ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

大腸菌による食中毒で死者増える・・・犯人は誰だ?

2011-06-01 21:23:49 | 社会
あのユッケ騒動は、どうなったのでしょうか。腸管出血性大腸菌O157による食中毒で、死者まで出ました。原因究明と再発防止策は、どこまで進んでいるのでしょうか。土下座までしていた焼き肉店チェーンの社長はどうしているのでしょうか。さまざまな分野で、熱しやすく冷めやすい社会ゆえ、もう話題にも上らなくなってしまいました。相変わらずユッケは食されているのでしょうか。

O157とは種類が違いますが、O104という腸管出血性大腸菌が、今、ヨーロッパ、特にドイツを中心に猛威を振るっています。すでに、欧州全体で死者16人。こちらも原因は「生食」と今のところ言われていますが、同じ生でも「肉」ではなく「野菜」。それも「キュウリ」が怪しいと言われていました・・・しかし、新たな動きもあるようです。食中毒に関し、ユーラシアの西側では、どのような対応がなされようとしているのでしょうか。5月31日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

ドイツ政府は31日、ヨーロッパで16名もの死者を出している食中毒の原因がスペイン産のキュウリにあると言われていたことに初めて疑いの念を差し挟んだ。スペイン産のキュウリ2本を使っての最初の実験で、千人以上もの患者を発症させた腸管出血性大腸菌(E. coli entéro-hémorragique:ECEH)とは別の株(種類)が見つかった、とハンブルグ市保健所が発表したのだ。

別のスペイン産キュウリ2本を使った実験の結果はまだ公表されていない。「中毒の原因はまだ確定されていない」と、ハンブルグ市の公衆衛生担当者は語っている。しかし、ハンブルグ市が、最初にスペイン産のキュウリに疑いをかけたのだった。スペイン政府は、自国の生産者を必死にかばい、いい加減な方法でスペインの生産者に責任をかぶせようとしているとドイツ政府を非難している。

31日、ドイツにあるミュンスター大学(Münster)の研究者たちは、生の野菜を食べた際に一緒に摂取してしまったと思われる大腸菌に毒された患者を素早く認定する方法を開発したと公表した。この大腸菌による食中毒で、ドイツだけですでに14名が死亡している。「分子生物学の手法により、ごく少量の大腸菌があれば病原体がどのタイプの菌かを数時間で判別できるようになった」と、ミュンスター大学の発表したコミュニケは語っている。研究者のリーダーであるHelge Karch教授が、31日の午後、記者会見を行うことになっている。

今回の中毒は前例のない広がりを見せている。「このような大規模な食中毒は見たことがない。通常であれば、年間1,000件ほどの食中毒があるだけなのに、今回はわずか10日で1,200人もが発症した」と、Lüdenscheid市(ドイツ西部)の腎臓専門医は語っている。伝染病予防の公衆衛生を担当しているRobert Koch研究所(結核菌を発見し、1905年にノーベル賞医学生理学賞を受賞したRobert Kochの名に因んだ研究所です)は、おそらく新たな死者が出るだろうと語っている。

フランス政府はすでに、ドイツとスペインの政府に対して、腸管出血性大腸菌について透明性をもって公表するよう要求した。厚生大臣のグザビエ・ベルトラン(Xavier Bertrand:正式には、労働・雇用・厚生大臣です)は、テレビ局“France2”の番組で、詳細が判明していない段階で、この件についてコメントすることは躊躇せざるを得ないと語った。当初は、スペイン産キュウリ犯人説が有力だったが、それほど断定的でないことが分かってきた。

「ドイツ政府は当初、断固とした態度だったが、今では呈される疑問が増えて来ている。原因が何かを一刻も早く究明してほしい。最新の情報、そして透明性のある情報公開がドイツ政府にもスペイン政府にも求められる」と厚相は続けた。

今回の食中毒を引き起こしている大腸菌の株(種類)は、まだ特定されていない。野菜が生産地で汚染されたのか、輸送段階でなのか、ドイツ国内での流通でなのか、それもまだ分かっていない。フランス国内では3件の発症が報告されているが、いずれもドイツから帰ってきた人たちだ。

イギリスやデンマークでも発症例が報告されており、スウェーデンでは36例に上っている。血液、腎臓、そして重篤な場合には神経系統にまで影響を及ぼす症候群に罹った患者のすべてがドイツに滞在していた人たちだ。

・・・ということで、原因はまだ解明されていないようですが、当初「スペイン産キュウリ」犯人説が流れてしまったため、スペイン産の野菜すべてが疑われ輸出できなくなり、せっかく収穫した野菜をスペインの農家は廃棄処分にしています。他の国々の消費者は、スペイン産に限らず野菜を生で食べることを控えています。特に、キュウリ、トマト、野菜サラダの摂取を控えるようにという呼びかけもあるようですし、キノコ類を除いて野菜はいっさい食べていない、とインタビューに答えている消費者もいます。

風評被害・・・もし原因がスペイン産の野菜でなかった場合、スペインの農業が被った被害はどうなるのでしょうか。EU内の農業補助金などで解決するのか、あるいはスペイン産キュウリ説を言い始めたドイツとスペインの二国間交渉で解決するのでしょうか。かなりの金額になるのではないかと思われます。

福島原発に関する風評被害も大きくなっています。それも日本国内だけではなく、他の国々も巻き込んで、それも多くの産業に被害が及んでいます。「人の口に戸は立てられぬ」、「世間の口に戸は立てられぬ」・・・流言飛語に惑わされてはいけない、真相を突き止めてからにすべきだ、と断固として言いたいものですし、日本政府も影響を受けていないもの、安全なものをはっきりと国内外に向けてPRすべきです。そう思うのですが、しかしもし今ヨーロッパにいたとして、スペイン産キュウリを食べられるかと自問すれば、答えはノー。「転ばぬ先の杖」、「我が身大事」。「風評被害」も立場が違えば、同じ一人の人間ですら意見が異なってくるようです。私だけでしょうか・・・

風評被害に対処するには、透明性のある情報公開、一日も早い原因究明、再発防止策の策定、そして安全宣言が大切なようです。特に、真実を包み隠さず公開することがいらぬ風評被害から身を守るためにも大切なのだと思います。

1 コメント

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原因 (よしうみ)
2011-06-04 12:41:29
とても興味深い記事ありがとうございます。でも、どうしてドイツとドイツ語圏の国だけが被害が大量発生したんでしょうか?何かドイツのみが輸出入している食品などが関係しているのでしょうか・・・?他のヨーロッパ諸国での感染者は、ドイツに滞在していたから、感染したんですよね。もしかして、テロ、という可能性はないのでしょうか?
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