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韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説

2022-07-25 16:02:47 | 日記
2022.6.8 4:12

韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説
武藤正敏:元・在韓国特命全権大使


 
国際・中国元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」
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  尹錫悦大統領が「台風圏」と述べた理由の一つが、5月の韓国の消費者物価上昇率が5.4%と、13年9カ月ぶりの高水準になったことである。

短期的に物価高・高金利・ウォン安の三つの波に襲われていることが韓国経済の展望を暗くしている。

経済的な困難に見舞われた背景には、
ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギーや食料価格の高騰、米国をはじめとする先進各国における物価高騰に対応した金利引き上げ、
中国のゼロコロナ政策に伴う上海市の封鎖で生じた、原材料や半導体などのサプライチェーンの混乱などがあげられる。

 韓国の中央銀行は物価高騰を抑えるため金利を引き上げている。

それは経済成長率の低下に跳ね返ってくるだろう。

物価を安定させても、成長の原動力を見つけ、経済体質を改善するという課題がある。

こうした中、韓国経済はスタグフレーション(不景気下での物価上昇)に入った、入ろうとしているとの指摘がなされている。

 
新政権への期待は
 経済の立て直し

 韓国の国民が尹錫悦政権に最も望むことは、経済を立て直し、民生を安定化させることである。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権になってから、国民生活の質は低下した。

製造業は韓国での投資に見切りをつけ、良質な雇用は失われている。

国民は一生働いても家を持つことが夢となった。

こうした経済社会の現状に対する不満が革新政権を終わらせる結果となった。

 文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている。

 尹錫悦政権に与えられた使命は、こうした韓国の経済社会を立て直すことであり、それができなければ、せっかく改善しだした支持率は低下していくであろう。

文在寅政権下で 韓国経済は弱体化

 グローバル統計サイト「NUMBEO」によると、韓国の「生活の質」指数は、文在寅政権が発足した2017年には67カ国中22位であった。

しかし、21年になると82カ国中42位と中位圏に落ちた。その最大の原因は、ソウル市の不動産価格が2倍となるなど、文在寅政権の不動産政策の失敗である。

韓国の21年の特殊出生率は0.81であるが、これは希望のない社会を反映している。

 韓国の雇用状況の悪化は著しい。

それは青年層ばかりでなく、韓国経済を支える40代の雇用率も最低水準に落ち込んでいる。

特に、製造業などの良質な雇用が減少しているのは、「反企業的」な韓国政府の政策が原因だ。

その代表例が、最低賃金の合理性のない大幅引き上げである。

 30年間ソウルで勤務したあるグローバル金融機関のCEOは、「国際資本が韓国経済に興味を失っている」と話す。

韓国経済の根本的問題は主要産業の国際競争力の低下である。

 韓国経済のGDP成長率は、新型コロナ前の19年でさえ2%だった。

それも大幅な財政支出で実現したものであり、それを除けば実質的には1%台であったといわれる。

韓国で成長率1%台というのはアジア通貨危機やリーマンショックなど世界経済が困難な時にあったくらいである。

19年の世界経済は好調であり、韓国だけがとり残されていた。

 家計所得についても、格差が拡大し、低所得者の困難は増大しており、2020年の所得上位20%と下位20%の所得格差は5.26倍に達した。

これは過去2番目に高い数字である。

 急激な最低賃金の引き上げと週52時間制など無理な所得主導成長のせいで失業が増大し、雇用も非正規雇用、短時間雇用が増えているからである。

 こうして韓国の国民生活が困難を極める中、物価高・金利高・ウォン安が襲ってきたのである。
 
 尹錫悦大統領が「台風圏」と述べた理由の一つが、5月の韓国の消費者物価上昇率が5.4%と、13年9カ月ぶりの高水準になったことである。

短期的に物価高・高金利・ウォン安の三つの波に襲われていることが韓国経済の展望を暗くしている。

 経済的な困難に見舞われた背景には、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギーや食料価格の高騰、

