2019年09月05日17:00
世界のニュース トトメス5世
世界・経済・歴史ほか
韓国経済の3重苦 人口減、コスト高、ウォン安
人口増加率1%なら何もしなくても毎年GDPが2%増えるのだが、人口が減り始めたら逆になる。
韓国の高すぎるGDP
ウォン高でもウォン安でも困る
2019年09月05日17:00
世界・経済・歴史ほか
つい数日前、3泊4日で韓国・ソウルに取材に行ってきた。
メイン取材は、とある人物へのインタビュー取材だったが、今の韓国を少しだけでも自分の目で見て感じようと、時間が許す限りソウルの街中を歩いてみた。
日本と韓国の関係はかなり悪い。到着の前日には、ソウル市内で旅行中の日本人女性が、韓国人の男性から暴行を受ける事件があった。
ジャーナリストの青木理氏が韓国について発言をするとすぐ「反日だ」と言われるように、誰かが何かを口にするだけで、「反日」「左派」「ネトウヨ」「右翼」などとSNSでレッテルを貼られる。
実際のところ、韓国国内の雰囲気はどうなのだろう?現地で暮らす普通の韓国人は、どう考えているのだろう?
スマホを閉じて、“オフラインで”会話をして、考えや思いを聞いてみたかった。そこで改めて気づかされたのは、リツイートのような気軽さでは出来ない、政治的な会話につきまとう、あの「緊張感」だった——。
まず、ソウル中心部・光化門にある韓国国内最大規模の書店、教保文庫を訪れてみた。ありとあらゆるジャンルの書籍が置いてあり、一日居ても飽きないほど充実している。
メインの入り口を入ると、目の前にあったのは、それぞれのジャンルごとに人気の書籍を並べた棚。
その「政治・社会コーナー」で、第1位となっていたのが『反日種族主義』という過激なタイトルの書籍だった。
『反日種族主義』は、李栄薫(イ・ヨンフン)ソウル大学名誉教授ら、6人の学者による共著で、簡単に言ってしまえば「韓国国内における反日に対する批判の本」だという。つまり日本の批判ばかりをする韓国社会を自ら批評しているのだ。
第2位として並んでいたのは、『日本会議の正体』(著:青木理氏)の韓国版だった。
『反日種族主義』について、当然のことながら内容については賛否両論あるだろう。ただ、この書店のサイトを見てみると、2019年8月20日~27日の週間ランキングでは、総合のカテゴリーで第2位となっている。このことからも、韓国国内で人気を博していることが、うかがい知れる。すでに実売部数が10万部を突破したという報道もある。知り合いの韓国人記者に聞いたところ、今後は、日本語の翻訳版を出す動きがあるという。
書店で様子を見ていると、『反日種族主義』の表紙をスマホで撮影している女性がいたので、話を聞いてみた。20代後半だという。私は緊張して、声が少し震えていた。
「この本の存在についてはネットで知りました。こうした本が1位として並んでいるのはおかしいと思って、写真を撮ってました」と話す。読んだことはないが、ネットの情報から、この本に対して批判的な見方をしているという。
「本を読んでみたいと思うか?」と質問してみたところ、「自分たちの周りでは、日本に関連する物は買わないという風潮があるから買わないです。でも、不買運動がなかったとしても(この本は)買わないかな。自分の中では買ってまで読むほど優先順位の高いトピックではないです」と答えた。ちなみに、この女性は書店で撮った画像はこの後、SNSに投稿すると言っていた。
続いて、実際にこの書籍を購入した男性にも話を聞いてみた。ソウル市内で旅行業を営む60代前半の男性だという。
「もともと著者についてはネットで発言を見ていたので知っていました。彼の言うことはどれも、これまで自分が信じてきた、教えられてきた内容とは正反対の内容です。ものすごく衝撃を受けました。だから、この本も読んでみたいと思って買いに来ました」と話す。
手に取り中身をパラパラと見て棚に戻す人もいれば、表紙の画像だけを撮って立ち去る人、実際に購入する人など様々だった。私が見ている限りでは、手に取って内容に目を通す人たちは、ほとんどが50代以上の年齢層で、あまり若い人はみかけなかった。
第二次世界大戦後、反日教育を受けたと言われている世代や、その子どもにあたる世代にこそ、衝撃的な内容として響いているところがあるのかもしれないと思った。
書店内には、「日本書籍コーナー」として、日本のあらゆる書籍が取りそろえてあった。ファッション雑誌など目で見て楽しめるものについては、翻訳されることなく、そのまま日本語のものが置かれていた。「小説コーナー」では、ランキング上位15冊のうち5冊がミステリー作家、東野圭吾氏の著書だった。
