追い詰められる文前大統領、韓国で始まった前政権の〝大清算〟
脱北者を強制送還、殺人容疑などで告発 「追及から逃げられない」識者
尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権下の韓国では、文在寅(ムン・ジェイン)前政権の「大清算」真っただ中にある。
脱北者への人権侵害などの疑惑が噴出、文前大統領は殺人などの容疑で告発された。
退任直前には検察から捜査権を剥奪する法案を強行成立させた文氏だが、どこまで自身の助けになるのか。
文政権当時の2019年11月、亡命を求めた北朝鮮の漁師2人が強制送還された。
この際の対応について韓国統一省は12日、軍事境界線のある板門店で抵抗する男の腕を数人でつかんで無理やり連行するような様子の写真を公開した。
政府は「反人道的・反人倫的な犯罪行為」と非難した。
韓国の尹錫悦大統領(共同)
韓国の弁護士団体や人権団体は18日、文氏を職権乱用、不法逮捕・監禁、殺人など5つの容疑でソウル中央地検に告発した。
文氏を強制送還の「最高指示者」と名指ししたほか、北朝鮮に強制送還された場合、大半は処刑されるとして、「殺人の未必の故意がある」と主張している。
文在寅氏=ソウル(聯合=共同)
21日の朝鮮日報(日本語電子版)は、当時の青瓦台(韓国大統領府)が、亡命を求めた漁師の陳述内容を記載した報告書を破棄していたと報じた。
さらに強制送還の意向を伝える文書を北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に送った後すぐに、韓国ASEAN(東南アジア諸国連合)特別首脳会議に招待する親書を送ったとされる。
いずれも北朝鮮側の歓心を抱くためと指摘されている。
追い詰められつつある文氏だが、任期中最後の5月の閣議で、検察の捜査権を大幅に剝奪する法律を公布し、自身への捜査を難しくしている。
発足から約2カ月で支持率が低迷する尹政権にとって、前政権の「失政」を暴くことは、逆転材料になるのか。
ジャーナリストの室谷克実氏は「北朝鮮に関する疑惑は、文氏をめぐるこれまでの疑惑とは性質が異なるもので、支持率のためというより、明らかな人権問題を追及するためとみていいだろう。
検察については、法改正に異議申し立てする動きもある。
1、2年はかかるかもしれないが、文氏は追及から逃げられないだろう」と指摘した。
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