差出人: 勝又壽良 mag2 0001684526
送信日時: 2022年2月24日 5:00
件名: 危うい韓国、上場製造業4割がゾンビ化 それでも夢追う「お調子者」
基軸通貨とSDRを混同
膨らむ取らぬ狸の皮算用
韓国をダメにした張本人
空洞化した製造業の明日
韓国は、不思議な国家である。
昨年は、G7首脳会議に招待されたことで、すっかり「G7並」という気分が深まった。
また、UNCTAD(国連貿易開発委員会)で、「先進国クラス」へ分類されたので、文大統領は「国連が韓国を先進国として認めた」と宣伝したほど。
この話には裏があるのだ。
トランプ米大統領(当時)が、WTO(世界貿易機関)で韓国は発展途上国として申告していることを批判した。
韓国は、やむなく発展途上国を取り下げたもの。
こういう経緯で、UNCTADが自動的に韓国を先進国クラスへ編入したに過ぎないのだ。
文氏は、「宣伝マン」よろしく、国連が韓国を先進国と認めたとすり替えたのである。
韓国は、先進国という呼称に拘っている。
ここで、義経の「八艘飛び」に似せて、韓国ウォンを「基軸通貨」にすると言い出す御仁が現れた。
韓国大統領選の与党候補・李在明(イ・ジェミョン)氏が共同討論会で発言したのだ。
これを聞いた韓国メディアは、李氏の見当違いを冷笑している。
米国ドルが、世界の基軸通貨である。他国通貨を寄せ付けない絶対的な強みを持つからだ。
この米国ドルに対して、韓国ウォンなど吹けば飛ぶような存在である。
ウォン相場暴落で現実に、米国からドルの緊急融資を受ける身である。
李氏には、こういう国際通貨の仕組みが分かっていないようだ。
「経済大統領」を目指す李氏だが、その手腕のほどは怪しいのである。
基軸通貨とSDRを混同
李氏の発言は、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)通貨を指していると見られている。
現在、米ドル・EUユーロ・英ポンド・日本円・中国人民元など5通貨が指定されている。韓国ウォンもその一角に組み込まれたいというのだ。
IMFに加盟すれば、出資比率に応じて加盟国に割り当てる仮想通貨がSDRである。
通貨危機などで外貨不足に陥った加盟国は、SDRと引き換えに他の加盟国から米ドルなどの外貨を受け取ることができるシステムだ。
金や米ドルを補完する手段として、1969年に設けられたものである。
IMFは2021年8月、新たに6500億ドル相当(約4560億SDR)のSDR配分を決定した。
SDRになる通貨として、IMFは次の二つの基準を設けている。
1)輸出基準=輸出額が世界で5本の指に入る時。
2)自由利用可能基準=国際取引の支払いで広く使われており、主要な為替市場で広く売買される必要がある。
韓国ウォンが、前記の2要件に合うかどうかである。
1)韓国は、過去5年間(2016〜2020年)の平均輸出額が5438億ドルでる。ユーロ、中国、米国、日本に次いで5位に入っている。この点ではパスだ。
2)韓国ウォンが現実に、国際取引の支払いで広く使われているかといえば、「ノー」である。
国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、2022年1月の国際決済通貨の決済割合は米ドルが39.92%、ユーロが36.56%、英ポンドが6.30%、中国人民元が3.20%、日本円が2.79%である。ウォンは、上位20位にも入っていないのだ。
以上の結果によれば、韓国ウォンがSDRに採用される可能性はゼロである。
それにも関わらず、このウォンSDR化を最初に提唱した韓国の全国経済人連合会(全経連)は、不可能を知りつつ何を根拠にして取り上げたのか。
それは、韓国における輸出入取引で、ウォン決済が1992年の0.1%から2020年には4.9%へ増加した点だけである。
韓国政府が今後、ウォンの国際化を積極的に推進しているという「努力」を根拠としたのだ。
だが、IMFはSDR資格の第一項で「輸出額が世界で5本の指に入る時」としている。