続いて、慰安婦問題を象徴する少女像を訪れた。日本のテレビクルーが取材に来ていたが、デモなどは行われていなく、静かだった。
少女像の隣には小さいテントがあった。「反安倍反日青年学生共同行動」のメンバーたちが寝泊りして像を守っているのだという。そのメンバーのひとり、大学で歴史を学んでいるというキム・ジソンさん(22)。
2015年の日韓合意について、慰安婦女性たちへの謝罪と賠償が不十分であるとの問題意識を持ち、2016年からこの活動に参加するようになったという。だが、日韓合意は慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的な解決」をうたっていたのでは?率直に日韓問題についてどう考えているか話を聞かせてもらった。
「安倍首相は、日韓問題について未来志向で行こうと話しているけれど、そのためにはやっぱり植民地時代の誤ちについての謝罪をして、反省をして、というのを前提にしないと日韓についての未来志向というのは難しいんじゃないかと思っています。こういうことを通じて、人間が暮らしやすい社会になればいいなと思って活動しています」
同世代の友人と、政治に関する話をするかについても聞いてみた。
「友達とは様々な話題についての話はするけど、その中でも自分は政治に関する話をすることが多い方だと思います。私は、歴史や政治、そして社会に関心を持ってこそ、良い社会になると考えています。周りの大人たちの中には、政治に過度な関心を持たずに中道を守れ、という人たちも少なくないです。でも、それだと結局これまでの状況のままで何も変らないと思っています。既得権者だけが得をするような社会ではなく、韓国の国民みんながが安心して暮らせる社会を作るためにも、若い人たちが政治に積極的に関心を持たないとだめだと思っています」
ところで、ソウルに住む人いわく、韓国ではここ数年、日本の居酒屋をイメージした店が急増中だという。実際に店舗にも足を運んでみた。
韓国なのに、日本語で書かれた看板が並び、一見すれば日本国内にいるような錯覚を覚える。店内に入り、メニューを見てみると、刺身、お好み焼きなどがある。だが、全てが日本食というわけではない。
ソウル在住の記者によると、もともと韓国では、「ハラミのお店」「ホルモンのお店」など、飲食店は何かに特化した専門店として営業するのが一般的だという。だからこそ、色々な食べ物を食べることができる、日本の居酒屋タイプのお店が人気となったらしい。
この店を訪れていた3人組の客に話を聞いてみた。大学で貿易について教えている講師と、その教え子である19歳の大学生2人だった。学生のうちのひとりが、ネットで美味しい飲食店を調べていたところ、この店舗の存在を知り来店したという。
突然声をかけたにもかかわらず、一様に好意的に応対をしてくれたので、政治について興味があるかという質問を投げかけてみた。すると、一人の学生は「興味がない」との回答。その理由として、大学内で所属している組織の都合上、中道(政治に深入りせず、どちらにも偏らない)というスタンスを取っていると説明してくれた。
一方でもうひとりの学生は「興味がある」と答えた上で、今の日韓関係について次のように語ってくれた。
「自分の周りでも日本製品の不買運動という風潮はあります。でも、日本からは本当にたくさんの物が入ってきているから、本当に不買運動をしようと思ったら、携帯の中にも日本の部品があるし、何も手に入らなくなってしまいます。もう少し考えて行動しても良いと思います。韓国が、自分たちで自立してやっていくことは必要かもしれないけれど、それよりももっと国際間の交流を増やしていく方が良いんじゃないでしょうか」
同席してた大学の講師にも話を聞いてみたところ…。
「私は彼らよりも世代が上で、学生たちと考えが違うので、この場では意見を主張することは差し控えておきます。でも、これからの韓国の将来を担う20代の人たちの意見の方が大事だと思うので、私たちの世代があえて話す必要はないと思っています」
韓国滞在中、今の日韓関係を象徴するような出来事に遭遇した。
取材3日目の昼前、ホテルのロビーで、取材に同行してくれている韓国人ジャーナリストと日本語で打合せをしている時だった。
たまたまその日に発行された韓国の新聞に、例のベストセラー『反日種族主義』の著者がYouTubeに投稿した動画が取り上げられていたので、そのことについて話をしていた。
