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【中央時評】韓国がアルゼンチンの悲劇を避けるためには(2018年09月28日15時53分付 中央日報日本語版より)

2018-10-29 13:12:59 | 日記
「韓国=アルゼンチン」説

新宿会計士

韓国メディア『中央日報』(日本語版)の記事は、当ウェブサイトでも批評対象として好んで取り上げる題材の1つです。

中央日報自体、わが国のメディアではありませんが、いちおうは「大手メディア」の範疇に入ります。

そして、「大手メディア」とはにわかには信じられないクオリティの記事が大量に掲載されるため、当ウェブサイトとしては、「ネタ」的に取り上げる分にはちょうど良いのです。

ただ、あまり中央日報の話題に反応し過ぎると、まるで当ウェブサイトが「韓国専門サイト」のようになってしまうので、

一時期、中央日報の話題を取り上げるのは抑制していたのですが、やはり話題としての面白さには勝てず、最近、再び中央日報の記事を取り上げることが増えてしまっています。

そんなネタの1つが、先週末に掲載された、この記事です。


【中央時評】韓国がアルゼンチンの悲劇を避けるためには(2018年09月28日15時53分付 中央日報日本語版より)

この記事は、正直に申し上げれば、韓国メディアにはありがちな「何が言いたいのかよくわからない記事」でもありますが、きちんとした金融の知識を持って読めば、現在の韓国が抱えている問題点がリアルに浮かび上がってくる材料でもあります。

いったい何が書かれているのでしょうか?
――↓本文は以下に続きます↓――

通貨危機に弱い国々

アルゼンチンの事例:国債のデフォルト

この中央日報の話題に入る前に、通貨危機について触れておきましょう。

アルゼンチン、トルコ、インドネシア、韓国、ベネズエラ、ジンバブエ、北朝鮮、そして中国。

これらの国名を見て、共通点が思い浮かぶ方は、すごい国際経済通だと思います。

いずれも経済運営に何らかの問題を抱えている国であり、とくに、外貨依存が激しい国だと理解すれば間違いありません。

たとえば、アルゼンチンは、今世紀に入ってから2回も外貨建ての国債のデフォルトを発生させています。

とくに2014年のデフォルトに際しては、アルゼンチンの国内法で債務減免を決定したのですが、

米国のニューヨーク地裁のアルゼンチン政府敗訴という決定を覆すことができませんでした。

いわば、国権の最高機関である国会が、外国の地裁に敗北したのです。

といっても、これは当たり前の話です。

なぜなら、アルゼンチンという国が米ドルという外国通貨で債券を発行している以上、

アルゼンチンが発行した国債にはアルゼンチンの主権が及ばないからです。

結局、アルゼンチンは外貨の流出を避けるために複数回の緊急利上げを余儀なくされ、

現在の政策金利は60%(!)にも達している状況ですが、それでもアルゼンチン・ペソ(ARS)の下落は留まるところを知りません。

私自身、私用で2013年にアルゼンチンを訪問したときの為替相場は、1ドル=5ペソ程度でした。

しかし、日本時間の木曜日、米国で利上げが行われた影響もあるのかもしれませんが、アルゼンチン・ペソは金曜日時点の公式レートで1ドル=41.30ペソ、つまり約8分の1に暴落している形です。

トルコの事例:ポピュリズムと紙幣の刷り過ぎ

一方、今年8月に危機が強く意識された国が、トルコです。

トルコの場合は、米国人宣教師を拘束している問題で米国と対立し、トランプ政権がトルコに対する関税引き上げなどの経済制裁を発動したことで、通貨のトルコ・リラ(TRY)が急落。

