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韓国ウォンの暴落と通貨危機は再び起こるのか

2020-09-06 13:52:32 | 日記
2020年08月03日 17:23

韓国ウォンの暴落と通貨危機は再び起こるのか

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
 
韓国経済がおかれている環境は、厳しさを増している。まず、昨年から起こっている米中貿易摩擦により、韓国経済は大きなダメージを受けてきた。米中貿易摩擦がますます激化しており、韓国経済はもちろんのこと、世界経済を失速させている。

韓国の輸出は、米国による中国への露骨なけん制で中国経済が低迷している影響を大きく受けている。

中国から米国への輸出が減少すると、韓国から中国への輸出も自然に減少することが原因だ。経済を大きく輸出に依存している韓国にとっては、試練の時期である。

そのような状況のなか、今年1月から全世界に新型コロナウイルスの感染が拡大し、サプライチェーンの崩壊を招くとともに、航空産業、旅行業、小売業などを中心に、売上が大幅に減少し、「雇用破壊」が進んでいる。

さらに、韓国と日本の関係は悪化の一途をたどっており、もし韓国政府が日系企業の資産売却に踏み込むと、そのことが引き金となり、韓国では通貨危機が起こりかねない状況だ。

今回は、ウォンの暴落と通貨危機が現実のものとして発生する可能性について検討を加える。

資金の需要が高い韓国で、ウォン通貨が抱える問題
 
韓国では今でも資金の需要が高いため、不足している資金を外国から調達することが多い。韓国の経常収支の黒字は年間数百億ドル規模である一方で、海外からの短期借入金は
年間1,000億ドルの水準で推移していることから、資金調達が必要なことがよくわかる。


海外からの借入はドル建てのため、もし韓国経済が悪化するとウォンの価値が下がり、債務の負担は瞬時に増加するだろう。

さらに、投資家もリスクを回避するために、韓国の株式や債券を処分して資金を本国に還流させるため、ウォン売りがますます加速するだろう。

それでは、ウォンの暴落や韓国の通貨危機がなぜ、懸念されているのか。

まず、ウォンという通貨が抱えている根本的な問題が原因だ。

韓国に海外から入ってくる資金は、企業への直接投資を目的とした長期資金より、インカムゲイン(株式の配当金や債券の利子など)の獲得などを目的とした短期資金が多い。

短期資金は、経済が不安定になると、流動性を懸念してすぐに回収されることが多いため、「逃げ足の速い資金」である。経済が不安定になると、安全な場所を目指して資金を本国に戻す動きがいっせいに出て、歯止めがかからなくなることもある。

そうなると、ウォンは売られ、ウォンの暴落が現実のものとなるだろう。もしウォンが暴落すると、韓国が1997年に経験したアジア通貨危機のように、債務の支払いが不可能になるだろう。

ウォンが抱えているもう1つの限界は、ウォンは基軸通貨ではなく、流動性がほとんどなく他国の通貨と自由に交換できないローカルカレンシーという点である。

ウォンは世界中のどこでも使える通貨ではなく、取引量も限定されている通貨のため、世界経済が不安定になると敬遠されがちになるが、その信用力の弱さをカバーする役割を日本が担っている。しかし、日韓関係が冷え込んでいて、日本からそのような協力を得られない今の状況は、韓国経済にとって危機的な状況であるといえる。

さらに韓国は、金融取引の規制が緩い。アジア通貨危機の際に、外国資本を呼び込むためにほとんど規制を撤廃し、金融市場を自由化した。

その結果、世界で資本の出入りがもっとも自由な国になった。金融取引の規制が緩いことは、景気の良い時には、資金を呼び込むための効果的な施策となるが、景気が悪くなると、金融市場を不安定にさせる要因にもなる。

ウォンの暴落を防ぐための通貨スワップ協定のゆくえ
 
韓国政府は、急激なウォン安が起こらないように、どのような対策をしているのだろうか。

それは、為替介入である。韓国政府はウォンの暴落を防ぐため、ドルを売り、ウォンを買う為替介入を行うためにも、十分な外貨準備高や他国との通貨スワップ協定が必要になるわけだ。


韓国の中央銀行である韓国銀行が保有している6月末の外貨準備高は4,107億5,000万ドル(約44兆981億円)で、前月から34億4,000万ドル増加している。

韓国政府は「十分な外貨準備高があるため、アジア通貨危機のような通貨危機は起こらない」と主張している一方で、外貨準備高の大部分は流動性の低い資産で運用されているため、現金化するためには株式や債券を売却する必要があり、迅速かつ大量にドルとして現金化することは難しいという指摘もある。

一方で、手持ちの資金が足りない時に活用するのが、通貨スワップである。

通貨スワップとは、為替レートの急激な変動を防ぐためや、ドルなどの外貨が急激に流出するのを防ぐために使われる。危機が起こった時はあらかじめ決められた為替レートで、自国の通貨を担保にして、相手国の通貨やドルを相手国から借りることができるため、通貨危機を防ぐ有効な手段の1つだ。

韓国政府は通貨危機を防ぐ措置を拡大するため、韓国は、アメリカと600億ドル規模の通貨スワップ協定、さらに中国とは560億ドル規模の通貨スワップ協定を結んでいる。

しかし、韓国にとって重要な相手国である日本とは通貨スワップ協定が締結されていない。

日韓通貨スワップ協定は2001年7月に20億ドル規模で初めて締結され、その後、世界金融危機で300億ドルに増額され、11年には700億ドルとなった。

しかし、12年8月に李明博元大統領の独島(竹島)訪問をきっかけに日韓関係が悪化し、同年10月に満期を迎えた日韓通貨スワップ協定は延長されずに終了した。

日本は日韓通貨スワップ協定の再締結に否定的だ。

その一方で、韓国は国際政治における関係は別にして経済では良好な関係を築くことが必要だと考えている。

韓国は、韓国の輸出額が1%上がると、付随して日本の対韓輸出額も増えるため、日韓の利害は一致するという考えをもっている。

しかし、政治と経済は別ものであると頭ではわかっていても、日韓関係が感情的にもつれている現段階では、日韓通貨スワップ協定の締結は望めないだろう。

それ以上に筆者が懸念していることは、日系企業の資産売却が日韓関係をさらに悪化させ、もし日本が報復措置をとれば、韓国は再び通貨危機に陥る恐れがあることだ。


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