ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

ゲイ・プライドも政治の季節・・・すべては2012年だ!

2011-06-26 20:25:45 | 社会
ニューヨーク州で同性婚を認める法律が24日、上院で可決され、30日後に施行されることになりました。同性婚を認めた6番目の州で、人口の多い州だけに、他に州への影響も指摘されています。社会的マイノリティーの平等を示す指標の一つもと言われる同性婚。アメリカではニューヨーク州にまで、拡大したことになります。

自由・平等・友愛の国で、連帯を呼び掛けることにかけては人後に落ちないフランス。しかし、北欧諸国などとは異なり、カトリックの影響が残っているのか、同性婚はまだ認められていません。Pacs(Pacte civil de solidarité:連帯市民協約:1999年に成立した、同性カップルにも法的婚姻関係にあるカップルと同等の権利を認める法律)があるから、それで十分なのではないか、という意見もエクスキューズとしてあるようです。

こうしたフランスでも行われているのが、ゲイ・プライド(Gay Pride)。性的指向、性自認に誇りを持とうという運動で、発端は1969年、ニューヨークのゲイバー“Stonewall Inn”で警官の手入れに対して反抗した客たちの行動が大規模な暴動となった「ストーンウォールの反乱」。翌年の1970年から、7月にゲイを中心に自らの誇りを示すパレードを行うようになりました。フランスでは1983年にはじめて開催された、示威行進です。

今年、フランスでは25日にパレードが行われましたが、ニューヨーク州での同性婚を認める法律の成立翌日であること、そしてフランスの大統領選を来春に控えていることから、例年以上に政治的メッセージが多くなったようです。25日の『ル・フィガロ』(電子版)が伝えています。

1万人を超える人たちが25日、パリで行われたゲイ・プライドに参加した。ニューヨーク州の上院に倣って同性婚を認めるよう、2012年のフランス大統領選の候補者たちに訴えるメッセージが目立った。

“Même famille, même droits”(同じ家族、同じ権利)、“Pour l’égalité,en 2011 je marche, en 2012 je vote”(平等を目指して、2011年、私は歩く。2012年、私は投票する)・・・こうしたプラカードに掲げられたコトバやシュプレヒコールが、例年以上に政治色を強めた今年の要求を端的に示している。こう述べているのは、フランスでのゲイ・プライドを主催する主要団体、Inter-LGBT(lesbiennes, gays, bisexuels et transgenres:レスビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の広報担当、ニコラ・グガン(Nicolas Gougain)だ。まだ投票方針を決める段階ではないが、政治家には我々が同性婚を要求していることを今から明確にしておきたい、ともニコラ・グガンは語っている。

調査会社Ifopの行った調査によると、同性婚に同意するフランス人は63%と半数を超えており、同性カップルによる養子縁組にも58%が賛成している。

ベルギー、スペイン、オランダなど近隣諸国と異なり、フランスでは同性婚が認められていない。しかし、1999年に成立したPacsが同性カップルにも認められている。

1983年以降、ゲイ・プライドに毎年参加している社会党のジャック・ラング(Jack Lang:下院議員、元国民教育相、元文化相)によれば、同性婚や同性カップルが子どもを養育することを認めることは、もはや避けられないことだ。同じく社会党のアルラン・デジール(Harlem Désir:欧州議会議員、党幹部)は、来年の大統領選挙で左派陣営が勝利すれば、2012年から完全なる平等が認められることになるだろう、と語っている。

国民議会(下院)は6月半ば、同性婚を認めることを目指した社会党案を、与党UMPと連立政権に加わっている新中道(Nouveau Centre)所属の大部分の議員の反対により、否決した。

UMPの党内で、同性愛に関わる問題を扱う委員会・“Gaylib”の委員長、エマニュエル・ブラン(Emmanuel Blanc)は、「与党議員はカップルすべての権利の平等に関してフランス社会と全くずれた認識を持っている。なかなか厳しい戦いだが、我々は2012年に期待を寄せている。というのも、結婚に関しても、養子縁組に関しても、すべてのカップルの権利の平等をニコラ・サルコジが提案することになっているからだ」と述べている。

同性婚を認めたニューヨーク州上院の決定は、同性カップルの権利を擁護する人々を元気づけてくれた。フランスでは足踏み状態だが、他の国々では状況が改善されていることを物語っている。このように、前出Inter-LGBTの広報担当、ニコラ・グガンは語っている。

25日のゲイ・プライドへの参加者数は、野次馬はカウントしなかったというパリ警視庁によれば36,000人、主催者発表では80万人だった。

・・・ということで、同性カップルの結婚や子ども養育の権利も政争の具となっているようです。すべては、2012年。

しかし、社会党だけでなく、サルコジ大統領も同性カップルの権利を認めようとしている。ということは、選挙の争点にはなりにくいですね。争点つぶしのために、本気で実行する気もないのに、容認するとサルコジ大統領は述べようとしているのでしょうか。「一定のめどが立ったら」容認する・・・このような言を弄することはフランスでは許されないのではないかと思いますが。

性同一性障害など、日本社会でもようやく少しずつ容認されつつある分野もありますが、同性愛はどうでしょうか。まだまだ越えねばならないハードルは多いようです。しかも、ひとつひとつが高い。日本のハードル、その根幹をなすのは、差異を認めない、均質社会なのではないでしょうか。個性を伸ばす教育、と言いますが、性自認なども立派な個性なのだと思います。他人に迷惑をかけない個性は、積極的に認めるべきなのではないでしょうか。
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