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地方自治の危機(6)…【実例1の続き④】「廃掃法の要請による『2号』」の疑問<1>

2015-04-20 19:51:41 | 地方自治
 『廃掃法』は、廃棄物の処理について定め、人の日常生活から排出されるごみは市町村が適正に処理(分別、保管、収集、運搬、再生、処分)すべきことと規定している。また処理を外部に委託する場合の基準も定める。
 諏訪市代理人弁護士は、契約起案書には書いてない「後出し」の理屈ではあるが、本件が関連する『廃掃法の要請』を満足させるために、地方自治法242条の中の『2号』を適用できる随意契約をした、と釈明した。市代理人弁護士によると、『廃掃法の要請』とは「多少高価でも、市が、ごみ処理業務をきちんと管理監督したり、リサイクルの実効性を確保すること」であるので、この目的に適うような委託業者を、随意契約によって選定したという。
  この理屈に百歩を譲るとした場合、それならば、代理人弁護士および長野地裁は、廃棄物処理は何でも随意契約でよいという「権利」のみを主張するのでなく、『廃掃法の要請』に応える業務が実際に行なわれていたかどうかという「義務」の履行の実態を証拠によって確認しなければ、『2号』適用の十分条件とならないはずであった。「多少高価」以外の「市が、ごみ処理業務をきちんと管理監督したり、リサイクルを実効化する要請」を実行したという証拠を、文書で求釈明したにもかかわらず、地裁はこれら一切の証拠提出を市に求めず、検証をしなかった。次節に「廃掃法の要請」(義務)の部分の実態がどのようであったか検証する。
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地方自治の危機(7)…【実例1の続き⑤】「廃掃法の要請による『2号』」の疑問<2>

2015-04-20 18:08:42 | 地方自治
 すなわち、「ごみ処理業務をきちんと管理監督」しなければならない重要な例として、業者が処理した資源ごみの「重量」を正確に把握する(市民に説明できる形で)という管理項目がある。この重量を市が検収し、契約単価を乗じて処理費を支払うので、検収義務として重要な管理監督項目である。
 ところが、市民が分別してステーションに出した資源物は業者によって収集され、更に次のリサイクル会社に渡されるので、その処理物は諏訪市の検収員の目に触れることが無い。すなわち、対価を支払う諏訪市は、納品物(検収すべき受領物としての収集物)を見ないで、単に業者から報告された重量に単価を掛けて支払いをしているので、その信憑性について市民に説明できるエビデンスが無い。支払額が業務委託先の言い値通りとは怖い気がする。因みに、モノを見ないで検収した場合の不祥事については、注5、6 のような例がインターネット上にある。
 一般に、委託先(成果物の調達先)を決めたのと同じ部門が、成果物の検収をすると、検収内容について透明性のある説明が出来なくなるので、少なくとも民間の購買では「要求ないし発注」部門が検収することを原則的に禁止している(要求、発注、検収部門の三権分立)。要するに、検収方法の具体的規定(要綱)が市役所に無いので、検収手順が不明で、確認のためのフォローもできない。地方自治法第234条2項「契約の適正な履行を確保するため又はその受ける給付の完了の確認をするため必要な監督又は検査をしなければならない」にも抵触する。
(注5)『不正発生原因と再発防止策』(放射線医学総合研究所)ネット情報
(注6)『不正使用防止に向けた事務処理の実施について(Q&A)』(埼玉大学)ネット情報
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地方自治の危機(8)…【実例1の続き⑥】「廃掃法の要請による『2号』」の疑問<3>

2015-04-20 18:04:01 | 地方自治
  更に、市代理人弁護士の言う「『2号』採用の理由」の一つである、「リサイクルを実効化するため」の具体的業務には、業者の手間を計算して契約単価の予定価格を決める設計作業がある。実際にはこの設計は行なわれておらず、処理プロセス(処理物の品質や分別精度など)が不明でどの位のコストが掛かる委託業務なのか把握せず、業者任せであるものが多かった。いみじくも市代理人弁護士の答弁書が、「再生品のグレードを考慮して業者選定をする義務はない」と述べているには驚く。折角の『第二次諏訪市環境基本計画』の理念を無視していることが推察できる。
  このように、「廃掃法の要請」が実績として満足されているとは言えず、後出しの『2号』の具体的理由は、実態を伴わない理屈のための理屈であったことが分かる。業務規定(要綱)が無く、後任の担当者には口伝による仕事の引継ぎが長年続いて、「廃掃法の要請」が忘れられつつあると考えられる。裁判所はこの事実を完全に無視した。
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地方自治の危機(9)…【実例1の続き⑦】長野地裁の曲解のまとめ

