百休庵便り

市井の民にて畏れ多くも百休と称せし者ここにありて稀に浮びくる些細浮薄なる思ひ浅学非才不届千万支離滅裂顧みず吐露するもの也

図書館について思うこと~火坂雅志さんの小説「児島高徳」を引き合いに

2018-03-16 19:27:18 | 日記


 H30.3.16 NHK-BSプレミアム「英雄たちの選択~"奇跡"の藩政改革者 山田方谷 無血開城に挑む」で取り上げられた 山田方谷(やまだほうこく)さんは、岡山後楽園 閑谷学校の造営や建設、田原用水・百間川放水路・新田開発といった土木工事を成し遂げられた 津田永忠(つだながただ)さんと双璧の、今や世界中の人たちに「岡山県人には、こんな立派な人がいるんですよ~」と大きな声で叫べる我らが英雄、郷土の尊敬を一身 否 二身に集める このお二方でありますが、もし今生きてられたら、このこと いったいどんなふうに思われるでしょう。

 本日は、老生が平素 図書館について思っていることを書き留めたく思っております。後楽園 岡山城近く、県庁前の道路を隔ててと、最高とも言える立地条件の下、H16年9月開館した県立図書館は、12年も連続し 貸出図書数 全国NO1 でして、このことを、喜び・心地よく・誇りに思い・自慢する県民が ほとんどではないかと思われるのですが、

老生はまったく逆とまではいかないにしても、決して自慢できることではないのではと、むしろ 悪しき県民性が露骨に出た 恥ずべき事象ではないのかと思うのです。何ら負担せずして、めっちゃコストの掛かっているサービスのみ 当然のことのように享受する、独りよがりの姿勢が あからさまに感じられるからです。

むかしむかし 超有名なジャーナリスト 大宅壮一さんは、日本全国の県民性を分析され、岡山県人のことを「日本のユダヤ人」と形容されてます。ユダヤ人の方には失礼ではないかと思ったりするのですが、冷たく・実利に聡く・こすい・閉鎖的・他者を思いやらない・めっちゃノリが悪い・チマチマしてる という意味であれば、的を射ているのではないかと思ってます。   

また そこには、情けないことに、作者が 書物を興すまでの 長きに亘る 人生を賭けた 壮絶なる、学識習得・研鑽・発掘、文書化にあたっての 葛藤・労苦 へ思い遣りのカケラも見いだせないからであります。オイラは、成人した社会人であれば少なくとも、個人が著した書籍は、@10,000円以下で買えるのなら、自前調達で読むべきではないかと思っています。

それだけの敬意は、作者や編集者に対し 払うべきではないかと思います。手にしたその書籍が上梓されるに、どれほどの物質的コスト、精神的コスト、知的コストを伴っているのかに、深くなくてもいいです、ほんの少しでも 思いを馳せるべきであります。なので 図書館で貸し出す場合、最低限 著作権料に見合ったフィーは課すべきと考えます。

今の時代 古本は 昔と較べますと、もう隔世の感ありで、極めて容易に入手できるのですから、新刊本が無理なら、時間を置き 古本で賄えばいいのです。そして思うがままに シルシ付けや書き込みをし、自分の生きた証としたらいいのです。


 ここで 一冊の文庫本となる小説を創るということが、どれほどのものであるかということを実感したいと思います。引き合いにした書籍は、平成21年(2009) NHK 大河ドラマ「天地人」の原作者 火坂雅志さんの著わされた「太平記鬼伝 児島高徳」という、オイラが 12年前に読んだ小説です。
         
ご存知かどうか ? ですが、太平記に出てくる、隠岐へ流される後醍醐天皇を救おうとした備前の国の豪士、オイラの住んでる熊山のクマヤマサンで旗揚げ、美作の院ノ庄(津山の作楽(さくら)神社)で 桜の幹を削り「天勾践(てんこうせん)を空しゅうすること寞(なか)れ 時に范蠡(はんれい)無きにしもあらず」と、実際は漢文でですが 記したという、当地では数少ない伝説上の人物「児島高徳」さんの小説です。

