ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

イタリアは、いつも「イタリア」。イタリア人も、いつも「イタリア人」だね~。

2012-01-22 21:40:15 | 社会
国民性は、なかなか簡単には変わらないようですね。しかも、外から見た方が、その特徴が良く分かる。というわけで、各国の国民性をネタにしたジョークが世界中にあるようです。

以前にもご紹介したことがありますが、『世界の日本人ジョーク集』(早坂隆著:2006年刊)から、若干引用させてもらいます。

●それぞれの幸福
 イタリア人の幸福とは、愛人とパスタを食べながらサッカーを見ている時。
 イギリス人の幸福とは、うまいブラックジョークが決まった時。
 ドイツ人の幸福とは、計画通りに物事が運んだ時。
 スペイン人の幸福とは、美味い物を食べてのんびり昼寝している時。
 日本人の幸福とは、食事をさっさと終えて再び働き始めた時。
 ソ連人の幸福とは、部屋に踏み込んできた秘密警察が人違いに気付いて帰って行った時。

●遅刻の対処法
国際的な学界の場で遅刻してしまったため、発表の持ち時間が半分になってしまった場合、各国の人々はどうするのだろうか?
 アメリカ人・・・内容を薄めて時間内に収める。
 イギリス人・・・普段通りのペースで喋り、途中で止める。
 フランス人・・・普段通りのペースで喋り、次の発言者の時間に食い込んでも止めない。
 ドイツ人・・・普段の二倍のペースで喋る。
 イタリア人・・・普段の雑談をカットすれば、時間内に収まる。
 日本人・・・遅刻はあり得ない。

●軍隊比較
世界最強の軍隊とは?
 アメリカ人の将軍
 ドイツ人の参謀
 日本人の兵
では世界最弱の軍隊とは?
 中国人の将軍
 日本人の参謀
 イタリア人の兵

●早く飛び込め!
 ある豪華客船が航海の最中に沈みだした。船長は乗客たちに速やかに船から脱出して海に飛び込むように、指示しなければならなかった。船長は、それぞれの外国人乗客にこう言った。
 アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄ですよ」
 イギリス人には「飛び込めばあなたは紳士です」
 ドイツ人には「飛びこむのがこの船の規則となっています」
 イタリア人には「飛び込むと女性にもてますよ」
 フランス人には「飛び込まないでください」
 日本人には「みんな飛び込んでますよ」

先週のフランスにおけるトップ・ニュースは、豪華客船の座礁事件でした。60数カ国からの乗客・乗員がいたというイタリアの豪華客船、コスタ・コンコルディア号。スポットが当てられたのは、乗客がどう対応したかではなく、船長がどう振る舞ったか、でした。

少なくとも11人が死亡し、21人が行方不明となっている大惨事。ご冥福をお祈りするばかりですが、問題視されているのは、イタリア人船長が取った行動。フランス人犠牲者も少なくとも4人出ています。この悲劇をフランス・メディアがどう伝えていたか、その一端を19日の『ル・モンド』(電子版)に見てみることにしましょう。

イタリア沿岸で座礁した豪華客船「コスタ・コンコルディア」号(“Costa-Concordia”)の残骸から生存者を探す捜索が、19日も行われた。現状での犠牲数は11人に上っている。そのうち8人の身元が確認された。乗客はフランス人が4人、イタリア人1人、スペイン人1人、乗員はペルー人が1人と船内のオーケストラでヴァイオリンを弾いていたハンガリー人が1人だ。

17日に発見された犠牲者のうち、フランス東部出身の二人の遺体が19日、家族によって確認されたと、トスカーナ州ゴッセート(Gosseto)市の警察が公表した。「コスタ・コンコルディア号の座礁で失われたフランス人の命は4人となった。行方不明となっている2人のフランス人に関する情報はまだない」と、仏外務省の報道官、ベルナール・ヴァルロ(Bernard Valero)は語っている。

座礁から6日、まだ24人の行方が不明なままだ(『ル・モンド』は24人と伝えています)。行方不明者の家族は船長への怒りを露わにしているが、滞在先を割り当てられ、不安の中で捜索の結果を待っている。

「昨晩行ったテストは上手く行った。潜水夫たちがすでに潜って救援活動を行っている。極小の爆発物を使って、船内へのアクセス通路を広げたので、船内に入り、生存者を探すことが可能になった」と、沿岸警備隊の広報、フィリッポ・マリーニ(Filippo Marini)が19日早朝、述べている。

しかし、潜水夫の作業は困難を極めている。井戸と化した廊下を進まねばならず、船内は鍵の掛けられたドアや家具の山、カーペットの切れ端などによって寸断されているからだ。しかも、島の近くで座礁した巨大な船体がわずかに動いただけで、18日はほぼ丸一日、捜索活動は中断を余儀なくされた。

19日、さらなる情報が、過失致死をはじめ船を座礁させたこと、座礁後に船を見捨てたことなどにより訴えられている船長、フランチェスコ・スケッティーノ(Francesco Schettino)をいっそう窮地に追い込んだ。今、船長はナポリの南、メタ・ディ・ソレント(Meta di Sorrento:『帰れソレントへ』で有名な地域ですね)にある自宅に軟禁されているが、検察によると、船長は「離船後、ジリオ島(Giglio)の岩礁の上でじっとしたまま、船が沈んでいくのを見ていた」そうだ。

起訴は、船長の行動に関する5人の乗組員の証言に基づいている。乗組員たちは、ジリオ島へ近づくためにスケッティーノ船長がルートを変更するように決めたと検察に語っており、判事(Valerio Montesarchio)は、慎重さと思慮に著しく欠ける行動だと批判している。

判事はまた、「船長の行動、特に責任を持つべき4,000人以上もの人命をないがしろにし、状況の深刻さを信じられない程に軽く見た判断が甚大な被害の原因であり、許されるものではない。船長は損害の大きさを過小評価し、沿岸警備隊に事故を速やかに知らせることを怠ったため、結果として緊急対応と救援活動を遅らせてしまった」と非難した。

取り調べを受けた際、スケッティーノ船長は自分は優れた船長だと自慢していたと言われるが、現地の報道によると、14日の事故直後、憲兵隊に「人生を変えるつもりだ。船には二度と足を踏み入れたくない」と語っていたそうだ。

捜索と並行して、燃料の流出を防ぎ、ジリオ島の環境を守るために、2,380トンにおよぶ燃料油の抜き取り作業が19日に始められることになっている。数週間かかることになるこの作業は、燃料油にいっそうの流動性を持たせるために加熱する必要があるだけに、非常に困難なものだ。

・・・ということで、『ル・モンド』はあくまで客観的に報道しているだけですが、通信社などの報道によると、船長は座礁の後にも拘らず、恋人だか愛人だかの女性との食事のためにオーダーをしたとか、乗客よりも先に救援ボート上にいたのは、混乱の中で転んだところ、たまたまボートの上に転がり落ちただけだと語ったとか、ジリオ島に近づいたのは、そこに先任の船長が住んでいるから、あるいは給仕長の家族が住んでいるので挨拶のために近づいたとか、さまざまな情報が飛び交っています。船長と一緒に食事をしようとしていた女性が外国メディアの取材を受けた映像もネットに流されていました。また、沿岸警備隊との通話記録も公開されましたが、船に戻るよう厳しく言われたにも拘わらず、なんだかんだと言って戻らなかったようです。

「さすが、イタリア人」と、変な感心をしてしまうのですが、一方、「さすが、イタリア」と感心させてくれるニュースを、同じく19日の『ル・モンド』(電子版)が伝えていました。

イタリア警察は19日、ミラノにあるスタンダード&プアーズ(S&P)イタリア法人の本社を家宅捜査した。この捜査は市場操作の疑いで2010年にムーディーズ(Moody’s)に対して始められたもので、その後S&Pに捜査対象が広げられた。

コミュニケの中で、S&Pは格付けの独立性をめぐる捜査に驚き、嘆いていると語っている。また、今回の捜査は根拠を欠いており、目的もないものだと批判。そして、自らの行動、評判、自社アナリストたちの評価を全力で守ると述べている。

トラーニ(Trani:イタリア南東部にある市)の地検は2010年末、同年5月に出されたムーディーズのレポートに対する消費者団体からの訴えに基づき、捜査を開始した。その文書はイタリア金融機関の市場における取引にマイナスの影響を与えた。その報告書において、ムーディーズはイタリアなどEUの国々の格付けを引き下げることがギリシャの場合と同じように、金融システムに影響を与えるリスクについて警戒を促していたからだ。

2011年の春から夏にかけてS&Pがイタリアに関するコメントを発表して以降、捜査対象にS&Pも含まれるようになった。検察は、S&Pの発表したコメントはイタリアに関する根拠のない判断を含んでおり、市場にネガティブな影響を与えたと判断している。5月に、S&Pはイタリアの格付けを引き下げる可能性にはじめて言及し、7月には、新たな緊縮策にもかかわらず、財政赤字削減目標にはリスクが伴うと強調していた。

それ以降、S&Pは9月にイタリアの格付けを1段階、そして今年1月13日には2段階引き下げ、BBB+とした。格付け会社は重要な時期にEU諸国の格付けを引き下げ、ユーロ危機を助長させたと批判されている。

・・・ということで、背景はいろいろあるにせよ、格付けを引き下げられた途端、S&Pオフィスの家宅捜査を行ったイタリア。良くもここまで見え透いたことを、と感心してしまいました。さすがは、イタリア!

情熱の国、イタリア。そこにあるのは、愛人、パスタ、カルチョ、責任逃れの詭弁、ずる賢さ、やられたらやり返すずうずうしさ・・・それでも、愛すべき人々なのかもしれません。周遊旅行で、フランスからイタリアに入った途端、なぜかホッとしたという人も多くいるのですから。それに、歴史の遺産。観光地としては、素晴らしいものがあります。しかし、住むとなると、愛すべき人たちとも言っていられなくなるのではないかと思ったりするのですが・・・

そして、ブーメランは、我らが日本へ。上記のジョーク集にあるように、勤勉、規律、まじめ。しかし、リーダー・シップがない。戦略がない。そう、リーダーたる人物をなかなか輩出できない社会ではあるようです。どうしてなのでしょうか。

日本を支えるのは、現場。現場の力です。トップはお飾り、神輿に乗るのは軽いほどいいと、政界でも言います。トップダウンではなく、ボトムアップの社会。だからでしょうか、社長の就任あいさつでも、聞こえてくるのは、現場に最も近い社長でありたい、現場が明るく楽しく働くことができる会社にしたい・・・決して経営戦略ではありません。現場が頑張れる環境整備が社長の役目であったりします。しかし、それで、この国は成長してきたわけで、なにも無理に変える必要はないと思います。

もし、今日本が国際競争などで困難な時期にあるとすれば、それは自らの強みである現場の力を自ら削いでしまったからではないでしょうか。現場の人件費をコストとして削減した、つまり非正規や派遣を増加させ、プロとしての誇りを失わせてしまった。また、転職を奨励することにより愛社精神を薄れさせ、仕事、ひいては会社の成長のために全力を尽くすことを忘れさせてしまった。自分のことしか考えないサラリーマンや労働者。しかも、ゆとり教育のせいか、基礎学力等に若干のハンデを抱えた労働力が増えている。さらには、ともだち親子の影響か、叱られ慣れていない、打たれ弱い人材が現場の主力になってきている。日本が沈みつつあるとすれば、それは自ら招いた結果なのではないでしょうか。

今、リーダーを希求する声が大きいですが、望むべくもないことを夢見るよりは、現場の力をもう一度取り戻すことの方が日本に合っているのではないでしょうか。現場が強くなってこそ、「さすが、日本」なのだと思います。日本人は優秀な兵ではあっても、優秀な参謀ではないようですから。もう一度、原点、日本人の良さを取り戻そうではありませんか、一人一人が、身近なところから。そう思っています。

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