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山形新聞トップ 社説 香港国安法の施行 日米欧は監視強めたい

2020-07-03 17:20:23 | 日記
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香港国安法の施行 日米欧は監視強めたい

中国政府による香港の統制強化を目的とした「香港国家安全維持法」が6月30日、全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会の会議で可決、成立し、香港政府は香港返還23年に当たる7月1日を前に、30日午後11時(日本時間1日午前0時)に施行した。

 香港では民主派政治団体が早くも解散を宣言したほか、繁華街コーズウェイベイ(銅鑼湾)で「香港独立」と書かれた旗を所持していた男性が施行されたばかりの新法違反容疑で逮捕されるなど深刻な影響が出ている。

返還の際、中国が「50年間は変更しない」と国際社会に公約した「一国二制度」の形骸化は必至だ。

 中国は「高度の自治」や「司法の独立」を認めた一国二制度を堅持し、香港住民の自由と権利を尊重して、民主化を進めるべきだ。

日米欧は協調して、中国当局が香港で人権侵害を起こさないよう国家安全法制の運用実態を厳しく監視していきたい。

 6章66条から成る新法によれば、中国政府は香港に「国家安全維持公署」、香港政府は自ら「国家安全維持委員会」を新設。

両組織は(1)国家分裂(2)政権転覆(3)テロ活動(4)外国勢力との結託による国家安全への危害-の4犯罪を摘発する。国家分裂や、国家の安全に危害を加える罪は最高で終身刑となる。

 「特定の状況」では、国家機関が香港で「管轄権」を行使できるとしており、中国の国家安全当局が香港の住民や外国人の容疑者を拘束し、本土に送って訴追できるようになる。新法の最も危険な部分だ。

 当面の焦点は、9月の立法会(議会)選挙で過半数獲得を目指す民主派を当局がどう処遇するかだ。新法は立候補者が憲法に相当する香港基本法の順守や香港政府への忠誠を誓う確認書に署名するよう義務付けており、署名を拒否すれば、立候補できなくなる可能性もある。

 中長期的には、中国・香港政府が民主派の活動と存在をどこまで制限するか注目される。外国の人権団体と共闘し、資金を受けた穏健な民主派まで罪に問うなら、基本法で保障されている言論、結社、集会の自由さえなくなってしまう。

 「自由世界の旗手」を任じる米国は、香港を抑圧した中国共産党当局者へのビザ制限措置、軍民両用技術の輸出制限など、次々と強硬策を打ち出してきた。

ポンペオ国務長官は6月30日、声明で「一国二制度を一国一制度に変えた」と中国を批判、米国が香港に認めてきた優遇措置について「一部の例外を除き廃止するだろう」と表明した。

 一方で、肝心のトランプ大統領がこのような姿勢を貫くことができるかは不透明だ。

先月出版されたボルトン前大統領補佐官の回顧録によると、トランプ氏は昨年6月の米中首脳電話会談で貿易協議を優先し、香港で起きていた大規模デモを擁護しない姿勢を中国の習近平国家主席に示している。

 ただし、中国の強権姿勢を結果的に追認するようなことになれば、世界の自由や民主主義の後退につながりかねない。日本や欧州は米国を巻き込みながら、今後足並みをそろえて中国に対していくことが重要になる。

(2020/07/02付)

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