ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

パリまで日帰り出張、の時代がやってくる!

2011-06-20 20:53:39 | 社会
リニア新幹線が開業すると、東京―名古屋間が40分、大阪まで延長されると東京から67分。今でも新幹線のお陰で日帰り出張は当たり前ですが、リニアが開通すると大阪までが通勤圏内になりそうな勢いです。ただし、料金と終電の時間が問題ですが。

このように高速移動の進化は留まるところを知らないようですが、ついに、東京―パリ間が日帰り出張に・・・そんな日が遠からずやってくるというニュースを、19日のフランス・メディアが大きく紹介していました。ただし紹介の仕方に若干の「?」が。テレビ局・France2のニュースでは、この話題を伝える際に、「エッフェル塔のパリ」と「鳥居の東京」の間が2時間半になると画面に表示。日本人から見ると、その鳥居は東京というより、厳島神社の鳥居に見えてしまいます。今でも日本の伝統的イメージのひとつとして鳥居がフランス人の頭の中にあるのかもしれないですね。

さて、その2時間半のフライトですが、どのようにして可能になるのでしょうか。19日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

2050年、ロケット飛行機(un avion-fusée)の乗客は東京―パリ間を2時間半で飛ぶことになり、しかも成層圏を飛ぶことなどにより大気圏を汚染する心配がない。この夢のような乗り物は、ヨーロッパ最大の航空宇宙産業企業、EADS(European Aeronautic Defence and Security company、欧州航空宇宙防衛会社:2000年7月にフランスのアエロスパシアル・マトラ、ドイツのDASA;ダイムラー・クライスラー・アエロスペース、スペインのCASA;コンスラクシオネス・アエロノーティカが合併してできた巨大企業。傘下にエアバス社などを持つ。現在のCEOはフランス人のルイ・ガロワLouis Gallois)が大胆に推し進めるプロジェクトだ。

コンコルドの残念な結果以来、超高速飛行機の計画は断念されたかのように思えていたが、航空機の技術者たちは機体をより軽くし、価格の高騰したケロシン燃料の消費が少なくて済む航空機の開発を続けていた。ブールジェ(Le Bourget、パリ北東の郊外)で開かれるパリ航空ショーのオープン前日、EADSはその“Zehst”(Zero Emission High Speed Transport)計画の概要を発表した。超音速より早いスーパー音速機で、その開発の主たる目的は二酸化炭素の排出をゼロにすることだ。

EADSの「ミスター開発」(Monsieur Innovation)とも呼ばれるジャン・ボッティ(Jean Botti)は、Zehstは未来の飛行機として想像していた通りの乗り物だと語っている。そのフォルムはコンコルドに驚くほど酷似しており、その4メートルの模型が、20日から専門家に、23日から一般に公開されるパリ航空ショーでお披露目されることになっている。エアバスA350-1000に搭載されるエンジンをより高性能なものにするために、A350の新型2機種の運用開始を2年遅らせたエアバス社を傘下に持つEADSにとって、このコンセプト飛行機は未来へ向けた新たな一歩となる。

ZehstはSF(science-fiction)の素晴らしい要素をふんだんに取り入れている。EADSの技術開発部長のボッティ氏によれば、離陸は今までの飛行機と同じだが、その際使用される燃料は海藻を原料とするバイオ燃料になる。そして、一定の高さまで上昇するとロケットエンジンに切り替えるが、そのエンジンは水素と酸素を燃料とするため水蒸気しか発散させないクリーンな動力源だ。

現在の飛行機は10,000メートルほどの高度で飛行しているが、ロケット飛行機は32,000メートルの高さを飛行することになる。乗客がジェットコースターに乗っているような不快な気分を感じないで済むように、シートが傾いて調節を行う。この水平飛行時に、ロケット飛行機の特徴が発揮される。つまり、成層圏を飛ぶため、大気圏を汚染することがない。着陸に際しては、エンジンを停止し、グライダーのように滑空。着陸直前にバイオ燃料のエンジンを始動して無事に着陸することになる。

ボッティ氏によれば、環境問題の解決は、宇宙との境界域にある。飛行機でもなく、ロケットでもない。我々が創るのは、ロケット飛行機なのだ、ということだ。50人から100人乗りのZehstは、まだ計画段階だが、EADSはすでに目標スケジュールを持っている。2020年頃までに試験飛行を、そして運行開始を2050年頃までに行うとしている。その頃には、航空宇宙の状況は大きく変化していることだろう。特に新興国の進出によって。何しろ、EADSが設立されたのはまだ10年ほど前でしかない。従って、明確なスケジュールを持つことは不可能だ。とは言うものの、EADSの広報によれば、Zehst計画は実現できる可能性を十分に持っている。必要な技術がすでに開発されているからだ。

ロケットエンジンはすでにある。EADSの子会社、Astriumが宇宙観光ビジネス用にロケットエンジンを開発しているのだ。また海藻を用いたバイオ燃料もほぼ準備ができている。しかも、Zehst計画は日本およびフランス民間航空総局(Direction générale de l’aviation civile:DGAC)との協力で進められている。しかしボッティ氏は、開発が少しずつしか進捗しないことは理解している。まずは20~25人乗りの、将来性のある環境技術を搭載した商用機を作り、続いて50~100人用、そして現在の中距離用飛行機の乗客数である200人乗りへと大型化していく考えだ。

・・・ということで、遅くとも2050年には、東京―パリ間が2時間半で結ばれることになります。午前中、東京のオフィスで働いて、午後空港へ。Zehstに乗って2時間半でパリへ。フランス時間ではまだ同じ日の朝。それから一日働いて、夜の便で東京へ。到着後そのままオフィスへ直行すれば、出発翌日の朝からまるまる一日、働けます!

これで、身体が、もちますか? こうした環境に耐えうる人だけが生き残っていけるのでしょうか。適者生存。あるいは、自然選択。私など、とても生き抜けそうにありませんが、心配無用・・・2050年にはもはや存在していませんから。と言う人に限って、長生きする、という声もありますが。

いずれにせよ、今世紀後半には、世界はいっそう狭くなりそうです。直接出会い、話すことが容易に。そのことによって、世界はいっそう平和になれるのでしょうか。平和な世界にしていくことが、私たち人間の務めなのではないかと思います。

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