業代支払いで 2008年5月21日 毎日
http://mainichi.jp/select/biz/news/20080521k0000m020119000c.html
 日本マクドナルドが「名ばかり管理職」に残業代の支払いを始めるのは、違法と判断された勤務制度を続けることによる企業イメージの悪化を避ける思惑もある。「名ばかり管理職」問題の発端となったマクドナルドの方針転換で、同様の制度を持つ他の企業でも勤務実態に合わせた制度変更が進みそうだ。
 日本マクドナルドの原田泳幸会長兼社長は20日の会見で残業代支払いを決めたことについて「企業の信頼を向上させ、消費者らの理解を得るために決断した」と語り、問題の長期化による企業イメージの悪化を避ける狙いがあることを認めた。
 東京地裁が1月、マクドナルドの勤務実態を違法と判断したことを受け、コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパンや紳士服チェーンの青山商事、AOKIホールディングスなどが相次いで残業代の支払いや休日・出勤手当の支給を決断した。現段階で残業代を支払っていない企業でも「労組との検討の場を近々に設ける」(すかいらーく)、「社長直轄プロジェクトで長時間労働させない仕組みづくりや他社の事例を参考に勤務の改善を検討する」(ロッテリア)などの動きも出始めた。
 ただ、流通・外食業界は、消費低迷と原材料費高騰によるコスト増にあえいでいる。労働力不足の深刻化で、従業員の確保が一層難しくなれば、賃上げ圧力が高まる可能性もある。店舗の賃料代上昇など他のコスト増懸念で、値上げを探る動きも出てきそうで、企業イメージの改善と収益確保の間で、企業は難しい判断を迫られることになりそうだ。

未払い分含めた決着にはなお時間 マック残業代問題 2008年5月21日 産経
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/080520/biz0805202128018-n1.htm
 管理職扱いのために長時間労働にもかかわらず、残業代が支払われない、いわゆる「名ばかり店長」の問題は、東京地裁が1月28日に日本マクドナルドに対して未払い残業代の支払い命じたことで一気にクローズアップされた。この判決を機に、紳士服チェーンやコンビニエンスストアなどで店長の残業代見直しが相次いでいる。
 例えば、紳士服チェーンの青山商事は、4月から店長に残業代を支払うことを決めた。店長約750人と課長約60人の約810人が対象。社会保険料を含めて過去2年分も含めて総額12億円を支払った。
 AOKIホールディングスも5月からすべての店長に残業代を支払うように制度を変更。組合員以外の店長約150人にも支払うことにした。コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパンも3月から直営店の店長約600人に対し、残業代を支払う代わりに店長手当を半減した。
 ただ、「名ばかり店長」訴訟の多くは過去の未払い残業代の支払いを求めている。青山商事は2年間さかのぼって残業代を支払ったが、支払額に納得がいかない店長に4月4日に福島地裁に提訴された。セブン-イレブンも長野県のフランチャイズ(FC)店の店長がFC会社と係争中だ。
 マクドナルドが店長などに残業代を支払うことを決めたことで、「名ばかり店長」に残業代を支払う動きは加速しそうだが、未払い分も含めた形での決着には時間がかかりそうだ。

トヨタ、QC活動の残業代全額支払いへ 2008年5月22日 日経夕刊
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080522AT1D2200D22052008.html
 トヨタ自動車は従業員が勤務時間外にグループで活動する品質管理(QC)サークル活動の残業代について、月間2時間と定めた上限を撤廃し、6月から全額を支払う方針を固めた。従来あいまいだったQCの位置付けを、会社側が明確に「業務」と認める。製造業の多くが現場の作業改善を目指すQC活動に取り組んでおり、トヨタの動きは産業界の労務管理のあり方に影響を与えそうだ。
 QC活動する場合には上司に事前に申請する制度に改める。 (10:53)

