ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

EU首脳会議の前哨戦、欧州人民党大会でも、対立は深まる。

2011-12-09 22:20:07 | 経済・ビジネス
「欧州人民党」・・・ご存知ですか。浅学の身にはなじみがなかったのですが、1976年に創設された、欧州の保守主義政党と中道政党、キリスト教民主主義政党からなる政党組織だそうです。ヨーロッパ39カ国の73政党が所属。欧州議会では欧州人民党グループという会派を作り、265議席を有しています。

主な所属政党は、フランスのUMP(国民運動連合)、ドイツのキリスト教民主同盟(メルケル党首)、イタリアのフォルツァ・イタリア(ベルルスコーニ党首)、スペインの国民党(ラホイ党首)、ポルトガルの社会民主党(バローゾ欧州委員会委員長がかつて党首)、ベルギーのキリスト教民主フラームス(ファン・ロンパウ欧州理事会議長が所属)などで、ドーバー海峡を渡るせいか、イギリスの政党は加わっていません。大陸側とは共同歩調を取らないことが多いイギリスですが、ここでもまた、孤高を保っています。

さて、この欧州人民党、フランス語ではPPE(le Parti populaire européen)となりますが、その党大会が4年ぶりにマルセイユで開催されました。それも、ユーロ危機を協議するEU首脳会議の直前。まるでEU首脳会議の事前打ち合わせのような会議ですが、そこでもやはり、さまざまな意見の対立があったようです。どのような対立で、誰がどのような発言をしたのでしょうか・・・8日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

8日夜から9日にかけてブリュッセルで行われるEU首脳会議で各国は一致点を見出すことができるのだろうか。マルセイユで行われたやり取りを信じるにせよ、8日(木)の時点ではゴールにたどり着けてはいない。

EU加盟27カ国の首脳が一堂に会する夕食会を前に、ほとんど同じ顔触れだが、EU諸国の保守主義政党出身の首脳たちが、サルコジ大統領の招きで、欧州人民党(PPE)の4年ぶりの党大会に集った。右派の首脳の中では、イギリスのキャメロン首相だけがそこにいなかったが、それはイギリスの保守党がPPEのメンバーでないからだ。

午前中に行われた非公開の会議、そして欧州議会議員を前にした公開討論で、いくつかの国の首脳たちの立ち位置がどのように異なっているかを推し測ることができた。アンゲラ・メルケルとニコラ・サルコジが妥協策を月曜に発表した後、各国の対立は2点に絞られた。まず、仏独首脳が強力に提唱する改革案は、もしイギリスなどが実質的な条約改定に反対した場合には、ユーロ加盟諸国だけで実施するのだろうか。たとえユーロ加盟17カ国と加盟していない10カ国との間に深刻な亀裂が生じようと。もう一点は、フランスとドイツは、他のEU諸国や欧州のさまざまな機関を出し抜いても、危機を乗り切る主導的な立場を占有しようとするのだろうか、という点だ。

党大会の会場となったマルセイユの会議場で、一部の首脳たちは曖昧な態度に終始したが、他の首脳たちは歯に衣着せぬ物言いをした。壇上に登る首脳が替わるたびに、バックのスクリーンに登壇者の国の首都の風景が映し出され、多くの国旗が空を埋め尽くした。

まずはニコラ・サルコジが登壇した。前夜、フィヨン首相が行ったように、サルコジ大統領も、状況を大仰に語った。「EUが今ほど解体の危機に瀕したことはない。もし金曜日、合意を得られなければ、二度とチャンスはない」と、攻撃的な口調で語った。

サルコジ大統領は、続いて、欧州大陸の平和と安定に果たすべきフランスとドイツの役割を強調し、「仏独両国は、他の国々よりも大きな義務を負っている」と述べた。さらに、仏独首脳の提案、就中、EUの条約を改定することに反対する首脳たちに、「変革が必要なのだ」と忠告を発した。合意がなされれば27カ国、合意に至らない場合は17カ国で行うことになる。サルコジ大統領の決意は固く、「ユーロ圏では反対する国はない」と語った。

サルコジ大統領の後、大きな拍手と共に登壇したメルケル首相のトーンはかなり協調的なものだった。首相は、ユーロ圏のうち、規定の成立に加わりながら、財政規律を厳格に適応して来なかった国々の首脳の放任主義を指摘した。そして、今回に決定は、間違いなく数年にわたりしっかりと遂行していかなければならないものになるだろうと述べ、「発言は必ずしも守られてこなかったわけであり、コトバだけでは不十分だ」と付け加えた。

想定されている改革がユーロ圏内に限定されることに反対する人がいるとすれば、それはユーロ圏に加わっていない国々の首脳だ。例えば、ポーランドのドナルド・トゥスク(Donald Tusk)首相は、聖書の表現を使いながらその点に言及した。「神が我々の言葉に混ぜ物をしたという印象を持っている。数ヶ月前から、波長を合わせることはいっそう難しくなっているのだ」と、バベルの塔に関する神話を持ち出して語った。

トゥスク首相は、過去数カ月、重要だという首脳会議が続いたことを指摘した上で、「結局、なにも解決しなかった。先ほどの会議でも、もし我々が目覚めなければ、金曜日に決定に至るチャンスはもうないと言っていたが」と、述べた。そして、ポーランドにとって、最も危険なことは、ユーロ加盟国だけで対応しようとする試みだと認め、「27カ国の結束をより強固にすべきだ。他の選択をすれば、取り返しのつかないことになる。27カ国のヨーロッパを壊してしまえば、今回の危機は我々の棺を用意することになるかもしれない」と語った。

ルーマニアのトライアン・バセスク(Traian Basescu)大統領は、現実的な議論に賛意を表した。「ユーロ加盟国ではないとはいえ、ルーマニア経済はユーロ圏で起きていることに大きく影響されている。危機の解決策が決まらない間に、利回りは5%から8%に上昇した。ルーマニアは、二つのカテゴリーに分かれたEUを受け入れることはできない。ルーマニアもユーロ圏の決定に参画することを望む。なぜなら、その決定はユーロ圏の外にも影響を及ぼすからだ」と述べた。

出席者たちは、11月20日のスペイン総選挙で勝利し、EUの会議で初めて演説を行うマリアノ・ラホイ(Mariano Rajoy)首相をあまり積極的にではないが一応拍手で出迎えた。ラホイ首相は、直前にサルコジ大統領と一対一で会談したのだが、会場の演説では、社会党のサパテロ前内閣と同意した、憲法に記載された予算案の財政均衡化目標(la règle d’or)を可及的速やかに実施すること、労働市場を改革すること、不動産バブルの崩壊以降、困難に直面している銀行のリストラを進めることなどを約束した。そして、EUが支援してくれるのであれば、EUの改革すべてに対応する用意があると述べた。

木曜の夜、今度はキャメロン首相がブリュッセルの舞台に登場する番だ。しかし、EUの歯車に油を点す役割は、彼が担っているのではない。

・・・ということで、債務過剰に端を発するヨーロッパの信用不安は、今が、山場。どう動いているのでしょうか。

「欧州単一通貨ユーロ圏17カ国と非ユーロ圏6カ国で政府間協定を結び、財政規律を強化することで合意した。EU新基本条約の制定は英国の反対で断念した。国際通貨基金(IMF)の支援を仰ぐため、ユーロ圏を中心にまず最大2千億ユーロ(約21兆円)をIMFに拠出する方針だ。」(12月8日;産経・電子版)

と報道されていますが、10日朝には、EU首脳会議のさらに詳しい結果が伝えられることでしょう。

ユーロをめぐる混乱は、首脳たちが指摘しているように、ユーロに加盟していない国々にも影響します。しかも、それはヨーロッパに限らず、世界的に影響を及ぼします。ここは、ぜひとも「ヨーロッパの知恵」を結集して、危機を乗り切ってほしいものです。「ヨーロッパの知恵」は、まだ油を点すほどには錆びついていないはずです。そして、もう一点。フランスだけではなく、全ヨーロッパの知恵を結集してほしい・・・フランスの国威発揚の手段としないことを願っています。

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