人口減少が始まった中国、2050年には「独居老人1億人」の社会を迎えているかもしれない
1/22(日) 8:03配信
ついに中国の人口が減少に転じた。 世界中の国々がこの「巨像」の動向を注視している。
13億という巨大な人口を抱えるこの国で、今後、どのように人口が減っていくのか。そして、それは中国社会にいったいどのような影響を与えるのか。
2018年の段階で中国の人口問題に光を当てていた『未来の中国年表』より一部を抜粋、編集し、この深刻な問題の本質に迫る。
以下で焦点を当てるのは、「高齢化」だ。
同書の著者であり、中国ウォッチャーとして知られ、著書やテレビ出演も多い近藤大介氏は、中国の人口問題をどう見るか。 ----------
「中国の人口減少の「本当のマズさ」…「超深刻な高齢社会の問題」が「日本の10倍規模」で襲いかかる」 ----------
想像を絶する世界
実際、中国では、すでに高齢化問題が深刻化になり始めている。
中国人民大学中国調査データセンターは、2014年5月から11月にかけて、全国28地域で、60歳以上の高齢者1万1511人を対象に、詳細な生活調査を実施。
その結果を、『2014年中国老年社会追求調査』レポートにまとめている。
調査の一つとして、日常の10項目の行為を、「他人の手を借りずにできる」「一部の助けが必要」「一人ではまったくできない」に3分類した。
10項目とは、電話する、櫛で髪をとかす(女性は化粧する)、階段を上下移動する、街中を歩く、公共交通機関に乗る、買い物する、自分の財産を管理する、体重を量る、料理を作る、家事を行うである。
その結果、10項目とも「他人の手を借りずにできる」と答えた高齢者は、全体の59.22%しかいなかった。
この調査は、男女別、都市農村別の結果も出しているが、農村地域に住む女性高齢者の場合、39.18%しか、10項目すべてに合格しなかったのである。
これは、全体の4割の高齢者が、何らかの介護を必要としていることを示している。
農村地域の女性高齢者に関しては6割だ。
前述の『世界人口予測2015年版』によれば、中国の60歳以上の人口は2億915万人なので、大ざっぱに計算して「要介護人口」は、8533万人となる。
また、2050年の60歳以上の予測人口は4億9802万人なので、これに当てはめると、「要介護人口」は2億75万人となり、実に2億人を超える計算となる。
日本の厚生労働省の統計データによれば、2017年11月現在で、日本の要介護認定者数は、65歳以上の18.0%にあたる641万9000人である。
2億人と言えば、その31倍(! )にあたる。
世界最速で高齢社会を迎えている日本人から見ても、中国の高齢化は、想像を絶する世界なのだ。
2049年の中国社会を予測
それにしても、5億人の老人社会とは、いったいどんな社会だろうか?
まず都市部でさえ、街の風景を見渡すと、老人がどこにでも目に付くだろう。
地下鉄やバスの乗客も、タクシーの運転手も、横断歩道を渡る人も、あちらも老人、こちらも老人だ。
乗り物では、シルバーシートという概念すらなくなっているかもしれない。
それから、いまの中国では若者たちが中心になっているような施設も、客の中心は老人になっているに違いない。
映画館に足を運ぶのも老人なら、スポーツジムで汗を流すのも老人だ。
中華料理自体も、老人が噛みやすいようにと、柔らかい料理が中心になっているのではないだろうか。
2049年の時点で、60代の「若い老人たち」は、一人っ子世代なので、贅沢志向が強い。
おそらく未来の中国の青年たちは、いまの日本の「ゆとり世代」や「悟り世代」のように「草食系」になっているだろう。
爆買いの主役も、やはり……
そのため中国では、「爆買い」の主役も、老人が占めることになるに違いない。
かつて「空巣青年」と呼ばれた自室でスマホばかりいじっていた青年たちは、「空巣老人」となる。
この人たちは、生活にあまり変化はないのではないか。
一方、中国の農村部は、一段と過疎化が進むはずだ。
四川省は人間の数よりもパンダの数の方が多くなっているかもしれない。
だが恐ろしいのは、熊や虎などが人家を襲うケースが増えていくだろうということだ。
アメリカを追い越して、世界最強国家として君臨しているのか、それとも……。
「2049年の中国」を、ぜひとも見届けたいものだ。
近藤 大介(『週刊現代』特別編集委員)
ついに中国の人口が減少に転じた。
世界中の国々がこの「巨像」の動向を注視している。
「男子あまり」に苦しむ中国…
13億という巨大な人口を抱えるこの国で、今後、どのように人口が減っていくのか。
そして、それは中国社会にいったいどのような影響を与えるのか。
2018年の段階で中国の人口問題に光を当てていた『未来の中国年表』より一部を抜粋、編集し、この深刻な問題の本質に迫る。
以下で焦点を当てるのは、「高齢化」だ。
同書の著者であり、中国ウォッチャーとして知られ、著書やテレビ出演も多い近藤大介氏は、中国の人口問題をどう見るか。
