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市橋被告の潜伏発覚で取引停止 建設会社が困惑

2010-01-17 16:14:03 | Weblog
市橋被告の潜伏発覚で取引停止 建設会社が困惑 2010年1月7日 朝日
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201001070058.html
 英国人女性に対する殺人や死体遺棄などの罪で起訴された市橋達也被告(31)が偽名で働いていた大阪府茨木市の建設会社が、元請け会社などから相次いで取引停止を申し入れられ、困惑している。「作業員の身元確認が不十分なところと仕事はできない」のが理由だという。中小の建設業界では、身元が確かな作業員を雇用することに努めているが、若手の労働者不足もあってなかなかうまくいかないようだ。
 大阪・西成の釜ケ崎のあいりん総合センター前には早朝、仕事を求める人たちが集まる。昨年11月下旬、ボストンバッグ一つで立っていた50代前後の男性に記者が声をかけると、男性は「昨日ここに来た。身分証明書なんかない」。「どちらから来られたんですか」「お名前だけでも」などと聞いても、「いやいや……」とだけ言い、去って行った。
 市橋被告は2008年8月19日、この近くで茨木市の建設会社の社員に「お金が必要なので使ってほしい」と声をかけ、雇われていた。勤務態度はまじめだったが、09年10月に会社を去った。11月に公開された整形後の写真を見て会社の役員らが「似ている」と気づき、警察に通報した。
 市橋被告は、同社で働いていたことを新聞・テレビで一斉に報じられた翌日、大阪・南港で逮捕された。その日から同社には「未来永劫、取引をやめたい」「ほかの作業員は大丈夫なのか」といった問い合わせが相次いだ。
 その一つ、大阪府内の土木建築会社の社長は「犯人がいたら気持ち悪いと思うのは人情」と話す。市橋被告はこの会社の建築現場に約10カ月間派遣されていた。熱心な働きぶりだったが、社長は市橋被告がいた建設会社と当面取引をやめる考えだ。「申し訳ないがこればかりは仕方ない」
 大阪市に本社を置くゼネコンも、建設現場の周辺住民から苦情が出るなどした際は「取引停止を検討するかもしれない」という。
 建設会社によると、実際の取引停止は1社にとどまったが、役員は「内々に仕事の発注を控えた取引先もあるはず。少なくとも1千万円は損失が出た」と話す。民間の信用調査会社によると、建設会社の08年度の売上高は約1億5千万円としている。
 警察庁は昨年12月、市橋被告の逮捕に協力した4人に報奨金を支払うと発表したが、同社は対象ではなかった。
 同社は過去にも作業員の偽名が発覚し、元請け会社から取引を停止されたことがあったという。役員は「会社に本名を申告した上で現場で偽名を使う人もいる。身分証明書類を
提出していない人も相当数いるが、身元確認を厳格化したら人が集まらず、事業が立ちゆかない」と明かす。
 大阪府中小建設業協会は加盟社に対し、保証人を立てるなど、身元が明らかな作業員を雇うよう指導している。協会の岡野三郎会長(81)は「今は労働法制も整備され、使用者の
責任も厳しく問われる」と話す。だが作業員の身分確認に力を入れられない事業者は少なくない。
 財団法人西成労働福祉センターと、大阪市立大大学院の玉井金五教授の研究室が2008年11~12月、あいりん地域で過去5年間に求人したことがある事業所545社(9割が
建設業者)を対象に実施したアンケート(214社が回答)によると、「最近のあいりん地域で必要な人が雇えるか」の問いに約55%が「難しい」と回答。「元請けからどのような
人を雇うように言われているか」の問いに約48%が「年齢の若い人」と答え、「身分証明書の提示ができる人」と答えた社も約30%あった。
 大阪府内の建設会社社長は「西成の労働者は高齢化している。経験や技術がある30~40代の人を集める上でも身分確認でハードルを上げるわけにはいかない」と話す。指名手配
された容疑者のポスターを社内に張るなど、犯罪者が居着かないような環境作りが必要だとしている。
 一方、同センターの星野智・紹介課長は「本人の腕ややる気次第で勝負するのが日雇いの市場。日雇いという労働形態が成り立つには、むしろ匿名性が許される必要がある」と話す。
NPO法人「釜ケ崎支援機構」の沖野充彦事務局長も「定職に就けないなど、飛び込みで働ける場所が必要な人もいるのが現実」という。



 ん…。前も同じようなことを書きましたが、『犯人と知っていて匿っていた』というのならばまだしも、単なる現場要員として紛れ込んでいて、しかも整形手術で顔を変えていた犯人を気がつかずに雇っていた(私も市橋被告の整形前と整形後の双方の写真を見ましたが、あれだけ変わっていれば、街ですれ違っていても、一般の方が整形を看破ることは困難だったのでは…)というだけで、その企業を責めるのはいささか酷だと思いますし、せっかく正直に申告したのに、受注が急減してしまったこの企業には、どうしても同情を感じずにはいられませんね…。
 まだ正社員を採用するのならば、厳格な身元確認も必要でしょうが、身元を隠したがる人の中には、犯罪者だけでなく、例えば夫の暴力や借金取りから逃れて非正規の仕事を渡り歩いているといった様々な事情を抱えているケースも少なくありませんし、住民票を移せない事情の場合は、むしろそちらの方が大半。
 慢性人出不足な建設現場や温泉の仲居さんのように、市橋達也被告のような30歳前後の若い労働力が応募してきて、きっちり仕事をこなしていたのならば、現場の同僚だって『あいつにも、きっと人に言えない深いわけがあるのだろう』と深く詮索することもしないのが、この世界ではむしろ暗黙のルールではないかと思います。
 勿論犯罪者を許す気は毛頭ありませんし、使用者として身元確認という当然の義務は果たして欲しいとは思いますが、世の中にはそうした様々な事情を抱えた人を雇わざるを得ない企業があり、そういった身元を隠して働かざるを得ない人がいることも紛れもない現実ですし、どのあたりまで厳しく法律という名の原理原則を運用すべきなのかは、実際のところ、中々難しいものがあると思いますね。


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