2015-04-20 17:44:26 | 地方自治
 裁判は公開が原則であるが、地裁は第1回を除き、なぜか全口頭弁論を非公開とした。傍聴者を排除した場所での故か、裁判官は、弁護士でもない原告に対してのみ、「本件が施行令第167条の2第1項の『2号』でない理由を述べよ」とか、「市に損害が発生した証拠を出しなさい」などと要求した。
 既述のように、市が後出しジャンケンで出してきた『2号』について何故、2号とは一言も言っていない原告が、その理由を言わなければならないのか。誰が考えても『2号』を後出しした市側が、具体的実績を証拠として説明すべきである。原告は単に「『7号』である理由が、起工時に検討されていない」と言っているだけである。
  以上のように解明すべき論点がいくつもあるので、主な論点の違いを図式化して添付図に示した。裁判所の理屈は、条理に合っていない。
 なお、棄却に導くことを前提とした判決文の故か、訴状の内容を無視した部分が多い。判決文にいくら最高裁の判例を引用すればスマートだといっても、「後出し」の『2号』を糊塗すべく、「特許性のあるごみ焼却炉の購入について、担当者の合理的判断で随意契約にしてよい」という判例(最判昭62.3.20)を持ってきたのは飛躍が大きすぎる。諏訪市の該契約内容との共通性は、「廃棄物」という言葉だけであり、判例とは趣旨が違う。 
裁判所は、類似判例や条文の都合よい所を半端につなぎ合わせるばかりではなく、法律の趣旨はどうなのか、「地方自治」のあるべき姿はどうなのかという「裁判所の真(条理)」を示し説明すべきである。


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地方自治の危機(10)…【実例1の続き⑧】地方自治を阻害する長野地裁 

2015-04-20 15:52:16 | 地方自治
 判決だけ見た全国の自治体は、発注業務における随意契約の理由は不要、予定価格の設定や、受領物の検収としての数量把握、相見積りの引き合い業者数など、調達の基本(民間では、国税庁の仔細な指導がある)はおろか、法律の手続きにも無関心でよい、と裁判所がお墨付きを与えてくれたと感じるであろう。これでは本訴訟を提起したことの意味は逆効果となって、地方の時代と言われる自治をますます後退させることとなる。官尊民卑が健在なのかもしれないが、民間は法令順守に懸命である。
 より詳しくは、長野地裁判平25・10・25の判決文ではよく分からない背景を、幾つかの準備書面の原本〔平成24年(行ウ)第13号 損害賠償請求住民訴訟事件〕で是非研究していただきたい。すなわち判決は、判例とした“最判昭62・3・20”の一般論の部分をなぞる形で、あたかも「棄却」という結論が先にあり(注7、8、9参照)、結論に対する理屈付けが難しい論点は省いているようなので、地裁の保管期間が数年という「準備書面」(判決文では無視している論点がかなりある)を是非参照していただきたい。
 (注7)荘司雅彦著『嘘を見破る質問力』163ページ「法曹界の論理は“結論”が先にあり、“理由”は結論をもっともらしくするための“理屈”にすぎない」
 (注8)オリ・ブラフマン著『あなたはなぜ値札にダマされるのか?』123ページ「自分が下した評価と矛盾するデータを無視するようになる。」
 (注9)矢野輝雄著『あきれる裁判と裁判員制度』:p.30「裁判官は、すでに自分の結論を出しているので、結論に合致しない部分は無視する。どんな事実の証拠を提出しても、裁判官が『信じられない!』といえば、それまでである。」

 判決に異議があるなら、折角の司法制度に則って、高裁へ「控訴」すべきであったとも言える。しかし私ばかりでなく、市側にも新たに多額の弁護士費用が発生することと、「控訴には弁護士を立てないと、法曹世界の争い方を知らない一般市民には難しい」と文献にあったので、観念的論争は止めることにした。
 ここに述べた違和感についての現場は、私が現役時代にくどいほど経験してきたことなので、少なくとも法曹の方々よりは熟知しているつもりである。事後に読んだ文献(注10)は「住民訴訟は予定調和的にほぼ100%が負ける」と述べているので、裁判のような外部に頼るのではなく、市民自らが足元から考え行動する所にしか道は無いようだ。
(注10)矢野輝雄著『あきれる裁判と裁判員制度』:p.29
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