スズキ、コマツも残業代見直し トヨタ「カイゼン」受け 2008年05月23日 日経
http://www.asahi.com/business/update/0522/TKY200805220323.html
 トヨタ自動車が従業員グループで取り組む勤務時間外の「カイゼン」活動に残業代を全額支払うことにしたのを受け、他のメーカーの中にも追随する動きが出てきた。スズキやコマツなどは残業代を支払う方向で検討を始めた。
 スズキは、グループ単位で改善策を検討するQC(クオリティーコントロール)サークル活動にお茶やお菓子代を支給している。今後、残業代として支払う形に見直す方向だ。コマツも自己啓発に関するQC活動は現在、残業代の支給対象外で、これを見直す。トヨタ系部品メーカーのトヨタ紡織もQC活動を「業務」と認定し、月2時間だった残業代の上限を撤廃する方向で検討を始めた。
 QC活動は、自動車や電機メーカーを中心に3万以上といわれる。日産自動車や三菱重工、ソニーなどは「QC活動は業務の延長」(日産広報)などとして残業代を支払っているという。
 一方で、ホンダは「過労にならないように時間を決め、必要な場合には残業代は支払っている」(福井威夫社長)と説明し、見直しは不要としている。JFEスチールも、会社主催の活動発表会やその準備を除き、残業代は支払っていないが、「今のところ扱いを変更する予定はない」とする。
 トヨタは22日、QCサークル以外の「創意くふう提案」活動については、従来通り「自主活動」と位置づけることを明らかにした。自主活動を明確にするため、6月以降、提案内容を考えたり、書類に記入したりする作業を工場の外で行うよう従業員に徹底する方針だ。
 創意くふう提案は、生産現場の従業員が個々にアイデアを出すのが建前。ただ、上司から毎月提案を出すよう促されるのが実態で、QC活動と同様、社内外から「事実上の強制」との批判があった。元トヨタ社員の過労死をめぐる昨年11月の名古屋地裁判決でも、QC活動や創意くふう提案を「使用者の支配下での業務」と結論づけていた。

すかいらーく、店長独立でFC展開 2008年5月22日 日経
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/top/index.cfm?i=2008052110340b1
 ファミリーレストラン最大手のすかいらーくは来年1月から、店長を務めるベテラン社員を独立させ、フランチャイズチェーン(FC)店を持たせる仕組みをつくる。5年後をメドに既存店全体の2割強に当たる1000ほどをFC店に切り替える。売り上げに直結する報酬体系にして有能な人材をつなぎ留める。社外から加盟店を募る方式のFCが一般的ななか、社員への「のれん分け」でのFC展開は珍しい。
 管理職を理由に店長らに残業代を払っていなかった日本マクドナルドが、東京地裁から支払いを命じられたことをきっかけに、流通業界の間で店長らの処遇を見直す動きが広がっている。すかいらーくも店長ら管理職に残業代を払っておらず、店長らの処遇改善策の検討を進めていた。




 名ばかり管理職の問題で、3つの労組団体が厚生労働省に陳情したことは、先のスレッドで述べましたが、その行為に慌てたのかどうかは知りませんが、マクドナルドがこれまでの強硬姿勢を180度転換して、残業代の支払いに応じる姿勢を見せ、他の大企業も対応に追われはじめているようですね。
 もっとも、マクドナルドの場合、『過去に遡って残業代を支払うつもりは毛頭ない』ようで、残業代を払うといっても、これまでの店長手当を打ち切るなど、総額人件費は増えない単なる(法律に触れないための)賃金制度の変更に過ぎず、企業としてはほとんど損をしない計算になりますし、アルバイトを含めた人材採用へのアピールのためのコストと考えれば、下手に広告を打つよりも、余程安上がり。世間から向けられる関心を逆に上手く利用したな…という印象を受けました。

 一方、いきなり梯子を外された形になったのが製造業界で、トヨタは、従業員が勤務時間外にグループで活動する品質管理(QC)サークル活動の残業代について、月間2時間と定めた上限を撤廃し、6月から全額を支払う方針を固め、スズキやコマツも追従する見込み。すかいらーくはのれん分け形式で、対象者をFCに組み込むことで、人件費の上昇を最小限に抑える政策をとるようです。
 ただ、マクドナルドのように人材の流動化が激しい外食産業の場合は、人事制度を見直しても、店長クラスなら数年でかなりの入れ替えが期待できるため、仮に経過措置をとったとしても、経費の上昇は比較的抑えることができますが、製造業の場合は、より長期的に人材の定着を図る必要があります(というより数年で辞められては困ります!!!)し、給与制度を変更しないままQC活動分を残業代に含めれば、人件費で利益が圧迫されることにもなりかねません。かといって、従業員組合からみれば、『これまでウヤムヤにしていた方が悪い』と、折れてあげる理由もないだけに、人件費抑制には難色を示すことは明らかだけに、新たに積み上がってしまった人件費をどう吸収していくかに苦労するのではないでしょうか。


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