百休庵便り

市井の民にて畏れ多くも百休と称せし者ここにありて稀に浮びくる些細浮薄なる思ひ浅学非才不届千万支離滅裂顧みず吐露するもの也

詩人 天野 忠さん & エジプトの『死者の書』 & R3.1.1付 産経新聞 1面掲載『年の初めに』は素晴らしかったです

2021-01-31 16:44:31 | 日記
 産経新聞に 週一連載されている『坪内捻典』さんのエッセーで知った『天野忠』さんの詩、
オイラは これほど面白いと感じた詩に出くわした覚えがないものですから、いっぺんに好きになってしまい、当ブログでは今まで、このような 2編を綴っているのですが、
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● 2011/11/02付 100q甚く感じ入り候記(1)【坪内稔典さん【モーロクのススメ】より】
 齢を取りますと、どしどしと 切り込む 角ばったものよりか、オブラートに包まれたように温かく、ふくやかで、行間からは いろんなコトが、人生の機微や面白味といったものが浮かびいで、しかも悠然と やり過ごしている といった感のする文章が、オイラには そういうモノが まずは書けないだけに、「いいなぁ」と 深く感じ入るのでありまして、そこで【イタクカンジイリソウロウ】「痛く感じ入り早漏」ではありません という「新タイトル」を 立ち上げ、今回 その(1) を お贈りしようか と 思う次第にございます。

まず採り上げますは、愛媛県ご出身の、オイラより ひとつ年長の俳人【坪内稔典】さんが、産経新聞に書かれております 毎金連載コラムで ご披露なすって下さった、オイラがイタク感心した詩についてであります。
   
この中で紹介されております【天野忠】さんという 今から 18年ほど前に亡くなられております詩人の3編の作品が、特に 二つ目・三つ目の詩が 実に素晴らしいと思われましたので、自分で キータッチし、ぜひ当ブログへ書き留めておきたい と思った次第にございます。上の新聞記事で読み取れるかと思うのですが、その詩は 以下の通りです。どうぞ ご鑑賞下さい。何とも いい詩であります。


    秋                  考えごと

  色がこんなに黒いのに         ねながら
  日傘をさすのは気がひけるねえー    人生について考えていたら
  鏡を見てばあさんが          額に 蠅がとまった。
  ひとりごとを呟いている。       長いこと休んで
  ひる寝のうす眼をあけたら       それから パッと
  日傘をさして             元気よく飛び立った。
  表へ出て行った。           どうやら考えがまとまったらしい。
                     俺はまだだ。


でオイラも作ったとです。なおこれはフィクションではなく、度々に実際あった話です、ハイッ。
             
    蛙
           
  まだまだ暑い夏
  田んぼのヒビ割れ目がけ
  ションベンしたら
  どっからか二三匹
  幼いカエルが寄ってきた。
  雨じゃねぇよ、ショッペェよ 
  と、オイラはゆうたんとー。

  秋たけなわに
  田んぼのヒビ割れ目指し
  ションベンしたら
  ヒビの中から二三匹
  ちっこいカエルが顔出した。
  もう寝とったん、ゴメンなぁ
  と、オイラは謝ったんとー。

          
  年がら年中
  おりおりの景色に溶けて
  タチションベン。
  田舎ぐらしの醍醐味や。
  ちっとも飛びやしないから
  跳ねっ返りに気をつけんと
  と、オイラを挟むんとー。  オイラ:ここではチンチンを指します 挟む:はさむ

  蛙のションベンなあに
  田にしたもんだとー
  タイシタモンダとー
  蛙のションベン

  オイラのションベンなあに
  チョロチョロチョロだとー
  チョロイモンダとー 
  オイラのションベン

  < 追 伸 >
上の詩の蛙は もっとも一般的な、オイラたちが昔から【クソガエル】と呼んでいる【ツチガエル】でありますが、オイラは、鳥で言えば スズメと同じように、この日本の自然に他のダレよりもピッタシ溶け込んでいるこのカエルが、カエルの中では一番好きで、一番カワイイと感じているのであります。

  < 追 伸 > R3.1.31 記
なお 最近は、ほとんど ”立ちしょんべん” してません・・・名誉奪回のための追記です。


● 2014/02/14 付  【 詩人【天野 忠】さん 】100q 残件消込録(3)
   

 以前も、この回 ↑ も、実は今日の『ネンテン』さんも、【天野 忠】さんの詩を 取り扱っておられます。分かりやすい上、実に面白く 味のある詩なもんで、何時からか「忠さんの本を キチンと買って、チャンと読まなくっちゃ」と、まあ こんな東京コトバではないですが オキャーマコトバで思いまして、下の、著者のサインが入っているという、送料込み4,168円もする ユーズド詩集を取り寄せ、読んだのであります。
   



天野忠さんは、この本が発行されて 7年後、84歳で お亡くなりになられています。ということはです、この本が発行されて以降の作品は 収録されていないということ。道理で 夫婦間の機微を扱った詩が さほど入ってなく、下の『手紙』という詩なんかは、今までネンテンさんが紹介して下さった詩と較べますと、夫婦間の毒が まだ充分 昇華、いや ここんとこは 消化 という字のほうが妥当かも、されていないふうに 感ぜられます。
  

