2022.04.26 05:55
連載
藤和彦「日本と世界の先を読む」
韓国経済、再び苦境、IMFが懸念…物価と金利が高騰、企業の資金調達で流動性の危機
文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー
【この記事のキーワード】韓国, 合計特殊出生率, 尹錫悦
米連邦準備理事会(FRB)がインフレに対応するため引き締めを加速する方針を明確にしていることが背景にある。
韓国も金利を引き上げなければ米韓の金利差によって海外マネーの流出が進むとの懸念が高まっている。
足元でウォン安が進行しており、追加利上げで為替の安定を図らざるを得ないのだ。
グローバリゼーションの流れが反転
30年間続いてきた世界のグローバリゼーションの流れが反転し始めたことも韓国経済にとって悩みの種だ。
グローバリゼーションの恩恵を最も受けてきた国の一つが韓国だったからだ。
韓国の輸出は1990年の680億ドルから2020年には5130億ドルと急拡大し、その間のGDPも2830億ドルから1兆6310億ドルと飛躍的に成長した。
GDP世界第10位となった韓国経済だが、貿易収支の黒字なしでは生きていけない構造になっている。
だが「最後の砦」ともいえる貿易収支にも陰りが見えている。
エネルギー価格の高騰により、韓国の今年第1四半期の貿易収支は14年ぶりに赤字となり、4月以降もこの傾向が続いている。
韓国経済の現状は内憂外患といっても過言ではないが、最も深刻な問題は日本以上の勢いで進んでいる少子高齢化だ。
韓国の昨年の合計特殊出生率は0.81人で、2017年以降、5年連続で過去最低を更新している。
この数字はOECD加盟国のなかでダントツの最下位だ。
2040年の高齢化率は35%を超えるとの予測が出ている。
人口減少も始まっており、韓国の人口は来年、5000万人を下回る見通しだ。
少子化の問題は喫緊の課題なのだが、最後まで大統領選挙の争点にならなかった。
それどころか、次期大統領の尹氏は選挙期間中に、これまで女性の地位向上に取り組んできた女性家族省の廃止を公約に掲げていた。
韓国も日本と同様に近年、女性活躍を強力に推進してきたが、これに若い男性が「女性を優遇しすぎだ」「男性に対する逆差別だ」と不満を募らせてきた。
若い男性の票を狙った公約だったが、若い女性からは猛反発を買ったといわれている。少子化がいっそう加速することになるのではないだろうか。
日本との関係改善を掲げる韓国の次期政権が、出足から大きくつまずかないことを祈るばかりだ。
(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)
●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー
1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員
2021年 現職
ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2022/04/post_292379_2.html
Copyright © Business Journal All Rights Reserved.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます