ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

世界の2人に1人が米食。今そのコメが危ない!

2010-11-13 21:51:24 | 社会
米と言って思い出すのは、いつもながら古い話で恐縮ですが、イタリア映画の『にがい米』。北イタリア、ポー川流域での田植え作業に雇われた田植え女(モンディーナ)たちをドキュメンタリー・タッチで描いた1949年の作品ですが、ストーリーすら記憶のかなたにおぼろげになってしまっているのですが、忘れられないのが、主演のシルヴァーナ・マンガノ(Silvana Mangano)。現在のテレビ朝日系列で放送していた「午後2時の映画招待席」で見たのですが、何しろ小学生、シルヴァーナ・マンガノの官能美よりも何よりも、その黒々とした見事な腋毛に目を奪われたことをよく覚えています。

その映画でイタリアでも米作が行われているのを知ったのですが、もう少し大きくなると、イタリアのリゾット、スペインのパエリアなど米を使った各国の料理も味わえるようになり、米の食文化、意外にインターナショナルなことに気づくようになりました。しかも、米と言っても、タイに駐在してみれば、日本の米とは形も味も異なる! 米にはジャポニカ種、インディカ種、ジャバニカ種があり、タイで生産されているのは細長くぱさぱさしたインディカ種であることを知りました。米が違えば、料理も異なる。

日本では米の消費量が1962年ごろをピークに減少し続けており、今日では一人当たり年間60kg程度しか消費していません。余剰米が問題になるほどですが、世界的には、米の不足が心配されています。増える需要に追い付かない生産高・・・9日の『ル・モンド』(電子版)が紹介しています。

世界で米を主食としている人口は、30億人。世界の人口のほぼ半数です。主要消費国が、中国、インド、インドネシアですから、その人口の多さも納得できますね。しかも、インドを中心に人口が増加している。そしてついに、その増え続ける需要に供給が追い付かなくなりそうだ、という心配の声が専門家の間で出始めています。

国際稲研究所(IRRI:International Rice Research Institute:仏語ではl’Institut international de recgerche sur le riz)は、なかなか向上しない生産性と不十分な生産管理という現状が改善されない限り、短期あるいは中期的に見て、米の需要が供給を上回ってしまうだろう、と述べています。

また、国連の国際農業開発基金(IFAD:International Fund for Agricultural Development:仏語ではle Fonds international des Nations unies pour le développement agricole)は、11月9日、ベトナムのハノイで行われた専門家会議で、需要の急激な増加と不十分な収穫高という問題を解決するためには、来週でも、来月でも、来年でもなく、まさに今すぐ行動を起こさなければ手遅れになると、警告を発しています。

最近、収穫量が十分でない背景には、洪水、干ばつ、高温・低温といった気候の変化が大きく影響しています。気候変動は、世界の半数の人たちの主食をも直撃しているようです。排出ガス規制など、具体的対応策の一日も早い実施が求められますね。

専門家会議を開催したベトナムは第2位の米輸出国なのですが、やはり人口増加と自然災害による不十分な生産高に悩んでいるそうです。因みに最大の米輸出国はタイで、3位以下は、インド、パキスタン、アメリカとなっています。逆に輸入国は、フィリピン、ナイジェリア、インドネシア、イラク、サウジアラビアという順だそうです。アフリカや中近東など、意外なところで米の盛んな消費が見られるようです。さらに、生産国ですが、2008年のトップ10は、中国、インド、インドネシア、バングラデシュ、ベトナム、ミャンマー、タイ、フィリピン、ブラジル、日本で、11位にアメリカが入っています。アメリカを、日本語では米国と言いますが、中国語では美国。美しい国・・・敵対するのではなく、憧れているのでしょうか。

さて、さて、会議の席上、ベトナムのグエン・タン・ズン(Nguyen Tan Dung)首相は、食の安全保障は単に経済上の問題というだけではなく、社会の安定や国の政治あるいは国際政治に重要な役割を果たすものだ、と強調しています。また、ベトナムの農業・農村開発大臣であるカオ・ドゥック・ファット(Cao Duc Phat)氏は、2050年には90億に達するだろうと予測されている世界の人口に十分な食料を供給することが大切だ、と述べています。

IRRIによると、2010年から2030年の間に、アジアだけで毎年、1,200億ドル(約9兆8,000億円)が米の生産に投資されるが、この支援によって8.5%くらいの生産増が見込まれるそうです。そして米の増産により、貧困率が15%程度改善するだろうと予測されています。

飢えを癒す米・・・豊かな国に暮らす人々の空腹を満たし、貧しい途上国の飢えた人々を貧困から少しでも引き上げることができる米。しかし、人口が増えれば、その獲得合戦も始まるかもしれません。しかも、それは米だけにはとどまらず、他の食料にも及ぶでしょう。食の安全保障。自給率の低い我らが日本にとってこそ、実は深刻な問題になるのではないでしょうか。自給率を上げる、確実な輸入先を確保する・・・農業、外交、産業、さまざまな分野からのアプローチが欠かせないのだと思います。生きていくための、知恵の勝負。日本は確かな航海図を持っているのでしょうか。
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