“元” 日立市立塙山小学校 大地の会 会長日記

“元”おやじの会会長が勝手に綴る日々のたわごと集 塙山以外のみんなもあつまれ~ヽ(^o^)丿

万引き防止キャンペーン 続

2011年11月03日 | 関係団体
先日のブログでチラッとお話しした関係団体の万引き防止に対する取り組み、そんな話をしている中、日立市立小・中学校PTA連合会の副会長がローカルラジオ局からたまたま流れているのを聞いたいう詩を小生に教えてくれた。


以下がそれである。


みなさんはどうお感じになるか・・・


『万引き』

中学3年生の春、転校先の岩手県一関市の書店で私は生まれてはじめて万引きというものをした。

どうしてその小さな英和辞典を上着のしたに隠してしまったのかいまだに理由はよくわからない。

英和辞典はすでに父譲りのいいものをもっていたし、毎日でも映画館に通えるぐらい小遣いはもらっていたし、薬屋と文房具屋をやっていた母親が万引きにあうたびに嘆くのを身近に見ていたし、その寸前まで代金を払わずに持ち出すことなど考えてもいなかった。

だが気がつくともう私は定価500円の英和辞書をズボンと下着の間に挟んでしまっていた。

留守番をしていたのは緑細眼鏡のおばあさんだったが、そのおばあさんを甘く見たのか、万引きで余ったお金で大福餅でも買おうと思ったのか、友達に盗品をこっそり見せて、度胸のあるところを誇りたかったのか、古臭い辞書に飽きて新しいものが使いたかったのか、あるいはその全部だったのか、それもよくわからない。

とにかく私は硬い辞書の冷たさを下着を通じて感じながら震えて立っていた。

あのときの世界から外れてしまったような恐ろしさを今も忘れることができない

「坊やにお話しがある」

おばあさんが何時の間にか私のよこにいた。

「ちょっと奥においで」

「あたしが警察に連れていこうか」

入れ替わって店番に立ったおじさんが言うのを手を上げて止め、おばあさんは私を裏庭の見える縁側の前へ押して行った。

「上着の下に隠した物をお出し」

震えながら差し出すと、おばあさんはその英和辞書をしげしげと見てから、

「これを売ると100円の儲け、坊やに持っていかれてしまうと、100円の儲けはもちろんふいになる上に、
500円の損が出る。

その500円を稼ぐには、これと同じ定価の本を五冊も売らなければならない。この計算がわかりますか。」

400円で仕入れて500円で売っている。

簡単な計算だからこわごわ頷くと、「家は六人家族だからこういう本を一月に100冊も200冊も売らなければならないの、でも坊やのような人が月に30人もいてごらん。

うちの六人は飢え死にしなければなくなる。

こんな本一冊ぐらいでと軽い気持ちでやったのだろうけど、坊やのやったことは人殺しに近いことなんだよ」

恐ろしくなって縮み上がっていると、おばあさんは庭のすみに積んであった薪の山を指して行った。

「あの薪を割っておいき、そしたら勘弁してあげるから」

無事に帰してもらえるものなら、どんなことでもするつもりいたから、死に物狂いで薪を割ったのは言うまでもない。

薪割りがあらかた片付いた頃、おばあさんがオニギリを二つのせた皿を持って現れた。

「よく働いてくれたね、あとは息子がやるからオニギリを食べてお帰り」

そして驚いたことに、お金を700円差し出して私にこういった。

「薪割の手間賃は700円、安いと思うならどこへでも言って聞いて見るといい、700円が相場のはずだからね、700円あれば
坊やが欲しがっていた英和辞書が買えるから持っておいき、その代わりこのお金から500円差っ引いておくよ」

このとき私は、200円の労賃と500円の英和辞書一冊と欲しい物があれば働けばいい、働いても買えない物は欲しがらなければいい、という世間の知恵を手に入れた。

まったく人生の師は至る所にいるものだ、もちろんそれ以来万引きはしていない。

また薪割りをするのはごめんだし、何よりも万引きが緩慢な殺人に等しいということがおばあさんの説明で骨身にしみたからである。


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