ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

ランバンをH&Mのプライスで。ショッピング狂騒曲。

2010-11-28 19:46:36 | 社会
今までにも、カール・ラガーフェルトなどとのコラボを行ってきたスウェーデンのH&M。今回パートナーになったのは、フランスのファッション・ブランド、ランバン(Lanvin)。女性用はもちろん紳士用も含めて、多くのファッション・コラボレーション・ライン、“Lanvin pour H&M”が勢揃い。23日に、世界各国でファッショニスタたちにお目見えしました。

扉の開いた23日の朝、パリの9区、オスマン大通りにあるH&Mの店舗ではどのような状況になっていたのか、23日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

何しろ、ランバンのデザイナー、アルベール・エルバス(Alber Elbaz)が担当したコレクション“capsule”が、H&Mの価格で買える! ドレスが149ユーロ(約17,000円)、口紅が9.95ユーロ(約1,120円)、タキシードが199ユーロ(約22,000円)。他にも、ボレロ、ベルト、コート・・・

ファッション大好き人間が、見逃すはずはありません。早朝から、長蛇の列。通常は10時開店のところを8時にはドアを開けることにしていましたが、待ちきれない客は、早朝の3時から列を作り始めました。通行の邪魔にならないように、柵に区切られた内側に並んで、オープンを待つ客たち。臨時雇いの警備員も整理にあたっています。

しかし、騒ぎが起きることはありません。携帯電話でおしゃべりに夢中な客たち。その客たちに、ランバンの新しい香水“Marry me !”のサンプルを配って歩くアルバイト女性。

そして、ついにH&Mの店員が、並んだ客たちに、ブレスレットを配り始めました。もちろん商品のブレスレットではなく、入店時間を記したブレスレット。一気に入場させると大混乱になりますから、時間を区切っての入店になります。その時間ごとに色分けされたブレスレットを渡され、手首にはめて店内に入ることになります。例えば、ある女性客が受け取ったブレスレットには、「これは女性用コレクションを購入するためのチケットで、あなたのショッピング時間は11時45分からの15分間」と記されています。

ショッピング時間は、わずかに15分! 「オレンジのブレスレットのお客様、店内へどうぞ」というアナウンスがあると、オレンジ色のブレスレットを手にした客たちは、みな一目散に店内へ。店員が、「押さないでください、押さないでください」と連呼するほどの殺到ぶり。その中、乳母車を押しながら我先に進んでいく女性客もいます・・・母になっても、おしゃれは忘れず。そして、母は強し。

多くの客が、事前にネット上でお目当ての商品を見つけていたようで、右往左往することなく、お目当ての売り場へ一直線。例えば、ネット上でお気に入りの商品を3点見つけてやってきた女性。しかし、手渡されたブレスレットには、入店時間が9時30分とあり、それまでその商品が残っているか心配になっています。

また、一般的に思われている以上に男性客も多い。ネットで199ユーロのタキシードと靴を見つけてやってきた若い中国人男性グエン(Nguyen)さんもその一人・・・グエンというのは、ベトナム人によく見られる姓名です。取材した『ル・モンド』の記者にとっては、中国人もベトナム人も、同じなのかもしれません。実は、そうした混同、フランスで一般的です。パリ13区、イタリー広場(Place d’Italie)近くのチャイナ・タウン。名前はチャイナ・タウンですが、実際には、ベトナム・カンボジアなど旧仏領インドシナからの移住者が多い。有名なアジア食材スーパー“Tang Frères”(陳氏百貨商場)にしても、その経営者は、確か、ラオス出身。でも祖父が中国からタイへ渡った中国系ですが。いずれにせよ、フランス人にとって、東アジアや東南アジからやってきた人たちの総称は中国人。日本人も含まれます。

さて、意外に多いという男性客ですが、それでも男性売り場の方が、やはり静か。10時頃になると、さすがにネクタイは1本しか残っていませんが、蝶ネクタイとかスーツ、セーターなどはまだ十分に残っています。

一方の女性売り場。女性の方が多いため、同じ頃に列に並んでも、女性の方が入店できる時刻が遅くなる。これじゃシャネルのセールよりもひどい!と不満を漏らす女性客も。混雑を少しでも緩和するためか、試着は禁止。それでも、すさまじい熱気。持ち時間も残り5分になると、店員が、例えば、オレンジ色のブレスレットのお客様、レジへお急ぎください、と絶叫。まるで、お祭り騒ぎ。眺めていれば、目が回るばかりで、モードと消費の大観覧車!

また、ユニセフへ寄付するため、ランバンのマークを付けた3ユーロ(約330円)もしない小さなサックも販売されていますが、こちらに関心を示す客はほとんどいない! 慈善や連帯よりも、ファッション、ショッピング・・・

熱狂、雑踏、喚声・・・セール会場は、国の違いを超えて、どこも同じみたいですね。パリのショッピング狂騒曲でした。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。