障害者自立支援法の地域生活支援事業がスタートした。コミュニケーション支援事業で手話通訳事業も実施されているところが増えている。しかし、要約筆記者派遣事業は非常に少ない。
コミュニケーション支援事業の実施要綱で、なぜ要約筆記「者」派遣事業になったのか、その鍵は社会福祉基礎構造改革にある。
社会福祉基礎構造改革で、それまでの恩恵的な福祉から、権利擁護の福祉に転換が行われた。それが、行政の措置から、利用者個人とサービス提供事業者との「契約」への制度の変更だ。つまり、サービスを利用する人と提供事業者が対等になるために「契約」が必要になる。
これが、障害者福祉制度の中に取り入れたのが、2003年の支援費制度だ。障害者福祉サービスも措置から契約になり、全国の市町村で事業が実施されるようになったのだ。事業の実施が法定化されたわけだ。
この支援費制度で障害者も利用料を負担することになった。後日、大きな問題になった利用料だが、この時は応能負担だ。
しかし、手話通訳事業などは支援費制度に入らず、社会参加促進事業のままだった。なぜ、支援費制度に入らなかったのか。コミュニケーション支援は利用料の概念に合わないと考えたからだ。コミュニケーション支援事業は、2000年の社会福祉法の改正で社会福祉法人の第二種事業に指定されたが、事業の実施は厚生労働省の通知によるメニュー事業のままだった。事業の実施は法定化されていなかった。
2004年、グランドデザイン案が出て、障害者福祉制度の総合化、契約制度の拡大がうたわれた。これが、制度として出てきたのが障害者自立支援法だ。個別給付という形で、個人と事業者との契約が続く制度だ。
障害者自立支援法では、コミュニケーション支援事業がすべての市町村で実施が初めて義務付けられた。社会福祉基礎構造改革から支援費制度、障害者自立支援法へと制度が変わってきたことから、権利擁護の事業として位置付けられたことが見て取れる。コミュニケーション支援事業で派遣されなければならなかったのは要約筆記奉仕員ではなく、要約筆記「者」だったのだ。
「者」は、何かをする人ではなく、何かをすることが出来る人、認められた人という意味である。旅行者の「者」ではなく、労働安全衛生責任者の「者」だ。
しかし、コミュニケーション支援事業は、社会参加促進事業から移った事業なので「契約」ではない。移動支援事業は支援費制度から地域生活支援事業に移ったので、契約制度が継続している。
このように見ると、コミュニケーション支援事業は生まれも育ちも他の自立給付などの事業とは違っている。
ラビット 記
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