元徴用工訴訟の却下判決、韓国で波紋…「漢江の奇跡」日本の寄与言及
日本企業16社を相手取った韓国人「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」による損害賠償請求訴訟を却下した7日のソウル中央地裁判決が、韓国で波紋を呼んでいる。
却下の根拠として、韓国が驚異的な経済成長を遂げた「漢江の奇跡」に日本が経済支援で貢献したことなどに言及したためだ。
日本から5億ドル
判決は、日本が1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づいて提供した計5億ドル(無償3億ドル、借款2億ドル)の支援について、「『漢江の奇跡』と評される輝かしい経済成長に寄与した」とした。
同協定は、日韓の請求権問題は「完全かつ最終的に解決される」としているが、元徴用工らは日本の経済協力は少ないことなどを挙げ、協定で元徴用工の請求権は解決されなかったと主張している。
判決が日本の「寄与」に言及したのは、こうした主張を否定する根拠の一つとしたものだ。
韓国では、経済発展への日本の寄与を認めることに批判的な世論もあり、「裁判所は正しいか」(左派系のハンギョレ新聞)との報道も出ている。
今回の判決が、2018年に日本企業に賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決を否定した点も注目されている。
大法院は賠償命令は請求権協定に違反しないとしたが、今回の判決は、賠償を命じれば国際法である同協定に違反しかねないと判断した。
元慰安婦訴訟でも同様に、ソウル中央地裁が今年1月に日本政府に賠償を命じた一方、4月に別の訴訟で国際法を理由に請求を却下した。
文在寅大統領は1月の賠償判決後に記者会見で「(判決に)困惑している」と述べており、聯合ニュースはこの発言で「司法が日韓関係を考慮する流れが作られた」との観測を伝えた。
ただ、今回の判決が日韓関係改善につながるかどうかは不透明だ。
8日付のハンギョレ新聞は、大法院判決と異なる地裁の判断について「荒唐無稽な論理で組み立てられた異例な判決」と批判した。
一方で保守系の朝鮮日報は「前例のない司法混乱」と指摘し、
「歴史問題を政治利用してきた文政権と超法規的判決を出した大法院の責任だ」と論じた。
割れる世論に韓国外交省報道官は8日、「関連動向を注視する」と述べるにとどめた。
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