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ゆめ未来     

遊びをせんとや生れけむ....
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しなやかに、のびやかに毎日を過ごそう。

「肺都」  腐臭汚臭悪臭刺激臭が漂ってこないか

2018年07月16日 | もう一冊読んでみた
肺都/エドワード・ケアリー  2018.7.16

望楼館追想』 で、ぼくに「とても心地よい体験」をさせてくれた、エドワード・ケアリー。
今回は 『肺都(はいと)』 を読んでみました。
この作品は、「アイアマンガー三部作」の最終巻です。
ぼくは、第一巻 『堆塵館(たいじんかん)』 第二巻 『穢れの町(けがれのまち)』 を、まだ読んでいません。
訳者あとがきを読むとがぜんと興味がわきます。是非、読んでみたくなりました。

 邪悪なものがこの町にやってきた。

 さっき言ったように女は黒ずくめで、やはりさっき言ったが、とて小柄だった。奇妙なほどに体が小さく、初めからなにかおかしなところがあるかのようだった。
そして女はきょろきょろとあたりを見回した。
 そして、私は見たのである。
 邪悪なものを。



 たちまち、顔の前に差し出した手すら見えなくなった。
 たちまち、あらゆるものが真っ黒になった。
 世界中の蝋燭がひとつ残らず、いきなり消えてしまったかのようだった。
 そしてまたブーツの音を、頑丈なブーツの音、歩くたびにガシャンガシャンと鳴る音、砂利を擦るその靴音を残して、女は次第に遠ざかっていった。そして漆黒の闇だけが残った。


 「なんて恐ろしい人たちだろう! あなたがたは贋人間を作っている!」
 「人はだれもが目的を見出さなければならない、だれもが忙しく働かなければならない」おばあさまが言った。
 「でも、あの贋人間は、あの間は……。どうやってあれを作りだしているかぼくは知ってますよ!」


 彼の顔を、なんとか言い表してみよう。しかし、これまた特徴らしきものはなく、人並みで平凡な顔である。穏やかな美男子の顔だったかもしれない。……あえて言えば、この男にはなにかおかしなところがある。そして、そのなにかおかしいという感じがどこから来るのかがやはりわからず、彼には普通ではないところがあると思うだけなのだ。……スミスは、非情に、非常に異質だ。私は、警察の最新の方法で、右記のように彼を活写しようとした。わたしにできるのはこれくらいなのである。顔についてこうひとつだけ言えば、恐ろしいことに、スミスは話しているとき、表情がまったく動いていないように見える。

 さまざまな物がかつては人だったことがわたしたちにはわかるけれど、それの持ち主は、人であったことを知りたいだけで人に戻したくはない、という場合もときどきある。
「いまはまだ」と痣だらけの女性は言った。持ってきた犬の首輪は彼女の夫だった。「いまのところは。また改めて来るかもしれません」

 もしあなたが品物を、自分では判断できない物を持っているなら、それを持ってきてください。
 是非どうぞ。


ファンタジー小説なんですが、ファンタジーに関するあなたの認識が根底から揺さぶられること請け合いです。

  『 アイアマンガー三部作 3/肺都/エドワード・ケアリー
                       /古屋美登里訳/東京創元社




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