すでにSDRは、米国ドルなど5通貨が採用されている。
この上、「6ヶ国目」がSDRに採用される可能性は低い。
英国は、2022年中にTPP(環太平洋経済連携協定)の正式メンバーになる見通しである。そうなれば、英ポンドの利用率が高まる。韓国ウォンの出番は来ないと見るべきだろう。
膨らむ取らぬ狸の皮算用
SDRに採用される通貨には、特別のメリットがあるのか。
韓国は、「シニョリッジ効果」を期待している。つまり、貨幣発行によって得る利益である。貨幣の額面価値と製造コストの差額のことだ。
SDRになった場合、海外でのウォン流通のために追加発行することで、シニョリッジ効果87兆8000億ウォン(約8兆4500億円)が見込めるという。
これだけでない。さらに「取らぬ狸の皮算用」が続く。
1)為替レートの不安定性の38.5%減少で輸出増15兆6000億ウォン(約1兆5000億円)
2)国公債金利の0.63%下落で軽減される利子負担9兆4000億ウォン(約9050億円)
前記2項目は、ウォンがSDRに採用されるほどの国際的な信頼を勝ち取れれば、ウォン相場が安定することや、国公債の発行金利が下がることで、金利負担が軽減されるという見通しである。
問題は韓国経済が今後、SDR通貨に相応しい「健全性」を維持できるようになるだろうかだ。
実は、韓国経済が多くの問題点を抱えていることに警鐘を打ちならしたい。
韓国は、2021年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数)が、0.81(暫定値)と2月23日に発表された。
前年の0.84からさらに下がり、1を下回るのは4年連続。
OECD(経済協力開発機構)加盟37カ国で1を下回るのは韓国だけだ。
日本の1.34(2020年)と比べても異例の低い水準である。晩婚化の影響などもあり、母親の平均出産年齢が上がって、35歳未満の出生率が下がっているのが特徴である。
韓国をダメにした張本人
合計特殊出生率の低下は、やがて生産年齢人口の減少へと結びつく。
韓国の潜在成長率のさらなる低下の予告である。
確実に来る労働力枯渇経済で、韓国は生き残れるのか。
SDRによって、「シニョリッジ効果」を手に入れようという考え方は吹き飛ぶ筈である。
韓国は、その前にやることが山ほどあるのだ。
具体的には、労働規制の撤廃である。
文政権は、生産性を大幅に上回る最低賃金の大幅引上げを行い、雇用構造を破綻させた。
この矛楯が、製造業へ集中的に現れている。
「理念先行・現実無視」の経済政策がもたらしたものだ。
最低賃金の引上げは、劣悪な労働環境で働かざるを得ない労働者に、生産性に見合った賃金を保障する制度である。
韓国では、大企業労組が最低賃金大幅引上げの主役になった。
文政権は、こうした矛楯に気付かないという、まさに「理念先行・現実無視」の術中にはまった形である。
韓国全経連が、2015〜19年の間について内外の製造業就業者数を国際比較したところ、次のような結果が出た、韓国は減少する一方で、米国、日本、ドイツは増加したのである。
韓国 18万人減(3.9%減)
米国 34万人増(3.3%増)
日本 25万人増(3.3%増)
ドイツ 49万人増(3.1%増)
原因は、文政権による最低賃金の大幅引上げである。
2018年以来の最賃大幅引上げが、失業者を増やす結果になった。過去の最賃引き上げ率の推移は次の通りである。
2014年 7.2%
15年 7.1%
16年 8.1%
17年 7.3%
18年 16.4%
19年 10.9%
20年 2.87%
21年 1.5%
出所:JETRO
17年までは一桁の上昇率であったが、18〜19年は合計27.3%もの引き上げである。
こうして、韓国は「人減らし」を行なうことになった。
最低賃金引上げを守らない経営者は、罰則を受ける制度になっている。
経営者は、労働者を解雇して身を守らざるを得なかったのだ。韓国製造業が、2015〜19年の間に他国に比べて就業者を減らした理由である。
