難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

全通研の「障害者基本法の改正について(案)」に対する見解

2011年02月23日 01時39分42秒 | 難聴一般
2011 年2 月21 日
一般社団法人全国手話通訳問題研究会理事会
「障害者基本法の改正について(案)」に対する見解
 
障がい者制度改革推進本部は「障害者の権利に関する条約(仮称)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革」(2009年12月8日閣議決定)のために設置されました。同本部の下に設置された障がい者制度改革推進会議は、障害者基本法の抜本的改正のための「障害者制度改革推進のための第二次意見」を2010年12月17日に取りまとめました。
 
しかし、2011年2月14日に内閣府が障がい者制度改革推進会議に提出した「障害者基本法の改正について(案)」(以下「改正案」という。)は、障害者の権利に関する条約(仮称)及び制度改革の理念からみて下記の点で問題があります。
 
1 障害者の権利保障について
※改正案の中の一例として「(3)地域社会における共生等」に「全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること」とされていますが、これでは努力義務に過ぎません。障害者の社会参加の保障のためには、下線部を「権利が保障」とする等請求権を明記することが必要です。
 
また、その他の条項において、基本的な権利について「可能な限り」確保するという表現は、権利保障と程遠い内容であり、「可能な限り」を削除する必要があります。
※障害者の参政権(例:選挙権、被選挙権、政治に関する情報保障)の保障を規定するところを、「選挙等における配慮」のみが記載されています。これでは聴覚障害者の政治参加は困難であり参政権の保障規定が必要です。
 
2 合理的配慮の欠如が差別であることについて
※改正案では「(4)差別の禁止」に「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について合理的な配慮がされなければならないこと」とされていますが、合理的配慮の欠如が差別であることが明確ではなく、この規定は合理的配慮の定義としては意味がありません。
 
3 情報アクセス・コミュニケーション保障について
※改正案には障害者の情報アクセスやコミュニケーション保障の記載がまったくなく、聴覚障害者をはじめとする情報アクセスやコミュニケーションに困難がある障害者の社会参加を保障していません。
 
4 言語としての手話について
※改正案には、手話を言語として認知する記載がありません。手話が言語であることは「障害者の権利に関する条約(仮称)」に記載されている内容です。手話をコミュニケーション手段とする聴覚障害者にとっては社会参加のどの場面でも手話という言語が必要であり、基本的事項として障害者基本法改正案に記載することが必要です。
 
一般社団法人全国手話通訳問題研究会は、障害者基本法の改正にあたっては、2010年6月の同会議の第一次意見と閣議決定及び2010年12月の第二次意見を踏まえ、上記の問題が是正され、障がい者制度改革推進本部設置の趣旨に沿った内容となることを求めます。
 

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