会社で要約筆記の派遣を使ってみて感じたことがたくさんある。
1)すぐわかる要約筆記ができなくてはならない。
利用者が会議の内容の何をつかもうとしているのかを理解して、素早く書けなくては依頼した意味がない。
要約筆記者がどこまで「要約」するかは利用者がどこまで理解しているかを判断できなければならない。
2)要約筆記者も利用者も努力して通訳に良い環境を作る必要があるということ。
そのために、あらかじめ、こういう背景があって開かれる会議で自分がこういうことを話し、こういう話が出てくるだろうが、こういうことを掴んで説明をする立場だということを要約筆記者に説明した。
3)要約筆記はあくまでもその場での情報保障でしかないこと。
要約筆記によって、その会議の進行はできたし意見もいっぱい出てきた。その1時間弱の会議はそれで良かったが、自分の職責はその人たちの業務の管理なので仕事の内容も人間関係もその人の性格も把握していなくてはならない。それには、一回の通訳では到底無理で、過去のあれこれの場面で情報保障が必要だし、日頃からコミュニケーションができていなければならない。
聴覚障害者には職場に配属された最初から通訳が配置されなければならないし、職場でコミュニケーションの配慮が必要だ。
4)要約筆記者は人件費であること。
会社によって違うだろうが、自分の会社は外注事務費の派遣事務費だった。通常の派遣会社の派遣は1時間2000円程度だから、要約筆記はその1.5倍だ。要約筆記によって、利用者がどれだけ会議の内容を把握し、アウトプットするかで企業はそのコストを評価する。要約筆記者の技術とかではない。
利用者からすると、使える要約筆記者でなければ苦労して、要約筆記を会社に認めさせた意味がない。
5)職場の要約筆記や手話通訳は無条件に派遣されるべきだ。
聴覚障害者がその聴力のいかんによらず、確実なコミュニケーションの保障である通訳がいつでも必要である。要約筆記者がいて、初めて職場の中で対等に渡り合える。自分は大体わかるとか、90%は分かるとか言わないことだ、その聞こえない部分がその仕事のキーワードだったらその場にいないのと同じだ。
6)企業の要約筆記の依頼には利用者が腹をくくる必要がある。
絶対に自分には要約筆記が必要で、要約筆記がいれば自分の力が発揮できると自信を持つことがまず最初に決定的に重要だ。
要約筆記が認められなければ、憲法でも障害者基本法でも、身体障害者雇用促進法でも何でも持ち出し、ハローワークにも弁護士にも難聴者協会にも訴えて、必ず実現するという意思を固めることだ。
7)最初に来る要約筆記者の力量が重要だ。
企業に派遣されてくる要約筆記者は会議の参加者はもとより、派遣を認めた上司や予算管理者も立ち居振る舞いから服装まで見ている。もちろん、依頼した本人がどう振舞ったか、何を話したかを見ている。
そういう意味では普段着では困るし、利用者だって、気合を入れているので、キビキビとした反応を示して欲しい。もちろん礼儀正しく挨拶もして、帰るべきだ。
「書けなくてすみません」という要約筆記者がいたら、怒鳴っていたかもしれない。
いろいろなことを学んだ。明後日、また来てもらうことになっている。
ラビット 記
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