すると、隣に座っていた40代前半のビジネスマンとおぼしき男性が、突然日本語で話しかけてきたのだ。
「そういう話は、こういう公の場で話さない方が良いですよ。韓国には日本語がわかる人もたくさんいるので。あなたたちのことを心配して言っています」
あまりに突然のことで、私はとても驚いた。話しかけてきた男性は韓国人で、現在は日本で家族と生活をしており、一時帰国中だという。
私たちが話していた内容は、日本を批判する内容でも、韓国を批判する内容でもなかった。『反日種族主義』という本についても、否定も肯定もせず、著者についての説明を聞いていたに過ぎなかった。
よくよくこの男性の話しを聞いてみると、男性はこの書籍について批判的な考えを持っていたことから、たまらなくなり口を挟んできたということだった。
もちろん、この男性が、たまたま見ず知らずの人に干渉をしてくるタイプの人間だったのかもしれない。それでも、政治に関する話をしているだけなのに、見ず知らずの人に対して「そういう話はしない方がよい」と意見をする人がいる、という事実に、私はただただ驚いた。
ホテルを出た後も、相当な時間、このシーンが私の頭、そして心の中で反芻を続けることとなった。
見ず知らずの人に意見することは、ネット上ではよくあることだ。Twitterでは毎日のように行われている。しかし、リアルな社会では、このような経験がほとんどないだけに強い衝撃を受けた。
お互いの意見がどうであれ、相手が何者かもわからない中で話かけてきた男性の胸中には、見ず知らずの人に意見するだけの強い思いや考えがあり、それなりの覚悟があったと思う。
それに対し私も、誠心誠意、男性の話に耳を傾けた。その時間、お互いに少なからず、それなりの緊張感があったと思う。
このシーンを後から反芻する中で、私はとある言葉を思い出した。開発者としてTwitterのリツイートボタンを作ったクリス・ウェザレル氏の言葉だ。
要約すると、リツイート機能が実装される前までは、ユーザーは自分がシェアする内容について少なくともひと呼吸おいて考える間があったが、リツイートボタンができると、「衝動が先立つようになった」という内容だ。
見ず知らずの人の考えや主張に意見するということは、SNSで衝動的に、反射的に言葉を送るよりも、緊張感のいることなんだと改めて感じさせられた。こうしたシーンは、実際に現地に行ってみないと体験することができない、貴重な経験だったと思う。特に政治的な話をするとなればなおさらだ。
今回は、限られた時間の中で私が見て、聞いて感じたことを、紹介した。その中には、当然ながら、日本に対して批判的な意見を持つ人もいたが、一方でそれ以上に親日的な意見を持つ人も多くいることを、改めて認識させられた。
私がソウルに滞在している間に目撃することはなかったが、現地の韓国人ジャーナリストによると、韓国国内では反政府デモも度々行われており、多くの市民が参加しているという。
韓国の人々に話を聞いて感じたことは、多く人が、年齢問わず、政治について自分なりの考えをしっかり持っているということだ。質問すれば、しっかりと答えが返ってきたことが印象的だった。
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日本では、SNSなどのネット上では政治に関する意見が交わされていても、“オフライン”では身近な人たちと対話をするシーンはあまりないと、少なくとも私は感じている。
客観的な事実に基づき、きちんと自分の考えとして正々堂々と、もっと政治的な話をしても良いのではないかと思った。そうした政治的な会話に付きまとう「緊張感」も忘れずに。
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文在寅政権に焦り…? 韓国シンクタンクが「警告」した意外な中身 また深刻なデータが出てきた
日本でGSOMIAの韓国の離脱という衝撃的なニュースが駆け巡る中、韓国の文在寅政権の経済政策関係者はまた別の深刻なデータを目の当たりにし、不安にさいなまれていることをご存知だろうか。
「日韓対立がこれ以上深まると、さらに深刻なダメージを韓国経済にもたらすことになる」――。
韓国の有力シンクタンク・現代経済研究院がそう警告し始めたのだ。
彼らが公表した報告書によれば、今回の日韓対立における韓国経済と日本経済への影響を分析しところ、そのダメージはより韓国に大きく、また当初の予想よりもさらに深刻なものになるという。
