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石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

フィリピン出張報告~児童労働撲滅プロジェクトサイト訪問記

2011-07-17 23:51:54 | 活動レポート
遅くなってしまいましたが、フィリピン出張報告の第二弾、今度は「児童労働撲滅プロジェクトサイト編」ということでアップします。

前回の報告で触れていた通り、7月5日~10日のフィリピン出張でのハイライトの一つは、児童労働撲滅プロジェクトの現地サイトへの訪問でした。そもそも、今回のフィリピン出張の重要な目的の一つに、「この2年間でフィリピンの社会・経済事情はどのように変わったのか、人々の生活は良くなっているのか?」という課題を設定していたわけですが、それを知るには一般大衆の生活環境を見てみるのが一番。ということで、古くからの友人に依頼し、彼が支援をしているCavite州のある地区にお邪魔をしたのでした。

訪れた場所は、Cavite州BacoorのMolino3という人口約3万人の区域の一角で、Nazarethという地区。ここに約3,000人が生活をしています。Nazareth地区の入り口で、友人のモンと、プロジェクトコーディネーターのジョー(写真右)がにこやかに出迎えてくれました。



ジョーは少し緊張気味。「どうしたのか?」と聞くと、モンが「日本から国会議員が来てくれるなんてまずあり得ないこと。治安が不安なので、何かあったらどうしようと緊張している」とのこと。「大丈夫、大丈夫!」と私から勇気づけて、早速、ゲートをくぐって中に入っていきました。

このゲートの外までは、比較的ちゃんとした町並みだったのですが、このゲートの中、つまりNazareth地区は別世界。いや、むしろこのゲートの中の方が、フィリピンの現実の社会、つまり大多数のフィリピン人の普通の生活なのですね。しかも、通り沿いに住んでいる世帯はまだいい暮らし向き。通りに面しているので、みんな商売をやっています。問題は、通りから枝葉の道でさらに奥まったところに住んでいる大多数の人たち。これから訪ずれるところも、そのうちの一つです。

と、通りから舗装されていない横道へ折れて、奥の方へと向かいます。




そこに、多くの子どもたちやその親御さんたちが待ち受けていてくれました! ここに集まってくれた皆さんたちが、モンが支援をしている児童労働撲滅プロジェクトに参加をしている27名の子どもたちと、その親御さんたちです。





子どもたちもお母さんたちも、みんな笑顔で大歓迎してくれました。恐らく、事前にモンからきつく言われていたのでしょうね。日本から国会議員が来るのだから、みんなかしこまって歓迎するように、と。かなり緊張した面持ちの皆さんに、「こんにちは~、ヒロです。よろしく~。緊張しないで、気楽に交流しましょう!」と言って解きほぐし、早速、子どもたちへのプレゼントとして持ってきたノートとペン、そして色鉛筆を子どもたちにプレゼント。




これで子どもたちは一気に顔が和みました。親たちには、日本から持ってきたお菓子を。さすが、甘いもの好きのフィリピン人。これで親たちも和んだ感じです。

そして、しばしの意見交換。

「子どもたちの教育で大変なこと、何ですか?」という質問に、親たちが次々に手を上げてくれました。特に問題としてあげられたのが、

1.費用の問題

 義務教育は本来、無料のはずですが、実は、何かにつけてお金を取られます。学校の課外授業や、施設の改修、学校行事など。お金を払わないと内申書(?)に響くので、みんな何とか工面をして払います。年間で、小学校で約3,000ペソぐらい(6,000円)。学年が上がると、4,000~5,000ペソになるようです。
 年間6,000円だったらたいしたことない、と思われるかも知れませんが、後に述べるように、親の収入が非常に低いことと、子どもの数が多いことで、同時に複数の子どもが学校に通えば、家計には非常に重くのしかかります。子どもの数は、5人から7人がほとんどなのですから。

2.通学の問題

 一番近い小学校まで、2キロ以上離れています。日本でも、地方であれば小学校まで2キロ以上歩くというのはあり得る話しだと思いますが、フィリピンの場合は道路事情が悪いので、危険なのです。ちゃんと舗装されていないところも多いですし、舗装されているところも歩道と車道がちゃんと分離されていないので、子どもには危険です。また、雨が降るとすぐに冠水しますから、大回りして通学しないといけないことも多いそうです。もちろん、お金がないので、バスやジープに乗るわけにも行きません。通学があまりに大変で、学校をドロップアウトしてしまう子どもも多いのです。

3.クラスの生徒数の問題

 学校不足・教室不足・先生不足はさらに悪化しているようです。少なくても、クラスには50人から60人。通常は70人から80人。ある女の子は「うちのクラスは今、100人になってる」とぼやいてました。「授業、分かる?ついて行ってる?」と聞くと、「まったく分からない。質問出来る状態でもない」と。そりゃそうでしょうね。先生があまりにお気の毒で・・・。
 クラスに人数が多すぎるし、通常でも2部制、時には3部制なんていう学校も。それで、習熟度の違う子どもたちが80人もいたら、分かりようがないですよね。先生だってもうぼろぼろです。授業について行けなくて、結果、ドロップアウトという子どもが多いのもうなずける話しです。

ここで、いくつかのご家庭を訪問させてもらいました。まずは、コーディネーターのジョーのおうち。ここはめずらしく、子どもが娘さん一人だけ。そのせいか、この地区では比較的、暮らし向きが良くて、娘さんにも比較的広い部屋が一つあてがわれていました。




でも、電気とガスはありません。料理は、この七輪で薪をくべて作ります。




ちなみに、この地区には上下水道がありませんから、飲み水はみんな、ポリタンクに汲みに行きます。重たいので、これは大人の仕事。お風呂とか洗濯とかは、雨水をためて。トイレは・・・秘密。

