日本と世界

世界の中の日本

韓国が進める「空前の金利引き上げ」によって、いま韓国経済に起きていること

2022-11-02 16:59:44 | 日記
韓国が進める「空前の金利引き上げ」によって、いま韓国経済に起きていること

10/27(木) 7:32配信

10年ぶりの高金利

 10月12日、韓国銀行は今年7月に引き続き、基準金利を通常の0.25%の2倍である0.5%引き上げるビックステップを行うことを決定した。

これによって、韓国銀行の基準金利は、2021年8月に史上最低であった0.5%から引き上げられて以降、1年あまりで2.5%も引き上げられた3.00%となった。

韓国銀行の基準金利が3%以上となったのは、2011年3月から2012年7月の時期以来である。

基準金利は2008年12月以前には3%以上が続いており5.25%であった時代もあったが、ここ10年あまりは3%を下回り推移した。

そして、一時期は0.5%にまで引き下げられたが、今回、ついに3%の大台に乗った。

  今回、2度目となるビックステップに踏み切った理由として、韓国銀行は以下の2点を挙げている。 

 第一は高い物価上昇率である。

消費者物価指数の上昇率は前年同月比で、昨年10月から3%を超えており、2022年7月には6.3%にまで高まり、9月も5.6%にも達している。

韓国の物価上昇率の目標値が2.5%であることを勘案すれば、現在の物価上昇率がいかに高いかがわかる。
  第二は外国為替部門のリスク、具体的にはウォン安の進行である。

アメリカが政策金利の引き上げを続ける観測があるなか、韓国が金利を引き上げないとウォン安の原因となってしまう。 

 韓国銀行が2度目のビックステップを行う前日のウォン・ドルレートは、1ドル1410ウォンである。

1997年の通貨危機時や2008年のリーマンショック後の一時的な超ウォン安を除けば、1ドル1400ウォン台にまでウォンが下落したことはなかったため、この水準は極めてウォン安が進んだ状態であるといえる。

  ここで韓国が金利引き上げを止めれば、投資家がさらなるウォン安を警戒して韓国から投資を引き上げ、ウォン安が進むことになる。

よってこのリスクを避けるため、韓国銀行は大胆な利上げを継続せざるを得ない。
 
さまざまな金利が上昇

 基準金利を引き上げたことで、韓国の各種金利が高まっている。

まず短期金利であるが、1日物のコール金利は、韓国銀行基準金利が引き上げられ始めた2021年8月の前月(以下、「金利引き上げ前」とする)は0.53%であった。

  しかし、2022年9月には2.53%にまで上昇し、ビックステップの翌日の2022年10月13日(以下、「今回の金利引き上げ後」とする)には3.13%となった。

金利引き上げ前後では2.60%の上昇となっており、日銀基準金利の金利引き上げ前後の差が2.50%であることを勘案すれば、おおむね同じ幅の上昇である。 

 では同じく短期金利である3か月物KORIBOR(Korea InterBank Offered Rate:韓国銀行間取引金利))はどうだろうか。

金利引き上げ前は0.77%であったが、2022年9月には2.97%となり、今回の金利引き上げ後は3.43%となった。

金利引き上げ前後で金利は2.66%上昇した。つまり、短期金利は1日物も3カ月物も、ともに2.6%台の上昇幅であり、韓国銀行基準金利とおおむね同程度となっている。 

 次に長期金利であるが10年物国債の利回りをみてみよう。

金利引き上げ前は1.98%であったが、2022年9月には3.90%となり、今回の金利引き上げ後は4.24%となった。

つまり金利引き上げ前後では2.23%の上昇となっており、韓国銀行基準金利の上昇幅より若干小さくなっている。 

 10年物国債の利回りは、現在は長期金利の基準金利としての役割を果たしているが、つい最近までは、国債の流通量が少なく流動性が低かったことから3年物会社債(格付けはAA-)の利回りが指標金利として利用されてきた。

  そこで、3年物会社債金利の利回りもみてみよう。3年物会社債金利は、金利引き上げ前は1.89%であったが、2022年9月には4.90%となり、今回の金利引き上げ後は5.31%となった。

つまり金利引き上げ前後で金利は3.42%上昇しており、韓国銀行基準金利の上昇幅より1%程度高い上昇幅となっている。

住宅ローンの金利も上昇…

 ここまでは市場金利をみてきたが、銀行の貸出金利も上昇している。

預金銀行の貸出金利(新規貸出基準)については、まだ今回のビックステップ以降の金利水準は公表されておらず、2022年8月が最新の数値である。

  そこで、企業向け貸出については、大企業向け貸出金利、中小企業向け貸出金利、個人向け貸出は、住宅担保貸出金利について、金利引き上げ前である2021年7月から最新の数値である2022年8月にかけて、それぞれどの程度上昇したかみる。

  まず大企業向け貸出金利は1.78%、中小企業向け貸出金利は1.80%、住宅担保貸出金利は1.54%の上昇幅であった。

これはあくまでも10月に韓国銀行が0.5%基準金利を引き上げた以前の上昇幅である。

貸出金利は市場金利に連動するので、2022年10月以降の貸出金利も当然、この上昇幅より大きくなっていることが予想される。

いずれにしても、銀行の貸出金利もかなり上昇しているといって差し支えないだろう。

  マクロ経済の観点でみれば、金利上昇は設備投資を冷やし、ひいては景気も冷やす影響がある。

しかしながら2022年8月の統計庁「産業動向」によれば、韓国の設備投資は堅調に推移しており、景気が悪くなった兆候もみられない。

  2022年8月の状況なので今回、韓国銀行が0.5%政策金利を引き上げる以前の状態ではあるが、2022年8月までも韓国銀行はすでにかなり政策金利を引き上げており、各種金利の上昇も織り込み済みの状態である。

すなわち韓国は政策金利を引き上げているにもかかわらず、景気は冷え込んでいない。 

 韓国では政策金利が急速に引き上げられ、各種金利も軌を一にして上昇しているが、景気にはさしたる影響は出ていない。

政策金利を引き上げると、かならず景気が冷え込むということでもないことを韓国の事例は示しているようである。

高安 雄一(大東文化大学教授)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