気になること

視点を変えて、近頃気になること

地方自治の危機(追記50)沈黙の夏・秋

2019-09-04 20:28:30 | 地方自治
 早いもので、また水稲の収穫期を迎えた。農地も少なくなったが、農地転用を制限された農振地域は黄色の絨毯となっている。最近は大型機械を所有する専門農家に、栽培を任せてしまう家が増えた。委託者は年貢米を受け取るが、負担する固定資産税・水利組合費・土地改良区賦課金・農政活動費などを差し引くと、米価が安いのでとても利益は出ない。

 秋の田んぼの畦を歩いても、かつては音を立てて飛び跳ねたイナゴが全くいなくなった。子どもの頃、用水路にいたミズスマシやゲンゴロウがいなくなって久しいが、イナゴは最近まで獲りに行った。農薬の影響も大きいと考えられるが、収穫用のコンバインにかかると、逃げ場の無いイナゴは吸い込まれてしまう。田んぼの間に残された原っぱにも居なくなった。

 田んぼを仕切る「畦」には雑草が生える。雑草の丈が高くなるのを我慢すればよさそうなものだが、イネの登熟期に米粒を害する「カメムシ」が隠れ棲むので、農協は草刈りを推奨している。

 最近は、ほとんどの地主は田作りを専門業者に委託している。少しの面積なら「草刈機」が便利だが、経営を考える業者は人の手が掛かる草刈機を使っていられない。勢い「除草剤」を使うことになり、稲が小さいうちの畦は黄土色である。黄土色に枠取られた緑の田んぼには違和感を感じる。

 田んぼを宅地にすることも増えた。用水路と宅地の間には、用水路の管理者である土地改良区の細長いベルト地帯ができる。ここに生える雑草の処理は、土地改良区から用水路を跨ぐ進入路の許可を得る際に、住宅所有者に処理をするよう委託されている。狭い所は草刈り機ではやりにくいので、どうしても除草剤を撒いてしまう。水路の側の除草剤は、いずれ水路に流れ出す。高齢化などによる耕作放棄地の雑草も問題である。

 2019年8月24日の朝日新聞 be report「家庭に広がる除草剤・殺虫剤」という記事がある。ある成分の除草剤が、人の発がん性などに影響があるなしで諸説あるが、欧米に比べて日本は考え方が甘いという。人体にも害がある位だから、植物でないイナゴなどの動物も生きられなくなると推察される。

 私の村では、河川氾濫対策で川の両岸をコンクリートで強靭化する改修を行った結果、セミが居なくなった。セミの幼虫が土中から出られなくなるからである。そして、セミの鳴かない、ただ蒸し暑すぎる夏である。最近はそのことを疑問にも思わなくなった。

 地球温暖化の影響以外に、我々は自然を黙らせるような人間本位の行動を、日々更新しているのではなかろうか。
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