平成22年【彩図社】さん発行の下の本【日本の名詩 100】にも、忠さんの詩が 3篇 収録されております。なお余談ながら、生家が老生宅と数百メートルしか離れていない【永瀬清子】さんという 郷土出身の数少ない いや 唯一の名士の方の詩が入ってないのです。なしてやろ 彩図社文芸部さん、名詩100α で再編纂、何とか なりませんやろか。
   
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いささか騒ぎ過ぎでは と思ってますが、コロナに翻弄されまくっている昨今 於、日本を代表する詩人さんの詩に触れて ホッコリできるなんて楽しみやら喜びがあるとすれば、これ以上のシアワセは この世では 望めないのではないだろうかと思い、急遽、 ”忠さん”(このように呼ぶこと、お許し下さい)の本を集めることを思い立った次第ですが、 市場には 僅かしか出てなく、収集できたのは これらの書籍だけであります。

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               【  】は 一冊の本を示します
【長い夜の牧歌】【讃め歌抄】【その他大勢の通行人】【万年】【掌の上の灰】【私有地】
                                  ・・・以上 単行本
 (上掲 2編目ブログにある『うぐいすの練習』という詩集は、どこにも見当たらずでした)

【天野忠詩集】『石と豹の傍にて』『肉身譜』『小牧歌』『電車』『重たい手』『単純な生涯』
       『動物園の珍しい動物』『しずかな人 しずかな動物』『昨日の眺め』
       『孝子傳抄』『人嫌いの唄抄』『酸素そのほか』
       『音楽を聞く老人のための小夜曲』 
【続天野忠詩集】『その他大勢の通行人』『讃め歌抄』『私有地』『掌の上の灰』『古い動物』
        『続掌の上の灰』『世界・演戯そのほか』       ・・・以上 全集

【草のそよぎ】【天野忠随筆選】【春の帽子】          ・・・以上 随筆集

実物を見て、初めて【〇〇詩集】の 中身が判明。従って【長い夜の牧歌】【万年】以外の単行本は、ダブってしまいました。でも 単行本は 余白を充分 取ってレイアウトされてますから、味わいは 単行本ならではのものがあります。そう云えば、「 ”余白” とは ”要白” のことです」と、どなたか  テレビで仰ってられました。

ええですねぇ、忠さんの詩。ワイは 俳句なら山頭火さん、短歌なら山崎方代さん( ”かたよ" ではなく "ほうだい" です)、詩なら この方・忠さんが、一等 肌に合うなぁって感じです。な~がいブログ、お目遠し下さった御礼に、2編の詩を、横書きになりますが 転記させていただくとします。

【その他大勢の通行人】から            【万年】から

   廊下                     蛇の話
                            
夜更けに                    長い長い蛇であった                
おばあさんが                  あんまり長いので
便所に立つ。                  蛇はうんざりしていた。
さっきからもぞもぞしていたが 
おじいさんも蒲団から出てくる。         寿命がきて
せまい廊下で                  蛇の頭が死んでから
ふたりは行きちがう。              だいぶんたって

一時間もしないうちに              しっぽはそれを知った。
床の中でもぞもぞして              うなずくように
おじいさんはやっと腹をきめる。         軽く二三度
さっきからおばあさんももぞもぞしていたが    しっぽは大地を叩いた。 
やっと腹をきめて                それから
のろのろと起きてくる。             ゆっくり
せまい廊下でふたりは行ちがう。         死んでいった。

だまっている。

どうですか 皆さま、ええでしょう。ご同好の士となられ、忠さん詩集ご購入をと 思い立たれましたならば、ぜひとも上記内訳を ご参照なすって下さい。ただし 本当に 僅かしか 市場に出回ってません。ご参考までに オイラの探すサイトは、『amazon』『ヤフオク』『メルカリ』『日本の古本屋』さん各位です。

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 R3.1.12 BS日テレ『ぶらぶら美術・博物館』『江戸東京博物館 古代エジプト展』で 
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本来の『死者の書』についての解説が、近藤二郎 早稲田大学教授さんから為されてましたので、ここに概略を記しておきます。

『死者の書』とは、パピルスに、死者が この後 どういう道を辿るのか記した ”副葬品” 、
すなわち 死者それぞれ 違うものなのだと。

頭文字が ”タ” なら女性、”パ” なら男性を表しているとのこと。ちなみに、

”ピルス” とは ”ファラオ” のことなので、”パピルス” とは、ファラオが独占していたと。

で 誰しも ”マアト女神” さんと、取り出された己の心臓とが 天秤に掛けられるのだと。

現世で悪いことをしてなければ釣り合い、”オシリス神” さんのもとで、再生 すなわち

死後の楽園である ”イアルの野”(=エジプト)に行けるのだと。つまり エジプト於いて 同じものに戻れるが、 釣り合わなくば、頭は鰐 鬣と上半身が獅子 下半身は河馬の姿した ”幻獣アメミット” に食べられてしまって、永久に死者になれず 消滅してしまうのだと。

なお上記は、既ブログ 折口信夫さんの『死者の書』に 付記すべく、纏めたものです。

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 R3.1.1 付 産経新聞 1面掲載、乾正人論説委員長さんの『年のはじめに』というコラムは、本当に素晴らしかった !!! 。これだけで、ひと月分 読んだくらいの気分になれました。恐らくは 今年 NO1 のコラムではないかと思っています。


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