米国をはじめとする先進各国における物価高騰に対応した金利引き上げ、

中国のゼロコロナ政策に伴う上海市の封鎖で生じた、原材料や半導体などのサプライチェーンの混乱などがあげられる。

 韓国の中央銀行は物価高騰を抑えるため金利を引き上げている。

それは経済成長率の低下に跳ね返ってくるだろう。

物価を安定させても、成長の原動力を見つけ、経済体質を改善するという課題がある。

こうした中、韓国経済はスタグフレーション(不景気下での物価上昇)に入った、入ろうとしているとの指摘がなされている。

新政権への期待は
 経済の立て直し

 韓国の国民が尹錫悦政権に最も望むことは、経済を立て直し、民生を安定化させることである。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権になってから、国民生活の質は低下した。

製造業は韓国での投資に見切りをつけ、良質な雇用は失われている。

国民は一生働いても家を持つことが夢となった。

こうした経済社会の現状に対する不満が革新政権を終わらせる結果となった。

 文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている。

 尹錫悦政権に与えられた使命は、こうした韓国の経済社会を立て直すことであり、それができなければ、せっかく改善しだした支持率は低下していくであろう。

韓国が直面している 長期低成長の危機

 韓国経済にはインフレ、世界的な景気低迷、貿易収支悪化などの「警告灯」がともっている。

 ロシアのウクライナ侵攻によって国際的な原油価格、食料価格が急騰している。

これに加え、米国におけるインフレ加速を抑制するため、金利が急上昇している。

さらに、上海封鎖などにより、中国経済が低迷している。これらの要因は海外発であり、韓国としての対応に限界がある。

 韓国でも世界経済の不安でウォン安が進み、輸入物価が上昇、インフレを加速させている。

 前述の通り、5月の消費者物価上昇率は5.4%であり、これはグローバル金融危機だった2008年8月(5.6%)以来の高水準である。

何より軽油・ガソリンなどの石油類が34.8%と大幅上昇、生産・物流コストの上昇につながり韓国経済全般を冷え込ませている。

4月の産業活動動向で全生産が-0.7%、小売り販売が-0.2%、企業の設備投資が-7.5%と、2カ月連続でトリプル減となった。

 物価高は今後も続く見通しであり、6~7月には6%台に上昇するとの見通しもある。

 貿易収支は、3月は1億1518万ドル(約150億円)の赤字だった。4月は1~20日までで51億9900万ドル(約6800億円)の赤字である。

 主な大企業の最高責任者(CEO)は最悪の状況を前提にしたシミュレーションを作成し対応策づくりをしている。

 韓国経済は中長期的には潜在成長率の基調的下落が懸念される。

韓国は高齢化に直面しており、韓国経済を成長軌道に戻す原動力が見当たらない。

韓国銀行の李昌ヨン(イ・チャンヨン)総裁は「長期低成長」を懸念している。

 物価上昇を抑えるため、韓国銀行は政策金利を果敢に引き上げている。

コロナ拡大以降、低金利政策を取ってきたため、借金をしてまで投資を行うことがブームとなり、家計債務が1900兆ウォン(約200兆円)に膨らんだ。

政策金利の引き上げで貸出金利が上昇すれば、金利負担が増え、個人消費が落ち込むと同時に、債務不履行が増えるリスクがある。

 尹錫悦政権は、大統領当選後に急上昇した物価高に起因する経済危機に取り組まなければならない。

ただ、前述の通り、物価高・高金利・ウォン安をもたらす海外要因を韓国政府主導で抑え込むことはできず、難しい対応を求められる。


在寅政権時代の悪弊を 修正することが第一歩

 文在寅政権時に積み上がった韓国経済の「負の遺産」が、韓国経済の物価高対応を一層困難なものにしている。

それは文在寅政権が、民主労総(全国民主労働組合総連盟)という過激な労働組合の主張を大幅に取り入れた結果であり、社会主義的な論理で経済をゆがめた結果でもある。

 その代表的なものが労働生産性の向上を伴わない一方的な最低賃金の大幅な引き上げと労働時間の制限、労働災害に当たり経営者に懲役刑を含む責任を負わせる法律の制定などである。

 韓国経済を復活させ、国民に希望を与えるためには、こうした制度を抜本的に改革する必要がある。

それは、韓国経済のあり方そのものに対する保革の論理の対立であり、文在寅政権に近かった過激な労働組合との闘争を意味するだろう。

 尹錫悦政権がこれから行う経済政策は、文在寅政権および「共に民主党」(以下、民主党)の経済政策と正面から対立することになる。

尹錫悦政権として経済改革は2年後の総選挙まで待つことはできない以上、和戦両様の構えで民主党に臨もうとしているのではないか。

 いずれにせよ、民主党が韓国経済社会の国益と未来を考えて尹錫悦政権と建設的な話し合いができるかどうかが、韓国経済復活の分岐点になる。

文在寅前大統領と周辺への捜査は 民主党の現政権への対応次第

 文在寅前大統領は退任直前に非民主的手法で、検察から捜査権のほとんどを剥奪する検察捜査権完全剥奪法(検捜完剥法)を成立させた。

それは、文在寅前大統領と李在明(イ・ジェミョン)前京畿(キョンギ)道知事を捜査から守るためといわれる。

 同法は4カ月の猶予期間を経て、9月から施行される。検察に捜査権限のあった「6大犯罪」のうち、公職者、選挙、防衛産業、大規模な事故の四つは9月以降、警察だけが捜査を行えるようになる。

また、1年6カ月後に重大犯罪捜査庁が発足すれば、検察に残された汚職、経済犯罪の捜査権も剥奪される。

 文在寅前大統領は検察の捜査権を剥奪すれば安泰と考えていたのかもしれない。

しかし、いずれかの機関で必ず捜査は行われる。

 捜査権の多くは警察に移管される。

文在寅前大統領側は、検察は敵、警察は味方と考えてきた。

しかし、警察の人事を握るのは尹錫悦政権だ。

尹錫悦政権は2日、警察庁長官に次ぐ7人の幹部のうち任期が特定されている1人を除く6人を交代させた。

警察庁長官は7月で任期が終わるため、新たに任命された6人の中から後任の警察庁長官が選抜されるのであろう。
これによって警察は文在寅色を一掃することになり、文在寅前大統領とその周辺の捜査も行いやすくなる。

 また、検察は、9月までの残りの期間、文在寅政権に絡む不正の追及に本腰を入れ急いでいる。

 まず、白雲揆(ペク・ウンギュ)元産業資源相の事務所を押収捜査した。

狙いは経済性評価の捏造による月城(ウォルソン)原発の早期稼働停止疑惑だろう。

この疑惑は文在寅政権幹部を捜査俎上に載せる可能性があり、文在寅政権と近かったハンギョレ新聞は「文在寅政権に対する捜査のシグナルか」と危機感を募らせている。

 文在寅前大統領は政権から離れた今、検察の捜査権を剥奪する小手先の手法で自己防衛を図ることはできないことを思い知らされたことだろう。

さらに今後、検捜完剥法を違憲で提訴する、もしくは国民投票にかけるということも検討されているかもしれない。

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 いずれにせよ、文在寅前大統領とその周辺が身を守るための最善の方法は、尹錫悦政権と国益を目指して協力することである。

文在寅前大統領と民主党が現政権に協力すれば、尹錫悦政権も文在寅前大統領をたたく必要はない。

半面、尹錫悦大統領との対決をあおるようなことがあれば、攻撃の矛先が文在寅前大統領に向かうこともあるだろう。

 尹錫悦大統領にとっても経済危機に対応するためには民主党の協力を求めたいところだ。

 政権基盤の強くない尹錫悦大統領としては、民主党との対立は避けたいところだ。

民主党が協力姿勢を示せば、文在寅前大統領とその周辺に対する捜査を行って対立を深めることは望まないはずであり、尹錫悦大統領と文在寅前大統領の双方にとってメリットがあるのではないだろうか。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)






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