気がつく、ということ

　私の部落には、温泉を利用した共同浴場がある。ただし部落内では温泉が出ないので、近くの市街地からパイプラインを通して購入している。利用者で組合を作って運営しているが、維持管理は素人なので少なからぬ負担がある。

　役員が毎年交代する共同風呂ゆえに省略されていた管理項目の例として、浴槽内部以外のタイルに付く水垢・湯垢の掃除は管理項目として引き継がれて来なかった。40年も経った現在、湯船の縁の上部のタイルは、もつれた白糸のような模様の垢が目立っていた。長い時間をかけての見栄えの変化に、人は無関心となる例であろう。

　私は今年、組合の役員になった際、業務内容には入っていない垢が汚いと気づいてしまった。除去に挑戦したが、効果ありと聞いたクエン酸など酸性洗剤では歯が立たず、結局粗いサンドペーパーで毎日少しづつ作業している。

　掃除のおばさんは、気付いてくれたが、温泉利用者は気がつかないらしく、何の声も聞こえてこない。何かに気付くにも、その人の関心が必要であると思う。