2016年1月時点で1ドル=3リラ程度だったものが、8月末で1ドル=8リラ程度となっています。

ただ、世間的には「トルコは米国と対立したために通貨が売られた」と勘違いされている節がありますが、私に言わせれば、これは正しくありません。

もともと、トルコでは中央銀行のエルドアン政権からの独立性が不十分であり、必要な金融引締めを行っていないため、通貨が売られやすい土壌があるのです。

考えてみればよくわかりますが、現代社会では、ほとんどの国が「管理通貨制度」を採用しています。

これは、金地金などの裏付資産なしに、国の信用力だけを裏付けに通貨を発行する仕組みです。

中央銀行が金利を引き下げたり(利下げ)、おカネをジャブジャブ刷ったり(量的緩和)すれば、景気は良くなりますが、

その分、通貨に対する価値が損なわれやすくなります(ちなみにカネの価値が下がることは、経済学的にはモノの価値が上がることと同じであり、これを「インフレ」と呼びます)。

トルコの場合はもともとインフレがきつく、一般的にこういう局面ではインフレを抑え込むために、金利を引き上げたり(利上げ)、おカネを市場から回収したり(量的引締め)する必要があります(これを金融引締めと呼びます)。

しかし、ポピュリストのエルドアン政権は国民の支持を失うことを恐れ、中央銀行に介入し、金融引締めをやらせないようにしているのです。

そうなれば、トルコ・リラに対する信頼が徐々に損なわれ、インフレも進行しますし、為替市場でトルコ・リラが下落するのも当たり前の話なのです。

自国通貨が暴落したら困るのか?

ところで、自国通貨の価値が暴落したら、何が困るのでしょうか?

これには大きく2つのポイントがあります。

1つ目は、

外国からの輸入品の値段が暴騰することです。

たとえば、1ドル=10ペソだったときに、アメリカから1ドルの製品を輸入すれば、それは10ペソで売れます(※輸送費、関税、利益等を無視した場合の話)。

しかし、1ドル=20ペソに上昇(つまり自国通貨が下落)すれば、同じ製品の値段は20ペソに暴騰します。

外国から生活必需品(とくに食料品など)を輸入している国は、いきなりその生活必需品の価格が2倍になってしまうのです。

2つ目は、外国から外貨で借金をしているときに、借金(つまり負債)の価値が上昇してしまうことです。

たとえば、あるアルゼンチン企業が1ドル=10ペソの時に100万ドルを借りたら、その時点で負債の価値は1000万ペソです。

しかし、1ドル=20ペソに上昇(つまり自国通貨が下落)すれば、負債価値はいきなり2000万ペソに倍増してしまいます。いきなり借金が2倍になってしまうようなものですね。

そういえば、サブプライム危機直前の2007年頃だと、スペインなどのユーロ圏で、「高金利のユーロではなく、低金利の日本円でおカネを借りましょう!」というキャンペーンが流行していました。

しかし、2008年の金融危機により日本円が暴騰し、これらの国々では借金が膨らみ、破産する家庭が続出しました。

アルゼンチンの場合も、米ドルなどで多額のおカネを借りているため、外貨建ての借金を返すことが非常に困難な状況になっています。

ただ、アルゼンチンは農産国であり、食料の輸出国でもあります。

生活に必要な食糧は輸入に頼らなくても、だいたい国内で生産できます。

わが国の総務省統計局が発表する『世界の統計2018 第9章』(P161)を見ても、2016年におけるアルゼンチンの輸出総額(約577億ドル)に占める食料品等の金額は263億ドルで、比率で見ると約45%にも達しています。