なぜなら、韓国が日本から輸入する4227品目のうち、日本への輸入依存度が50%以上あるものは253品目。さらに90%以上あるものは、じつに48品目もある。
これらの多くは、半導体関連をはじめとした工業製品を製造するに欠かせない素材や部品であり、韓国の工業製品を作るのに「代替は効かない」ことを意味している。
日本との関係悪化が深まれば深まるほど、韓国の輸出主力製品に大きな影を落とすことになるわけだ。
さらに報告書は韓国経済の厳しい現実を強調している。
韓国の産業競争力は日本に遅れており、今回の日本政府の輸出管理規制強化により、韓国経済が厳しい状況に置かれる可能性は高い旨、指摘しているのである。
実はこの報告書、発表されたのは7月26日で、もうひと月以上たっている。
それでも日韓の応酬は激しくなる一方で出口の見えない対立が、韓国の文在寅政権から経済界までを不安の底にたたき落としているかたちである。
もちろん現在、日本が実行している輸出管理措置の範囲内であれば、これらの素材や部品の対韓輸出が直ちにストップするわけではない。
しかし、韓国経済の日本に対する部品依存度が高いことはもはや周知の事実であり、その依存度はこの数年で際立って高くなっている点に注目すべきだ。
その数値は如実だ。
00年に84万件だった輸入は、18年には178.4万件と2倍以上も増加している。
輸出も然り。00年に47.6万件だったのが、18年には92.6万件とこちらも2倍近くも増えており、その多くは日本からの機械部品や半導体関連材料なのである。
韓国の日本向け輸出入件数の推移
拡大画像表示(出所)韓国関税庁輸出入貿易統計ホームページより筆者作成
この現実をもちろん文在寅大統領も知っているだろう。
だからこそ日本からの輸出管理規制が強化されることが発表されてから、すぐに部品や素材を国産化する脱日本依存を掲げたのだ。
しかしそれが仮に将来できたとしても、現状の韓国経済に深刻なダメージを与えることになりかねない。
なぜなら韓国は貿易依存度が極めて高く、また輸出に占める半導体の割合も高いからだ。
韓国の対GDPの貿易依存度は17年で68.8%と日本の28.1%の2倍以上である。
とくに総輸出金額の半導体が占める割合は18年で20.9%と最も高い。2位の石油製品は7.7%しかないのでこれもまた2倍以上の開きがある。
また、ご存知の方も多いと思うが、韓国は大企業依存度が極めて高い国である。
売上高上位10社の売上高を合計すると、対GDP比で44.2%を占める。
これは日本(24.6%)や米国(11.8%)と比べてみれば一目瞭然だ。
このように大企業を中心とする韓国経済で輸出が激減すると、当然、韓国経済全体が失速することになるのである。
ましてや、この現実を放置したまま日韓対立を深刻化させては、文在寅政権がとっている経済政策と真逆の結果をもたらすことにもなりかねない。
文在寅政権は発足以来、家計の賃金と所得を増やすことで消費につなげる「所得主導成長論」に基づいて、労働政策と社会保障政策に力を入れてきた。
19年度の「保険・福祉(社会保障)・雇用関連予算額」は、162.2兆ウォン。
前年比12.2%の増加であり、「福祉(社会保障費)」に限れば、前年比14.6%も増加している。
日本の一般会計予算の社会保障費増加率は3.3%にすぎないから、いかに文在寅政権が再分配政策にまい進しているかがわかるだろう。
こうした政策はたしかに必要ではある。
韓国社会は大企業依存度が高く、それとは裏腹に若年層の失業率も高い。
極めて格差の大きい社会であり、これが出生率の低下を招いていると指摘されてきた。
これを是正することが喫緊の課題であることは理解できる。
しかし、である。
そもそも文政権の「所得主導成長論」に基づく政策は、韓国でも「絵に描いた餅」と酷評されているのが現実である。
まずは労働政策を見てみよう。17年に6470ウォンだった最低賃金は2020年までに8590ウォンに引き上げられる。
また「週52時間勤務制」を柱とする勤労基準法(日本の労働基準法)を改正して、残業時間を含めた1週間の労働時間の上限を68時間から52時間に制限した。
これにより韓国の労働者のワーク・ライフ・バランスを図り、余裕のある生活を提供しようとしたのだ。
しかし、その結果は意図したものとは真逆のものだった。