次にお邪魔したジェシーのうちは、子どもが5人。最初、一人だけ出てきたのでここも一人っ子かと思ったら、奥の方から次から次へと登場。この写真には4人だけ写っていますが、外にもう一人遊んでました。




ジェシーの旦那さんは、トライシクルの運転手として働いています。トライシクルというのは、小型バイクにサイドカーが着いていてそこにお客さんを乗せて走るタクシーのようなもの。「いくらぐらい家に持って帰るのか?」と聞くと、大体、一日120ペソ(約240円)ぐらいだとか。トライシクルの運転手と言っても、会社に勤務しているわけではなく、個人事業主。オーナーからトライシクルを借りて営業するので、毎日、賃料を120ペソ、返さないと行けないわけです。当然、売り上げが少ない日は、持ち帰りも少なくなります。週6日働いても、月々3,000ペソちょっとの収入。子ども5人を養うのは非常に厳しいです。

次にお邪魔したのは、ラケルのおうち。金貸しからお金を借りて、小さなお店を営んでいます。




せっかくだから何か買ってあげようかと思ったのですが、買える物がなくて断念。話しだけしっかりと聞くことにしました。

ラケルは子だくさんで、今、7人の子どもがいます。「いや~生産性高いね~」と言って褒めると、「8番目がお腹の中にいる」と。いやいや、恐れ入りました。しかし、その分、生活は厳しいです。お店の開業資金は、金利20%で借りているので、金利を返すだけでも四苦八苦。お店の売り上げはぼちぼちあるのですが、みんなツケで買っていく(月末精算)ので、いつも現金がなく、商品の仕入れも大変です。みんながちゃんとツケを払ってくれればいいのでしょうが、支払いが滞るケースも多いようです。なかなか厳しく取り立てられないでしょうからね。



旦那さんは、今、建設現場で働いています。手取りは、日給で270~300ペソ(約600円)ぐらい。「悪くないね~」と言ったら、「仕事がある時はいいけど、いつまで続くか分からないから」と。そう、これはあくまで、建設現場の仕事があればの話しで、プロジェクトが終わってしまえばそれで終わり。次の仕事がない限り、失業状態になるわけです。それに、この日給、実は、この地域の最低賃金以下。本来、きちんと最低賃金(370ペソぐらい)を貰えるはずなのですが、彼らは非正規として雇われているので、最低賃金以下。しかも、健康保険も雇用保険もなし。これで、子ども7人を養っているのです。お父さんが病気になったり、怪我でもしたら・・・。

この写真は、ラケル一家の寝室。この4畳半ぐらいの大きさの部屋に大人2人、子ども7人、総勢9人が一緒に寝ます。「どうやって?」と聞くと、「折り重なって」と。ん~、私の目には到底、9人が寝られるスペースには見えないのですが、神業があるのでしょうね。




そして最後に、アンジーのうちへ。ここも子どもが7人です。子どもたちはとっても元気。ニコニコ顔で走り回っています。




部屋にちゃんとしたテレビがあったので、「おっ、アンジーのうちはテレビがあっていいね!」と言うと、「いや、それは映らない。ただの飾り」だって。扇風機もあったけど、これも飾り・・・。

でも、アンジーのうちには、庭にシャワールームが!これは画期的。今回お邪魔したうちでシャワールームがあったのはアンジーの家だけだった。まあシャワールームと言っても、白い布きれを木にかけて囲いを作っただけの所で、その中には雨水を溜めたバケツが一つ置いてあるだけなのだけれど。




ということで、地区内の何軒かのお宅にお邪魔させていただいて、それぞれいろいろな話しを聞くことができました。彼女たちが今、一番、望んでいるのは、自分たちも安定的な収入が得られるようになること。そのための自立生活支援プログラム、つまり能力開発プログラムが必要だということです。実は、これもモンが計画をしている児童労働撲滅プロジェクトの柱の一つになっています。

父親たちはほとんどがトライシクルの運転手か建設現場の作業員なので、それだけの収入ではとても子どもを養えません。お母さんたちも、働いて何とか収入を得たいと思っているのですね。

もちろん、お父さんたちがより安定的な収入を得られるようになればそれにこしたことはありません。この点、せめて最低賃金が確保されることと、健康保険や雇用保険が確保されること、それだけでも生活は大きく改善するはずです。これらは地元政治家の責任で、やろうと思えば出来ることなのですが、それがなかなか動かないのがフィリピンの問題。だからこそ、モンのような活動家が、一生懸命に支援活動を行って、子どもたちを救おうとしているわけですね。

モンのプロジェクトは、実は今、スポンサーを募集中。プロジェクトとしては、まだ第一段階の最初のところで、支援する子どもたちと家庭の選定が終わったところ。これから、子どもたちにちゃんと地元の学校に通わせて、学習サポートをしながら、親の生活支援もする、というプロジェクトが本格化していきます。ただ、まだスポンサーが見つかっていないので、今は、地元の労働組合が拠出したわずかなお金で運営をしているところ。スポンサーが見つからなければ、プロジェクトそのものが頓挫してしまいます。

私も、ILOのフィリピン事務所に話しをつないでおきましたが、支援を受けるのは難しい情勢。うまくスポンサーが見つかるといいのですが・・・。どなたか、支援してくれそうな組織・個人を知っていたら私にご一報を!

以上、フィリピン出張報告の、児童労働撲滅プロジェクトサイト訪問編でした。残念ながら、フィリピンの一般大衆の生活は「良くなっていない!」というのが結論でした。まだまだ先は長いようですが、これからも応援していきたいと思います。

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