それどころか、自国通貨が暴落すれば、自国製品に輸出競争力が生じます。

アルゼンチンは外貨建ての借金が返せないという状況にありますが、その点を除けば、農産物の輸出競争力が増えていて、却って都合が良いのかもしれません。

しかし、トルコの場合は貿易赤字国であり(『世界の統計2018 第9章』P160)、自国通貨が下落したら貿易赤字幅が拡大するという困った状況にあります。

したがって、通貨安が続けば、そのうちトルコ国民は生活苦に陥り、生活が破綻する家計も続出するかもしれません。

韓国の状況

中央日報の主張の要旨

ここで、冒頭の中央日報の記事に戻りましょう。

といっても、今回の中央日報の記事も、ほかの記事と同様、何が言いたいのか、相変わらず論旨がよくわかりません。

ただ、ここではできるだけ噛み砕き、語順を入れ替え、日本語を手直しして、箇条書きで要約してみると、だいたい次のとおりです。

•アルゼンチンは経済危機にあるが、韓国もアルゼンチンと同じような欠点を抱えている。

•アルゼンチンは今年の経済成長率がマイナスでインフレ率も30%に達しており、対外債務は外貨準備高の5倍を超えている。今年6月には国際通貨基金(IMF)から融資を受けたがペソ安は止まらず、同国中央銀行は先月、通貨防衛のために政策金利を60%に引き上げた。

•2015年に発足したマクリ政権は緊縮財政、年金改革、補助金縮小、市場開放、労働市場改革などを推進したが、労働団体の反対デモに直面したほか、過去の政権のポピュリズムの積弊も大きく、改革を推進して成果を出すに至っていない。

•韓国はアルゼンチンと比べれば経済規模も大きく、先端輸出産業は発展しているが、潜在成長力の低下と政府財政支出拡大の傾向があり、また、対外依存度が高く、国際経済環境の変化に脆弱であるという点ではアルゼンチンと同じだ。

•しかも、今後、米国の北朝鮮に対する経済制裁が解除されれば、南北経済協力に必要な政府財源も相当な規模となることが予想される。よって、韓国は外部の衝撃に十分に備える必要がある。

…。

要するに、「現在の韓国はアルゼンチンと比べて状況はまだまだ良いが、このままだと放漫財政の末にアルゼンチンのようになってしまう」、と言いたいのでしょうか?

ただ、最後の「外部の衝撃に十分に備える必要がある」という下りについては、具体的に「どう備えるべき」なのか、まったく言及がなされていません。

表面上好調な韓国に通貨危機の影

この点、韓国は貿易黒字も巨額であるなど、表面上は好調です。

ただ、こうした輸出の堅調さは、韓国の中央銀行による為替介入の力によるところも大きいのが実情であり、実際、韓国の中央銀行が人為的に為替相場を誘導していることは、米財務省の報告書にも明記されています(このあたりについては『韓国は為替操作国だ―外貨不足の末に…』もご参照ください)。


また、当ウェブサイトでも以前から何度も指摘しているとおり、韓国は外需依存度が極めて高く、しかも外国から外貨建てでかなりの借金をしているようです(外貨準備統計の正確性については『外貨準備統計巡る韓国のウソと通貨スワップ、そして通貨制裁』でも取り上げていますので、ご参照ください)。


つまり、韓国は今すぐ再び通貨不安に直面してもおかしくない状況が続いているのであり、経済運営は綱渡り状態でもあります。

当然、いざという時に備えるのであれば、外貨準備高の不足を補う措置が必要です。

先ほどの中央日報の記事に記載されていない重要な内容を指摘しておきましょう。

経済破綻を予防するために、まっさきにやらなければならないこととは、ズバリ、日本政府に土下座して、今すぐ1000億ドル規模の通貨スワップ(BSA)協定を締結してもらうことだと思います。

もっとも、プライドだけはエベレスト山よりも高い現在の韓国に、それができるとも思えません(※ついでに言えば、仮に日本の財務省や経団連あたりが「日本は日韓通貨スワップに応じるべきだ」などと主張しようものなら、私はウェブ評論家の1人として、全力でそのような主張を批判したいと思います)。

