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地方自治の危機(追記62)コロナ禍と「公共」

2020-06-06 16:46:54 | 地方自治
 曜日の観念が無くなるほど現役引退後の年月が長くなり、紋切言葉で「悠々自適でいいですね」と微妙なものの言い方をされることもあるが、各種趣味の団体に参加したり、自治体が主催する講演会などが結構あって退屈することはなかった。しかしここに来て コロナ禍による在宅が続いてテレビを見る時間が増えた。

 NHK-Eテレの番組「世界の哲学者に人生相談」の5月28日の相談事は、「PTAや地域の活動が煩わしいが、どうしたら前向きに参加できるか」であった。哲学者の小川仁志さんが、ナチスを逃れて亡命したユダヤ系の政治哲学者ハンナ・アーレントの“「公共」についての研究”を引いて解説した。

 権力に付き従う個々人が、連帯する幾つもの団体やグループを作って話し合い(公共)をしなければ、個人はアトム化して思考停止する(結果、全体主義へ)というアーレントの考え。PTAや地域団体に前向きになるには、人の多様な意見を認め、相手と親しすぎない適度な距離を取る(コロナ対策のような物理的距離でなく、意見に距離を取る)ことで、参加しやすくなるのではないかという。これらの実践には「勇気」が必要であるとも。

 コロナ禍で人との意見交換が出来にくくなっても、人間関系は従来と同じように必要であると、わたしは感じる。しかし、権力が国や自治体の場合は特に、市民がアトム化していると、社会は市民の望まない方向に行くかもしれない。身近なグループや団体では同調圧力が強く、異論はなかなか受け入れられないので、ある程度やりたいことを通すには会長になって頑張るのが一つの手である。しかし一般に、会長や役員になろうとする人は少ない。
また、人との交流がフレイル予防になるとも言われるが、コロナウィルス感染防止対策はそれに沿いきれない方向である。「公共」に参加する努力が求められている。
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