ワイン、チョコレート、フレンチ料理、スイーツ・・・「フランス」と言ってすぐ脳裏に浮かぶのは、今日では、こうした食文化。日本では変わらぬ人気を誇っていますが、、どうもこうした食の文化だけで終わってしまっているような気がしてなりません。昔は・・・そう、歳を取ると、すぐ「昔は」という話になってしまい、また始まった、と言われてしまいそうですが、それでも、敢えて・・・昔は映画、文学、演劇、美術など、さまざまなフランス文化が脚光を浴びていたのですが、今やどうしてしまったのでしょう。
グルメも立派な文化ですから、味覚を批判するつもりは毛頭ありません。何しろ、サヴァラン(Jean Anthelem Brillat-Savarin:1755 - 1826)の『美味礼讃』(“Physiologie du Goût, ou Méditations de Gastronomie Transcendante ; ouvrage théorique, historique et à l'ordre du jour, dédié aux Gastronomes parisiens, par un Professeur, membre de plusieurs sociétés littéraires et savantes”:味覚の生理学、あるいは、超越的美食学に関する瞑想録;文学・教養学界の会員である教授によりパリの美食家たちに捧げられた理論的、歴史的、トレンディな著述)という立派な学問書もあるくらいなのですから。
ただ、残念に思うのは、フランスへの関心が、ちょっと偏ってしまっていることです。もう少し広い分野でフランスを捉えると、いっそう「フランス」に近づけるのではないかと、浅学の身ながら、思ってしまうわけです。
それなら、なにも文化に限ることはない、経済、政治、社会・・・いっそう間口を広げれば、さらにフランスの実相が見えてくるのではないか、とご指摘をいただいてしまいそうです。
そうなんですね、フランスは文化だけで生きているわけではない! そうした思いをさらに強くするニュースが伝わってきました。フランスがインドへ戦闘機を輸出することになりました! その機種は何か、どれくらいの商談なのか、どことの競合だったのか、フランス国内の反応は・・・そうした事柄について、1月31日の『ル・モンド』(電子版)が紹介しています。
インド政府による戦闘機126機という巨額な入札において、ダッソー・グループ(le groupe Dassault)が選定されたと、31日、通信社“Trust of India”が伝えた。120億ドル(91億1,000万ユーロ:約9,100億円)と見積もられているこの契約により、インド政府は18機の戦闘機を購入し、108機をインドにおいて現地生産することになる。ダッソー・グループにとって戦闘機の輸出は初めてであり、快挙と言える。
ボーイング(Boeing)、ロッキード・マーチン(Lockeed Martin)というアメリカの有力メーカーやスウェーデンのサーブ・グリペン(Saab Gripen)、ロシアのミグ(MiG)を競合から蹴落とし、ダッソー社の“Rafale”とユーロファイター社(EADS ; European Aeronautic Defence and Space Company・オランダ、BAE Systems ; British Aerospace・イギリス、Finmeccanica・イタリアの合弁企業)の“Typhoon”が最終選考に残っていた。そして、31日、インド政府の情報筋は「ラファール」が最低価格で応札したことを明らかにした。
今回の入札は2007年に始められたが、アジア第3の経済大国・インドが行った最も巨額な入札の一つであり、航空軍事産業にとっても当時最も重要な入札の一つであった。
ダッソー社とそのパートナーであるタレス社(エレクトロニクス担当)とサフラン社(エンジン担当)は、インド政府の決定に謝意を表すとともに、インドの防衛に長きにわたって貢献することができる誇りを表明した。この情報が公になるや、ダッソー・グループの株価は20%も急上昇した。
サルコジ大統領も今回の発表を喜んだ。「126機のラファールがインドでの入札の最終段階にある。このことは、直接担当するメーカーや航空産業だけでなく、フランス経済全体に対する信頼の証だと言える」と述べている。同じ31日、大統領府はコミュニケを発表し、契約の最終交渉は間もなく始まるが、フランス政府はそれを全面的に支援する。また、フランスによって認められた重要な技術移転も含まれる」と述べている。
フィヨン(Françcois Fillon)首相は下院議会で、「今回の決定はダッソー社にとっても、フランスにとっても、フランス産業界にとっても、実に良い知らせだ」と述べるとともに、この入札はサルコジ大統領の望んだ戦略的パートナーシップの一環であることを強調した。そして、「非常に困難な競合を経ての今回の勝利によって、フランス航空産業のクオリティ、産業界、政府両者の粘り強い対応が報われたことになる」と付け加えた。
「インドからの30~40年にわたる長期契約だと言える。古くからの信頼関係が確認され、フランス産業界に対する信頼の証となった」と、ロンゲ(Gérard Longuet)国防相は述べている。発注はおそらく12年以上にわたって分割されることになるだろう。当然、業務提携と技術移転が行われるが、ダッソー社はインド側にパートナー企業をすでに持っている。