利上げも利下げもできない国

一方、現在の韓国では、経済運営が非常に難しいのが実情です。

まず、韓国で雇用不安が高まっていることは事実ですが、これは人災のようなものでしょう。

というのも、文在寅(ぶん・ざいいん)政権がポピュリズムのためでしょうか、最低賃金水準をどんどんと引き上げているからです。

しかし、一般に経済全体で雇用吸収力を増やさないと、雇用は増えません。

現在、韓国の雇用市場で発生しているのは、雇用吸収力が増えていないのに最低賃金が上昇してしまったために、新たな雇用が生まれない、という状態です。

そして、雇用が低迷すれば、失業率が上昇し始めるでしょう。

こうしたときには、中央銀行が金融緩和を行い、インフレを誘発して雇用を拡大するのが金融政策の定石です。

しかし、トルコの例にみるまでもなく、韓国の場合も、米国が利上げ局面にあるなかで韓国が利下げに踏み切れば、韓国から一斉に外資が引き揚げてしまう可能性もあります。

つまり、利下げすれば通貨危機、利上げすれば雇用不安という、「利上げも利下げもできない状態」が続いているのです。広告・スポンサーリンク


日本への教訓

最大の違いは、「隣に日本があるかどうか」、だ

ところで、あまり知られていませんが、アルゼンチンもトルコも韓国も、1つの共通点があります。

それは、「G20」を構成している、という点です。

「G20」とは、G7(日米英仏独伊加)に「BRICS」の5ヵ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)、それにサウジアラビア、トルコ、アルゼンチン、インドネシア、オーストラリア、メキシコ、韓国の7ヵ国に「欧州連合(EU)+欧州中央銀行(ECB)」を加えた20者のことです。

つまり、アルゼンチンとトルコと韓国は、いずれも「先進国ではないがG20を構成している」という共通点があるのですが、それとともに、「通貨が弱い国」でもあります。

ただし、韓国がアルゼンチンやトルコと決定的に違う点が1つだけあります。それは、

「隣に日本があるかどうか」


です。そして、これは極めて重要な条件です。

農業に適した肥沃な国土を擁するアルゼンチン、かつてのオスマン帝国の末裔としての強靭な精神を持つトルコと異なり、

国土も貧弱で、半万年の歴史の中で満足に中国から独立していたこともほとんどないような朝鮮国の南の末裔である韓国が、そもそもなぜG20を構成しているのか。

その理由は、日本が隣にあって、どんな発展途上国でもたちまち先進国になってしまうほどの莫大な経済的、文化的支援を受け続けているからです。

少なくとも戦前は1910年の日韓併合以来、戦後は1965年の日韓国交正常化以来、日本は韓国に巨額の支援を与えて来ました。

だからこそ、「自力でG20に参加した」アルゼンチンやトルコと、「日本の支援によってG20に参加できるまでに発展した」韓国は、そもそも質が異なるのです。

日本は韓国を「特別視」するのをやめるべし

ただし、『日韓は隣り合っているが、「他人」であって「兄弟」ではない』でも主張しましたが、私自身は日本が韓国を「特別視」することをやめるべきだと考えています。


とくに、日本国内では山崎達雄・元財務省国際局長のように、「日韓スワップには日本にもメリットがある」などと言い放つ、とんでもない売国勢力がいることも事実です。

当然、日本国内に「韓国に徹底的に配慮したい」と思う勢力がいれば、その反動として、

「韓国のことは大嫌いだ!」、「あんな国滅亡してしまえ!」などとする極論を唱える連中が出てくるのも、ある意味では当然のことなのです。

実際、『「震度ゼロ」での崩落が相次ぐ韓国社会の病理と嫌韓ブログ』や『嫌韓ブログの傾向と対策:一概に悪いと言えないが節度は大事』でも指摘しましたが、

韓国が嫌いなあまり、節度を超えて、「韓国が徹底的に不幸になれば良い」などと主張するブログもあります。


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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-10-29 16:56:58
日本が小渕総理の時のアジア通貨危機でも、総理がメガバンクに韓国向け融資の返済を急に迫らないように要請したりしたんだよね。 それで一息つけたので、IMFの指導と支援によって、何とかデフォルトにならずに済んだんだろうなあ。 
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