障害者権利条約の政府仮訳には、「聴覚障害者」は2回だけ出てくる。
第二四条教育の第3項(b)
「(b)手話の習得及び聴覚障害者の社会の言語的な同一性の促進を容易にすること。」
と第三十条文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加の第4項
「4 障害者は、他の者と平等に、その独自の文化的及び言語的な同一性(手話及び聴覚障害者の文化を含む。)の承認及び支持を受ける権利を有する。」
だ。
文意から、「聴覚障害者」=「ろう者」のように見える。難聴者は、コミュニケーションの多様性、特性はあるが、独自の文化を主張していない。
政府仮訳の「聴覚障害者」は「ろう者」とすべきか、それとも難聴者、中途失聴者を含むのか、別の訳語を充てるべきか考えなければならない。
ちなみに、「聴覚障害」は他に1箇所しかない。
第二四条の教育の先ほどの第3項の(c)だ。
「(c)視覚障害若しくは聴覚障害又はこれらの重複障害のある者(特に児童)の教育が、その個人にとって最も適当な言語並びに意思疎通の形態及び手段で、かつ、学問的及び社会的な発達を最大にする環境において行われることを確保すること。」
「難聴」はどこにもなく、「聴覚」は第二条の「意思疎通」の定義の中だけだ。
「「意思疎通」とは、言語、文字表記、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用可能なマルチメディア並びに筆記、聴覚、平易な言葉及び朗読者による意思疎通の形態、手段及び様式並びに補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用可能な情報通信技術を含む。)をいう。」
聴覚障害を持つ者が多様なコミュニケーション形態をもち、多様なニーズを持っていることがこの権利条約から読み取れるか?読み取れない、あるいは判りにくいならば、政府訳に注釈を加えるなどの要望が必要になる。
ラビット 記