貿易担当大臣、ピエール・ルルーシュ(Pierre Lellouche)は、「入札を勝ち得たが、最終交渉がまだ必要だ。独占交渉の段階にいるということだ」と語り、慎重であろうとしている。
フランスの戦闘機は、これまで1機も輸出されたことがない。1980年代末にラファール計画が始められ、2006年にフランス空軍に配備されたが、ダッソー社は国際市場では失望しか味わってこなかった。2001年にはオランダ、2002年に韓国、2005年にはシンガポール、2007年はモロッコ、2009年にはブラジルと、肘鉄を食わされ続け、昨年11月にはアラブ首長国連邦、直近ではスイスから拒絶されている。
しかし、フランスはラファールを今でもブラジルに売り込もうとしている。ブラジルはラファールか、ボーイング、サーブ・グリペン連合のF / A-18 Super Hornetのいずれかを選定することになっており、アラブ首長国連邦も同じ状況だ。国防相によれば、クウェートやカタールもラファールに興味を示しており、ダッソー社はマレーシアに対しプレゼンテーションを行った。
・・・ということで、文化の国、人権の国、フランスが商談に成功したのは戦闘機、苦難の末の、126機。しかし、決して意外な状況ではありません。フランスは世界有数の武器輸出大国なのですから。
しかも、武器輸出に絡む政治スキャンダルにも事欠きません。台湾へのフリゲート艦輸出に端を発するクリアストリーム事件、アフリカの旧植民地への武器輸出に絡む疑惑・・・今回のインドへの戦闘機輸出、裏で何らかの利権が動いているのでしょうか。
また、アフリカなどで、内戦や紛争が絶えないのは、武器輸出先が必要な欧米の軍需産業が裏で暗躍しているという説も、一部にはあります。さもありなんとは思いますが、確証する術を持っていないのが残念です。
他国の人権侵害を批判する一方で、軍需産業を育成し、武器を輸出している。さらには、武器を買い求める国や部族などを絶やさないために、紛争を生み出すことも厭わない・・・こうした国々がうごめく国際社会。とても“naive”、仏語で“naïf”、つまり世間知らずのお人好しでは、生き抜いていけないと思います。
「(中東を中心とする)現在の状況について、資源や領土、影響力をめぐって各国が争っていた19-20世紀をほうふつさせる」という指摘(2月2日:ロイター電子版)もあります。知力、姦計、陰謀術数の渦巻く国際政治の荒海を、日本外交はどう航海して行くのでしょうか・・・頑張れ、日本外交、とエールを送りたいと思います。応援しかできないのが、残念ですが。
グルメも立派な文化ですから、味覚を批判するつもりは毛頭ありません。何しろ、サヴァラン(Jean Anthelem Brillat-Savarin:1755 - 1826)の『美味礼讃』(“Physiologie du Goût, ou Méditations de Gastronomie Transcendante ; ouvrage théorique, historique et à l'ordre du jour, dédié aux Gastronomes parisiens, par un Professeur, membre de plusieurs sociétés littéraires et savantes”:味覚の生理学、あるいは、超越的美食学に関する瞑想録;文学・教養学界の会員である教授によりパリの美食家たちに捧げられた理論的、歴史的、トレンディな著述)という立派な学問書もあるくらいなのですから。
ただ、残念に思うのは、フランスへの関心が、ちょっと偏ってしまっていることです。もう少し広い分野でフランスを捉えると、いっそう「フランス」に近づけるのではないかと、浅学の身ながら、思ってしまうわけです。
それなら、なにも文化に限ることはない、経済、政治、社会・・・いっそう間口を広げれば、さらにフランスの実相が見えてくるのではないか、とご指摘をいただいてしまいそうです。
そうなんですね、フランスは文化だけで生きているわけではない! そうした思いをさらに強くするニュースが伝わってきました。フランスがインドへ戦闘機を輸出することになりました! その機種は何か、どれくらいの商談なのか、どことの競合だったのか、フランス国内の反応は・・・そうした事柄について、1月31日の『ル・モンド』(電子版)が紹介しています。
インド政府による戦闘機126機という巨額な入札において、ダッソー・グループ(le groupe Dassault)が選定されたと、31日、通信社“Trust of India”が伝えた。120億ドル(91億1,000万ユーロ:約9,100億円)と見積もられているこの契約により、インド政府は18機の戦闘機を購入し、108機をインドにおいて現地生産することになる。ダッソー・グループにとって戦闘機の輸出は初めてであり、快挙と言える。
ボーイング(Boeing)、ロッキード・マーチン(Lockeed Martin)というアメリカの有力メーカーやスウェーデンのサーブ・グリペン(Saab Gripen)、ロシアのミグ(MiG)を競合から蹴落とし、ダッソー社の“Rafale”とユーロファイター社(EADS ; European Aeronautic Defence and Space Company・オランダ、BAE Systems ; British Aerospace・イギリス、Finmeccanica・イタリアの合弁企業)の“Typhoon”が最終選考に残っていた。そして、31日、インド政府の情報筋は「ラファール」が最低価格で応札したことを明らかにした。