地元に住んでる人間ですから、小説に書かれているネタ(情報)が どれほどのものであるか評価しやすいと考えたからですが、作者の火坂さんは新潟県ご出身ですから、岡山には縁もゆかりも無いはずなのに、オイラの知らない ここらへんの地名や出来事が バンバン出てき、いったい どこで誰から手に入れたのだろうと思う情報満載で、これほどの情報 よくぞ掴み、面白く物語化して下さったものだと感嘆する一方で、どんなにタイヘンだったことだろうかと思うこと 頻りでありました。

脈絡問わずで、オイラが永久保存しておきたい情報のみ ピックアップしますと
・紀州の熊野本宮にいた山伏の一団が備前の国児島に移り住み、児島五流山伏といわれた
 集団を結成
・交通の要衝であったため、熊野本山を凌ぐ一大集団に成長し、巨大な経済力・軍事力を
 もつようになり、朝廷とも深い繋がりを持つようになった
・児島高徳は、その五流のうちの筆頭 児島頼宴(らいえん)を父とし、邑久郡豊原庄
 和田備後次郎範長の娘を母とする、3男1女の 3男として生まれた
・和田家はもとの姓を三宅と称し、かっては大和朝廷の直轄地 児島屯倉(みやけ)の管理を
 行っていたが、後 豊原庄に移住、当地の東大寺領の荘管を務め、水運にも携わり、
 備前の国きっての富裕な名家であった
・高徳は とりわけ優秀な子であったため、7歳でその和田家の養子となり、以後
 和田備後三郎高徳と名乗った
・山伏は山の武士であり、日本中の霊山、岩木山 早池峰山 金華山 出羽三山 男鹿三山
 鳥海山 蔵王 日光山 赤城山 相模大山 富士山 秋葉山 飯綱山 浅間山 御嶽山 立山 白山
 伊吹山 飯道山 愛宕山 生駒山 笠置山 吉野山 信貴山 葛城山 金剛山 熊野三山 書写山
 那岐山 熊山 児島 伯耆大山 剣山 石鎚山 英彦山 求菩堤山 阿蘇山 霧島山 を巡る
・熊山は唐より渡来された鑑真和上が奈良の都に上る途中「かの峰には霊気漂うなり」の
 言あり、山頂に帝釈山霊仙寺(りょうざんじ)という山岳寺院を開いたのが最初である
・太平記によると、児島高徳は今木 大富 射越 原 松崎などの三宅一党 200余騎と 
 児島五流山伏を率い、熊山で挙兵とある
というようなことが、挙げられます。


オイラは思います。この一冊だけをとっても、これだけの小説を上梓することが どれほどたいへんなことか、こんな拙いブログを書いてるオイラですら、身に沁みて よ~く分かるのです。ですからタダで読もうなんて ヨコシマな気持は持たないで欲しいのです。受益者負担が当たり前の世の中です。キチンと対価を払っていただけないものかと、心から思います。特に この思いを強くいたしますのが、県内図書館ネットワークで最寄りの図書館に、タダで届けてもらえることです。大層 有り難く便利な機能ではありますが、これにはいったい どれほどのコストが掛かっていることでしょう。

音楽教室からも著作権料を徴収するという判断が文化庁でなされました。H30.4.1 から実施とあります。JASRACさんは自分たちの権利主張に躍起です。ちょっとやりすぎではと思うぐらいです。今じゃ 歌枕を使った文章なんて書けなくなってしまいました。たった一行の引用でも、この gooブログに於いても許されないのですから、何という味気ない時代になったものでしょう。それにしても音楽(楽譜含む)と小説など書籍の 著作権料運用の違い、めっちゃめちゃオカシナコトだと思われませんですか?。






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