韓国の減少数は、2020年現在のサムスン電子(10万9490人)と現代自動車(7万2020人)の国内従業員数を合計したものとほぼ同じである。
文政権による誤った最低賃金大幅引上げが、サムスンと現代自の従業員数に匹敵する人数を減らしたわけだ。
この一事を以てしても「理念先行・現実無視」の政策が、いかに恐ろしい結果を生むかが分るであろう。
空洞化した製造業の明日
韓国企画財政部によると、韓国のGDP(2020年)における製造業比率は他国と比べて高くなっている。
韓国 27.8%
ドイツ 21.6%
日本 20.8%
米国 11.6%
英国 9.6%
韓国の製造業依存度が高いことは、産業構造が高度情報化されていない結果である。
それだけ国民一人当たり付加価値率が低いことを現している。
こうした中で、最低賃金の大幅引上げが行なわれ、頼みの綱である製造業雇用者数を減らしたのである。
韓国は、終身雇用制と年功序列賃金制になっている。
韓国労組が、賃金闘争で強く要求している結果だ。
この制度は、働く労働者を保護する役目を果たすように見えるが、労働力の流動化を阻止する反作用をもたらす。
労働者は、労働力の流動化が進んでいれば転職が可能である。
だが、他社でも終身雇用制と年功序列賃金制ゆえに、中途採用がしにくい状況をつくっている。
結局、最後は韓国特有の「自営業主」に落ち着かざるを得ないのだ。強すぎる韓国労組が、思わぬ弊害を生んでいる実例である。
米国で典型的に見られる「レイオフ制度」(再雇用を条件として労働者を一時的に解雇)は、無慈悲に労働者を解雇すると言われている。
だが、政府の失業対策制度が完備しており、失業者が生活苦に陥らない限り、弾力的な雇用政策は企業の業績回復を早め、再雇用の機会を生むのだ。
米国経済が、不死身のように復活できる背景に、こうした雇用制度が存在している。
米国との対比で言えば、韓国はその対極にある。
労組が、強すぎて経営権にまで介入している結果、経営の自由度が制約される、事態が起こっている。経営が自由度を失えば、業績はどうなるか。赤字経営になって当然である。
韓国の国策シンクタンク産業研究院は2月17日、営業利益で利払いもできない上場製造業の割合が、昨年7〜9月に39.1%に達したことを明らかにした。
これは、2008年のリーマンショック当時の30.4%を上回るものである。
前述の通り、製造業は対GDP比27.8%である。
その製造業で、空洞化が起こっているのだ。
現状は、ウォンのSDR化など言ってはしゃいでいる場合でない。鳥肌の立つほどのショックの筈である。
営業利益で利払いできない期間が3期(3年)続けば、ゾンビ企業と呼ばれる。
前記の産業研究院報告では、その点が不明であるものの楽観はできない。
実は、政府の信用保証基金から政策資金の支援を受け始めると、政府は途中で資金援助を打ち切れず、ズルズルと長期にわたる支援を余儀なくされている。
これが、ゾンビ企業を生む背景にある。一時的に支援する目的で始めた融資が、命綱に変わってしまうという矛楯である。
産業研究院は、今後金利が上昇すれば、これまで低金利とコロナによる特別金融支援に依存してきた破綻懸念企業の相当数が、大きな試練を経験しかねないと警戒する。
構造調整を通じ、破綻が一気に爆発する事態を防ぐべきだと指摘するのだ。当然の指摘である。
大統領選に立候補している、最大野党「国民の力」候補者である尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏は、政府の諸規制を外して企業の自由に委ねる姿勢を強調している。
このありふれた政策が、韓国では実現できずにきた。文政権が蒔いた規制強化の種は、韓国経済をどれだけ毒しているか分らないのである。
【短信】
韓国経済の心臓部が、確実に動脈硬化に侵されています。
規制の壁に取り囲まれて、新陳代謝が進まずにいます。
自浄作用に乏しく「理念先行・現実無視」が根付いているからです。
韓国政治の進歩派と労組が固く結び合っており、この両者が韓国経済を泥沼に引き込んでいます。そういう認識のないことが、実に恐ろしい点です。