今回の入札は2007年に始められたが、アジア第3の経済大国・インドが行った最も巨額な入札の一つであり、航空軍事産業にとっても当時最も重要な入札の一つであった。
ダッソー社とそのパートナーであるタレス社(エレクトロニクス担当)とサフラン社(エンジン担当)は、インド政府の決定に謝意を表すとともに、インドの防衛に長きにわたって貢献することができる誇りを表明した。この情報が公になるや、ダッソー・グループの株価は20%も急上昇した。
サルコジ大統領も今回の発表を喜んだ。「126機のラファールがインドでの入札の最終段階にある。このことは、直接担当するメーカーや航空産業だけでなく、フランス経済全体に対する信頼の証だと言える」と述べている。同じ31日、大統領府はコミュニケを発表し、契約の最終交渉は間もなく始まるが、フランス政府はそれを全面的に支援する。また、フランスによって認められた重要な技術移転も含まれる」と述べている。
フィヨン(Françcois Fillon)首相は下院議会で、「今回の決定はダッソー社にとっても、フランスにとっても、フランス産業界にとっても、実に良い知らせだ」と述べるとともに、この入札はサルコジ大統領の望んだ戦略的パートナーシップの一環であることを強調した。そして、「非常に困難な競合を経ての今回の勝利によって、フランス航空産業のクオリティ、産業界、政府両者の粘り強い対応が報われたことになる」と付け加えた。
「インドからの30~40年にわたる長期契約だと言える。古くからの信頼関係が確認され、フランス産業界に対する信頼の証となった」と、ロンゲ(Gérard Longuet)国防相は述べている。発注はおそらく12年以上にわたって分割されることになるだろう。当然、業務提携と技術移転が行われるが、ダッソー社はインド側にパートナー企業をすでに持っている。
貿易担当大臣、ピエール・ルルーシュ(Pierre Lellouche)は、「入札を勝ち得たが、最終交渉がまだ必要だ。独占交渉の段階にいるということだ」と語り、慎重であろうとしている。
フランスの戦闘機は、これまで1機も輸出されたことがない。1980年代末にラファール計画が始められ、2006年にフランス空軍に配備されたが、ダッソー社は国際市場では失望しか味わってこなかった。2001年にはオランダ、2002年に韓国、2005年にはシンガポール、2007年はモロッコ、2009年にはブラジルと、肘鉄を食わされ続け、昨年11月にはアラブ首長国連邦、直近ではスイスから拒絶されている。
しかし、フランスはラファールを今でもブラジルに売り込もうとしている。ブラジルはラファールか、ボーイング、サーブ・グリペン連合のF / A-18 Super Hornetのいずれかを選定することになっており、アラブ首長国連邦も同じ状況だ。国防相によれば、クウェートやカタールもラファールに興味を示しており、ダッソー社はマレーシアに対しプレゼンテーションを行った。
・・・ということで、文化の国、人権の国、フランスが商談に成功したのは戦闘機、苦難の末の、126機。しかし、決して意外な状況ではありません。フランスは世界有数の武器輸出大国なのですから。
しかも、武器輸出に絡む政治スキャンダルにも事欠きません。台湾へのフリゲート艦輸出に端を発するクリアストリーム事件、アフリカの旧植民地への武器輸出に絡む疑惑・・・今回のインドへの戦闘機輸出、裏で何らかの利権が動いているのでしょうか。
また、アフリカなどで、内戦や紛争が絶えないのは、武器輸出先が必要な欧米の軍需産業が裏で暗躍しているという説も、一部にはあります。さもありなんとは思いますが、確証する術を持っていないのが残念です。
他国の人権侵害を批判する一方で、軍需産業を育成し、武器を輸出している。さらには、武器を買い求める国や部族などを絶やさないために、紛争を生み出すことも厭わない・・・こうした国々がうごめく国際社会。とても“naive”、仏語で“naïf”、つまり世間知らずのお人好しでは、生き抜いていけないと思います。
「(中東を中心とする)現在の状況について、資源や領土、影響力をめぐって各国が争っていた19-20世紀をほうふつさせる」という指摘(2月2日:ロイター電子版)もあります。知力、姦計、陰謀術数の渦巻く国際政治の荒海を、日本外交はどう航海して行くのでしょうか・・・頑張れ、日本外交、とエールを送りたいと思います。応援しかできないのが、残念ですが。
おっしゃる通りで、中国とインド、その国境およびアジアの覇権をめぐる駆け引きからは、目が離せませんね。
しかも、そこに、パキスタンとアメリカが陰に陽に加わるわけですから、きな臭くもなります。
カッコよく言えば、外交戦略ですが、要はいかに自国の利益につなげるか。そこでは、敵の敵は友、であったりします。
情報戦、知力戦で、どう勝ち抜いていけるのか。決して、フェアプレイの世界ではないですね。
サッカーで日本選手が良く言われるのは、“malice”さが足りない。ずる賢さを身につけてはどうか、ということなんでしょうね。もっと、狡猾に。
社内政治では狡猾さを発揮する人も多いのですが、、スポーツや外交では、どうなのでしょうか・・・