ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

中近東は遠い・・・第三次オイル・ショック、日本の備えは?

2012-01-27 21:44:49 | 社会
フランス語では、“Proche-Orient”と“Moyen-Orien”になりますが、これは言うまでもなく、ヨーロッパ中心の見方。日本から見れば、「遠西」と「中西」、併せれば、「遠中西」でしょうか。そうすると、ヨーロッパは当然、極西、“Extrème Occident”になりますね。

昔、あまりに日本を「ファー・イースト」、「ファー・イースト」と呼ぶイギリス人がいたので、イギリスを“Far West”と呼んだら、嫌~な顔をしていました。ヨーロッパ中心主義が抜けないのでしょうね。

これは、なにも、西東だけではなく、南北にも言えます。日本にいると地図上では北が上と思い込んでいますが、南半球のオーストラリアに行くと、南が上の地図があります。そこに描かれている我らが日本は・・・カタチも位置も、変だな~と、思わずうなってしまいます。

慣れは恐ろしいというか、思い込みはいけないな~と思ったりするわけで、ときには視点を換えてみる必要があると思うわけです。

ということで、今日のテーマは「遠中西」、ではなく、「中近東」です。中近東と言えば、石油。輸入原油に依存する我らが日本にとって、中近東からの輸入が減少すれば、一大事。昔のトイレット・ペーパー買占めが思い出されますね。そう、オイル・ショックです。

第一次、第二次のオイル・ショックを経て、原油の供給が安定しているように思えていたのですが、ここにきて、ペルシャ湾の波高し。核開発を進めるイランへの制裁措置として、原油の禁輸を求める動きになっています。

日本もアメリカの要請を受け、検討せざるを得ない状況ですが、なかなか明快には答えにくい状況です・・・では、ヨーロッパンは? と言うわけで、23日にアップされた『ル・モンド』(電子版)の記事がEUの決定とその背景を伝えています。

イランへの圧力はさらに強まった。EU加盟27カ国の外相は23日、世界市場の混乱を防ぐため、イラン中央銀行の資産凍結、イラン産原油の禁輸という制裁措置を決めることになっている(実際、決定されました)。この決定はすでに実施されている、長い制裁リストに新たに付け加えられるものだ。433のイラン企業及び113人のイラン人の資産凍結、兵器などの輸出制限、豊富なガス田の開発などを含むプロジェクトへの投資禁止などがすでに講じられている。

EUは、はじめてイランの主要な収入源である原油、一日260万バレルという原油の輸出を制裁のターゲットとした。制裁の背景にはイランの核兵器開発があるのだが、それは国際原子力機関(IAEA、仏語ではl’Agence internationale de l’énergie atomique)の専門家にとってはもはや疑いえない事実となっている。原油禁輸が7月1日以前に発効することはないが、それは原油輸入国、特にアジアの国々に代替供給源を確保する時間的余裕を与えるためだ。

アメリカは今回の禁輸の影響を受けない。と言うのも、イランからはもはや一滴の原油も輸入していないからだ。EU諸国も、イラン産原油のわずか5.8%に相当する量しか輸入していないため、ほとんど影響を受けない。しかしその中にあってイタリア、スペイン、ギリシャは例外的にイラン原油にかなり依存しているため、同調するよう説得するのは容易ではない。一方、インド、中国、日本、韓国はイラン産原油に大きく依存している。

日本はかなり及び腰で、前例のない今回の制裁措置への同調に反対するメッセージを発している。インドは慎重な態度を崩さず、中国に至っては欧米に一切の希望を与えてくれない。「イランと通商を行っているのは中国一国だけではなく、また世界の貿易は守られるべきだ」と、湾岸諸国を訪問中の温家宝(Wen Jiabao)首相は述べている。

イラン原油の禁輸分を増産で補うという約束をサウジアラビアが守るなら、禁輸による原油価格の上昇は限定的なものになるだろう。そしてイランにとっては痛手となる。「外国企業との契約がなければ、イランの原油生産量はゆっくりとだが減少する」と、雑誌“Pétrostratégies”の編集長、ピエール・テルジアン(Pierre Terzian)は述べている。

一方、もしイランがホルムズ海峡(le détroit d’Ormuz)を封鎖すると、海運によって輸送される世界の原油の35%がそこを通過しているだけに、状況は非常に深刻なものとなるだろう。その結果、原油価格は高騰するに違いない。こうした不安は、1月初め、ユーロ安と産油国であるナイジェリアの社会的宗教的対立による混乱によって原油価格が急上昇したことで、すでに起こりうるものとして確認されている。

サルコジ大統領は、外務省に次のような意向を伝えた。軍事介入を防ぐためにあらゆる手立てを講じなければならない。もし軍事介入が現実のものとなれば、中東にとって大混乱(le chaos)となるだろう。そして、また次のように付け加えた。時間は限られている、制裁のさらなる強化によって平和は維持される、と。サルコジ大統領がそう述べる前日、アメリカのパネッタ(Leon Panetta)国防長官は、アメリカはこうした状況に対応できうる準備をしている、と述べていた。つまり、ホルムズ海峡を通過するタンカーの安全を確保するために、軍事的行動を取るということだ。

原油価格は2011年、ブレント価格(原油価格の指標)の年平均が110ドルという記録的上昇を示した。フランス石油新エネルギー研究所(l’Institut français du pétrole – Energies nouvelles)のオリヴィエ・アペール(Olivier Appert)理事長は、「世界は第三次オイル・ショックに直面している。過去の2回のオイル・ショック(1974年と1980年)と同じように、貿易収支は原油輸入と密接に結びついているだけに赤字に転落することになる」と強調している。

2012年の原油価格の上昇は、その需要の停滞により和らげられるかもしれない。1月、国際エネルギー機関(IEA、仏語ではl’Agence internationale de l’ énergie)は、今年の原油消費量の予想を5カ月連続で引き下げ、1日当たり9,000万バレルとした。

・・・ということで、「第三次オイル・ショック」と言うショッキングな表現も飛び出しています。日本ではそれほど深刻な報道にはなっていませんが、それはイラン原油の禁輸措置が実施されるのが7月以降だからでしょうか。その間に、代替供給地の確保ができる見込みがあるのでしょうか。それとも、アメリカとうまく交渉して、日本の禁輸を一部に限定できる目算があるのでしょうか。

しかし、アメリカやEUの決定、そして関係国への足並みをそろえるようにという要求ですが、実体を知れば、呆れてしまいますね。アメリカはイランから原油を輸入していない、EU諸国も一部の例外国を除いて、輸入量は非常に限られている。自国に影響のない制裁策で、イランに圧力をかけようとしている、とも解釈できます。その措置の影響を蒙るのは、アジア諸国とEUの例外国、つまり、イタリア、スペイン、ギリシャ・・・見事に信用不安の渦中にある国々ですね。いっそうの混乱に巻き込まれることはないのでしょうか。

今回の制裁措置においても、アメリカ、イギリスとその旧植民地(オーストラリア、カナダなど)、つまりアングロ・サクソンが中心的に、言いかえれば、自分たちの都合のいいように世界を動かそうとしているのでしょうか。イラン原油の禁輸措置により、もし原油価格が上昇した場合、北海油田を持つイギリス、国内に油田を持つアメリカ、しかも石油メジャーを抱える両国は、得することはあれ、損をすることはない。しかもアジアを中心とした新興国の経済にはマイナスの影響を与えることができ、自国産業の後押しにすらなる・・・素人には、こう読めてしまいます、ど素人の邪推でしかないとは思いつつ・・・

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