2018年11月、韓国統計局が発表した「2018年7~9月期家計動向調査(所得部門)」は、韓国国内の世帯間の所得格差が過去最高水準に広がったことを示していた。
所得最下位20%世帯の1か月平均名目所得は前年同期比で7%も減少。かたや所得最上位20%の世帯は前年同期比で8.8%も増加したのである。
所得最下位20%世帯の名目所得が減少したのは3期連続だが、所得最上位20%世帯は、11期連続で増加したのである。
この結果に付き従うように、合計特殊出生率も減少の一途。
18年は前年比を割り込むどころか、統計史上初めて1を割る、0.98%まで低下するとされている。
こうした無残な結果の要因は最低賃金の引き上げや労働時間の規制があまりにも急激すぎ、結局、体力の伴わない中小企業の経営を圧迫したからに他ならない。
しかも経済政策がうまくいかない中、昨年来、韓国を取り巻く環境は悪化の一途をたどってきた。
折からの米中貿易摩擦の長期化や、中国の景気減速等の影響で、すでに7月の韓国の輸出金額は前年同月比で11%も減少しているが、これは8ヵ月連続の減少だ。
輸出に頼る韓国経済の足元は大きく揺らいでいる中で、そこにまた日韓の対立が加わったのだから、その影響は深刻だ。
IMGグループ、IHSマーケット、モルガン・スタンレーなどは、
日本政府の韓国の輸出管理規制強化などを原因として、今年の韓国の経済成長率が2%を下回ると予想しているが、
日韓対立に伴う経済的なダメージが広がると、福祉政策の財源までもがおぼつかなくなってしまう。
韓国国内の格差をさらに広げかねず、これを韓国の国民はどこまで看過し続けることができるのだろうか。
かたや日本への経済的ダメージも対立が深まれば深まるほど大きくなるので注意してほしい。
とくに顕著なのは観光業だが、日本製品の不買運動の影響も見逃せない。
民間調査によれば、地域ごとにその勢いに差が出ているので紹介しておこう。
7月31日現在の日本製品の不買運動に参加している人は、64.4%に上っているが、これは7月10日に実施された一次調査よりも、約16%も高かった。
不買運動は対立が長引けば、さらに盛り上がりかねない状況だ。
地域別に見ても済州道で江原道で、80%に迫る高い数値となっており、ソウル市でも56.4%に上っている。
性別で見れば男性が65.7%、女性が63%であり、年齢階層別で見れば40代が76.3%と最も高い。
ちなみに与党である民主党支持者の参加率は80.9%だが、野党の自由韓国党の支持者でも39.5%の人が不買運動に参加している。
相対的に現政権の日本への強硬策は支持される傾向にあることは頭に入れておきたい。
さらに注意したいのは韓国に対する日本やアメリカの貿易関係のプレゼンスは、年々低下しており、中国の貿易依存度が高まっていることだ。
韓国は日本からの輸入が増加傾向にあると先述したが、中国の勢いはそれをはるかに凌駕していることも忘れてはならない。
2018年、韓国は約1621億ドルを中国に輸出し、その割合は26.8%を占める第1位。
輸入においても約1065億ドルあり、これも約2割を占める第1位である。
輸出入ともに2位はアメリカで、日本は輸入においては第3位だが、輸出においては第5位の国である。
韓国に対する日本のプレゼンスは他国に比べてさほど大きくないのである。
韓国の主な輸入国、輸出国の貿易額(2018年)
拡大画像表示(出所)韓国関税庁輸出入貿易統計ホームページより筆者作成
韓国の総輸入金額に占める日米中の割合の推移
拡大画像表示(出所)韓国関税庁輸出入貿易統計ホームページより筆者作成
こうした現状が文在寅政権の強気の背景にあるとみられる。
しかし言うまでもなく、良識ある方なら、日本人、韓国人問わず、ここで日韓が決別することが、経済的に何の意味もないことは承知していることだろう。
日韓は隣国だからこそ対立するが、隣国ゆえに切っても切り離せない関係だ。
現状の政府同士の日韓対立を補うのはやはり民間交流だろう。
韓国の貿易依存度が中国に傾斜する中でも、2018年に来日した韓国人観光客は754万人に及んでおり、過去、右肩上がりに増加してきている。
韓国では寿司やラーメンなどの日本の食べ物が流行し、日本のアニメに親しむ若者も多い。
日本でも韓流が人気だが、18年に訪韓した日本人観光客は18年に295万人とこちらも増加傾向にある。やはり経済的ダメージを最小限にとどまらせるのは、民間交流ということになるだろう。
日韓の経済人や一般消費者は、政治の枠組みから離れて、互いの交流をぜひ、楽しんでほしい。