---------- 【前編】「中国の人口減少の「本当のマズさ」…「超深刻な高齢社会の問題」が「日本の10倍規模」で襲いかかる」 ----------
想像を絶する世界
実際、中国では、すでに高齢化問題が深刻化になり始めている。
中国人民大学中国調査データセンターは、2014年5月から11月にかけて、全国28地域で、60歳以上の高齢者1万1511人を対象に、詳細な生活調査を実施。その結果を、『2014年中国老年社会追求調査』レポートにまとめている。
調査の一つとして、日常の10項目の行為を、「他人の手を借りずにできる」「一部の助けが必要」「一人ではまったくできない」に3分類した。
10項目とは、電話する、櫛で髪をとかす(女性は化粧する)、階段を上下移動する、街中を歩く、公共交通機関に乗る、買い物する、自分の財産を管理する、体重を量る、料理を作る、家事を行うである。 その結果、10項目とも「他人の手を借りずにできる」と答えた高齢者は、全体の59.22%しかいなかった。
この調査は、男女別、都市農村別の結果も出しているが、農村地域に住む女性高齢者の場合、39.18%しか、10項目すべてに合格しなかったのである。
これは、全体の4割の高齢者が、何らかの介護を必要としていることを示している。
農村地域の女性高齢者に関しては6割だ。
前述の『世界人口予測2015年版』によれば、中国の60歳以上の人口は2億915万人なので、大ざっぱに計算して「要介護人口」は、8533万人となる。
また、2050年の60歳以上の予測人口は4億9802万人なので、これに当てはめると、「要介護人口」は2億75万人となり、実に2億人を超える計算となる。
日本の厚生労働省の統計データによれば、2017年11月現在で、日本の要介護認定者数は、65歳以上の18.0%にあたる641万9000人である。
2億人と言えば、その31倍(! )にあたる。
世界最速で高齢社会を迎えている日本人から見ても、中国の高齢化は、想像を絶する世界なのだ。
独居老人1億人の可能性も
それにもかかわらず、中国では介護保険法が、いまだ施行されていない。
中国では、独居老人の問題も、年々深刻になってきている。
同じく『2014年中国老年社会追求調査』によれば、60歳以上の一人暮らしは、全体の9.8%だった。
うち男性7.44%、女性12.08%で、都市部が9.15%、農村部が10.53%である。
また、独居老人の年齢は、60歳から5歳刻みで見ていくと、80歳から84歳が19.85%でピークだった。
すなわち、平均寿命が長い女性の方が一人暮らしが多く、生産年齢人口(15歳~64歳)が都市部へ出稼ぎに出てしまう農村部の方が、一人暮らしが多いということだ。
中国民政部発行の『2014年社会サービス発展統計公報』によれば、2014年末時点での60歳以上の人口は、2億1242万人である。
そのうち9.8%が一人暮らしということは、単純計算で2081万人。2014年の時点で、日本の総人口の6分の1にあたる2000万人もの一人暮らし高齢者がいることになる。
これが2050年になると、60歳以上の一人暮らしは、4821万人となる。
だが、これは単純に、2014年の一人暮らしの割合を当てはめたにすぎない。
「一人っ子世代」の親の世代が高齢化を迎える2050年には、2014年に較べて、はるかに多くの独居老人が発生していることが見込まれる。その数は1億人を超えていることも、十分考えられるのである。 彼らの相手をしているのは「AI家政婦」だけだろう。
「高齢化ビジネス」輸出のチャンス
2050年頃に、60歳以上の人口が5億人に達する中国は、大きな困難を強いられることは間違いない。
製造業やサービス業の人手不足、税収不足、投資不足……。
それらはまさに、現在の日本が直面している問題だ。
経済統計学が専門の陳暁毅広西財経学院副教授は、『人口年齢構造の変動が市民の消費に与える影響の研究』(中国社会科学出版社刊、2017年)で、今後、中国が持続的な経済発展をしていくには、「老年市場」を開拓していくしかないと結論づけている。
それは、以下のようなものだ。
・老年日用品市場……食品、ファッション、家庭日用品、保健品、補助医療設備など
・老年サービス市場……家事サービス、衛生保健サービス、医療サービスなど
・老年不動産市場……老年マンション、老人ホームなど
・老年娯楽市場……老年用玩具、文化用品、旅行など
・老年金融保険市場……投資サービス、医療保険サービスなど
・老年就業市場……老人の再就業の奨励 ・老年教育市場……老年大学、老年趣味教室、老年の職業訓練など ・老年特殊市場……結婚相談所、同伴サービスなど 要は、いまの日本で行われていることと、よく似たことだ。
その意味では、日本国内で高齢化ビジネスの蓄積を持つ日本企業は、今後新たに中国市場に進出していくチャンスが多いとも言える。
2049年の中国社会を予測
近藤 大介(『週刊現代』特別編集委員)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます