はる風かわら版

たかぎはるみつ の ぼやき・意見・主張・勝手コメント・コラム、投稿、原稿などの綴り箱です。・・・

子どもの笑顔と歓声

2006-06-30 23:08:36 | コラム記事
~自然遊びと地域づくり~

 6月1日から申し込みを開始した、夏休みに実施する「子ども長期自然体験村」は、初日で定員に達する勢いでした。
 この夏も、道内外各地からやって来る30数名の小中学生と17歳から60代、イギリス、イタリア、台湾人を含む20数名のスタッフと総勢50名余りと「大家族」をテーマに20日間を過ごします。

地域住民や町の協力を得て、元小学校を借りた長期滞在型の体験活動は、もう8回目となります。
黒松内町は人口3400人、山間(やまあい)の小さな町で、大都市札幌からも千歳空港からも車で2時間半はかかります。にもかかわらず、なぜたくさんの人が3週間も滞在してくれるのでしょうか。
それは、北海道らしいものが半径10Km以内にコンパクトに詰まっている地域だからです。日本海と太平洋が直線距離でわずか20数Km、漁師町寿都も間近な、海あり、山あり、川あり、第一次産業も盛んな地だからこそ、いろいろな自然体験活動、エコツアーが企画実施できるのです。

このような地域は、道内にまだまだたくさんあります。自然遊びは、個人の楽しみかもしれませんが、過疎に対する地域づくりにつながる可能性が大いにあります。  
子どもの笑顔と歓声がある地域こそ繁栄すると思います。全国、全世界の親が子どもを送り込みたくなるような北海道の田舎をつくりたいものです。

(北海道新聞 06.06.25 掲載)


水遊び

2006-06-26 15:47:40 | コラム記事
6月中旬になっても雪解け水が冷たくて、「川の下見はもっと後にしようよ」なんて弱音を吐いている私ですが、自然学校にやってくる子ども達は、水遊びを楽しみにしています。
黒松内は、全長40数Kmの朱太川を流域とする町で、海もすぐそこにあります。川の流れは町内どこでも見られるのですが、いつの頃からか、川や海は子どもだけでは近づいてはいけない場所になってしまい、田舎ですら水辺で遊ぶ子どもの姿はほとんど見られなくなりました。

 川や海は、地上と異なるたくさんの生き物が住む環境です。しかし、知識でそれを理解していても、本当の違いは、その中に入らない限り分かりません。だからこそ、大人が安全管理をしてあげながら一緒に水中の世界を楽しんで欲しいものです。

北国の水遊びには、上下に分かれた雨具が優れ物です。乾きやすいジャージーなどを下に、ライフジャケットを一番上に重ね着するように身に着ければ、全身が水に濡れても、ちょっとしたウエットスーツとなり保温効果もあります。気温の低い日の海水浴でも、私達はユニフォームとしています。

さて水遊び用の箱眼鏡は異なる世界を覗くための必携品です。石の間に隠れているカジカなどを探し、手持ちの網で捕獲するのにも使います。この「探して捕まえる」という一見単純な活動は、鬼ごっこにも通じるもので、我身の安全管理能力を高めるためにも、子ども時代にたくさん経験すべき体験活動でもあります。

(北海道新聞 06.06.18 掲載)

火を熾す(おこす)

2006-06-19 17:51:50 | コラム記事
火を熾す
 料理をする、お風呂を沸かす時、石油やガスを熱源とした器具を誰もが使っています。火を熾(おこ)すという苦労はまったくなく、その便利さに何の疑問も持たずに私たちは火を手にいれています。

 野外活動でもワンタッチで火が点くコンパクトに収納ができ、2つもバーナーがある格好良く使いやすい道具が増えています。しかし、便利ということは、作業効率が良いということで、つまり一人でもできるということにもなります。大量に食事を作る時は、私達も小型のプロパンボンベとガスレンジを車に積み込んで行くこともありますが、薪(たきぎ)で火を熾し手間をかけることもあります。 作業(手)と時間(間)がかかるということは、仲間との会話も増える、交流が深まるということにもなります。

使えるマッチは3本だけで薪に火を点け、高さ50cmに横に張られた凧糸を焼き切る競争は、子どもにも大人にも人気があります。炊き点けとなる乾いた小枝等をたくさん集め、火元に小さい枝、外側へ大きなものを段階的に組み合わせる、空気が入る方向を確保するなどコツはあるのですが、どうしたら上手くゆくのか、あれやこれやと仲間と相談しながら点火する、つまり準備することも楽しさになります。

 火を扱う術(すべ)を伝える時、子ども達の目はキラキラと光り、好奇心に満ち溢れます。ましてや、木を摩擦させ、切り屑に火を点けた大人は、大魔術を成功させたようなヒーローとなり、歓声を浴びます。人の火への執着心は、間違いなく本能に組み込まれているのだなと感じます。
そして、便利になると同時に、実は失われているものがたくさんあるような気もします。

(06.06.11 北海道新聞掲載)

エコツアープランニング

2006-06-16 17:59:49 | ツーリズム
エコツアーのプランニング
~自然と地域を来訪者に楽しんでいただく旅づくり~
Planning The Eco-tour for enjoying Visitors to Nature&Rural
                          (市民講座 講演要旨)
 
◆私達のエコツアーのコンセプト
北海道に観光に訪れる観光客は、広く雄大な景色を求める。そして、展望台から釧路湿原やオホーツクに広がる風景を眺め、「広いねぇ」という感想を発し、次々と記念写真を撮り、通り過ぎていく。そのほとんどは、「そこへ行く」ことが目的の「目的地到達型」の旅でしかない。

しかし、「雄大な風景」と形容される道東を始めとする北海道の自然、その中には実はさまざまな野生生物が複雑なバランスを保って生活している。 一方、北海道は、600万人に近い人々が暮らしている巨大な島でもある。野生と人間の暮らしがまさしく隣り合わせに存在し、その保護と開発の問題のまさに波打ち際にあるのが北海道である。つまり、人と自然との関わり合い方を学ぶことができる絶好の「環境」にあると言える。

通過型の旅では、風景は単に脳裏を流れ去るだけで、風景の中にある事象(生態、地誌、歴史、人々の暮らし、時間・季節での微細な変化など)を認識できない。自然のペースにあわせ、また、そこに生活する人々の視点など、いろいろな角度から北海道を見て、体感する旅をする事で、風景はより「現実」のものとなり、私達を取り巻く「環境」について関心を寄せるようになる。

旅人が、美しい自然にふれあい、北海道を愛するたくさんの人に出会うことで、感動をより深いものとし、自然を愛する心を育み、その「かけがえのなさ」に想いをよせ、ひとりでも多くが、保護・保存に協力してもらえるような意識を少しでも高めるツアーを作り出したい。

◆ツアーのフローラーニングを重視する
 北海道の自然豊かな地には、さまざまな地域資源(風景、生物、開拓の歴史、産業、人など)が存在している。まずは、旅のテーマ(ねらい)を明確にして、これらを組み合わせて、流れのあるストーリーを横軸にし、本物の体験、はかないもの体験、人やおいしい物との出会いなどを横軸に配置したプランニングを行う(フローラーニング)。 プランニングでは、例えば、次のような事項を演出すると参加者の満足度が高くなる。

 ・じっくりと時間をかけて滞在する。
 ・目線をかえる。(水鳥のようにカヌーに乗る、シカのように草原
  を歩く、馬に乗ってもっと高い視線から風にふかれる、同じ
  場所をいろいろな方向から見る。
 ・その地域に住み地域について詳しい人と出会い、言葉を交わす機会を作る。   それは、地元のインタープリター(案内人)ばかりではなく、宿の主人、
  商店  のおかみさん、港の漁師さん、露天風呂につかる地元のお年寄り
  であったりする。
 ・おいしく、楽しい食事 の時間を過ごす
 ・仲間(同行者)と感動を共有する

◆ツアー組み立てでの留意点
 上記のようなプログラムを展開し、参加者の満足度を高めるには、次の点を留意すべきである。

①定員は少人数。
10名前後を基本。自然への一度におけるインパクトの低減も考慮に入れているが、インタープリター(参加者にわかり易く情報を伝える解説者)の情報が行き届き、安全管理もしやすく、参加者内の意思疎通をはかれる。また、参加者の好みや要望に配慮でき、他の参加者との調整を計れる適度の人数である。

②機動力を確保する
エコツアーの対象素材は、そこへ行くと必ず見れる、出会えるという確実性の高い事象ばかりではない、「その時だけ」という、天候や時間に影響を受けるような「はかないもの」、不確実性なものも対象物となる。いろいろな角度から見せるという事は、場所を移動するし「比較」するということである。そのためには、臨機応変にツアーを展開させる必要があり、少人数で動けるワゴン車を利用した、小回りができる機動力性が求められる。

③インタープリターを配置する
自然や地域を案内する役割・インタープリターは、乗馬やカヌーなどのソフトも含め、積極的に地元の業者を活用する。これには、利益が地元に還元されるべきというエコツアーの原則もあるが、ガイドラインや資源管理調査が設定されていない現状では、地元の地域の自然をよく知る人をガイドラインの設定者として同行すると良い。例えば、「この近くにタンチョウの営巣があるので、今回は近づかないようにしよう」というような、具体的な情報を得ることができるという利点がある。

④コーディネイターを同行させる
地域に豊かな自然、資源やアクティビィティ(活動内容、現地インタープリターも資源である)があったとしても、それを有機的に結びトータル的なプログラムデザインをする人間がいなければ、エコツアーの目的は果たせない。またツアーの人数が少人数になればなるほど、インタープリターや地元の人と参加者、参加者同士のコミュニケーションは密になるので、それらを仲介するコミュニケーション能力にたけたコーディネーターの存在の有無が、満足度の高いエコツアーの成立に欠かせなくなる。

両者は、「インタープリターは人と自然の関係性づくりに、コーディネーターは人と人との関係性の加減調整」が役割となり、エコツアー進行展開してゆくことになる。コーディネイターは、インタープリターの話が参加者の興味や意識とずれていたとき、参加者にインタープリターのメッセージが届いていない時なども間に入ることになる。

またアクティビィティソフトを多めに用意し、そのときの自然の状況、ビジターの構成や希望に合わせ、自然には、インパクトが少なく、参加者には大きなインパクトを与えられるように、コーディネーターには臨機応変なツアーの進行展開が求めれる。 旅程管理を中心業務とするツアーコンダクターとの大きな違いはここにある。


◆環境教育とエコツアー
1975年にベオグラードで開催された環境教育の専門家が集まった初の世界会議で作られた「ベオグラード憲章」は、環境教育の目標的段階(関心→知識→態度→技術→評価能力)を示しているが、エコツアーを環境教育的に当てはめると、現行は、「自然や環境について感心を持つようになり知識を得る、それを自らの生活態度に反映させる」までの段階である。
 環境教育的な視点からも、エコツアーは、環境や自然に関心のある人々を増やしてゆくために、効果的な手法である。



中ノ川小中学校・運動会式辞

2006-06-12 07:29:58 | 教育
おはようございます。 
数日間、風が吹き、雨が降り続いておりましたが、幸いにも、本日、大空のもとで、このように大勢の地域内外の方々と共に、中の川小中学校の大運動会が開催される運びとなり、とても嬉しく感じております。


さて、本日の大運動会は、みなさま方もご承知のとおり、小学校108年、そして、中学校58年の長い歴史の中でも、もっとも記念すべき大会となりました。 
「運動会」という言葉の響きから、大人になっても、忘れられない思い出がいくつも わきあがってくる方々も 多いかと思います。 それは、全身で感じた勝利の喜びで あるかもしれません。 また、仲間と協力し合った達成感や楽しさであったり、負けたときの悔しさであり、あるいは、悲しい、つらい出来事であるかもしれません。
しかし、大きな思い出として残っていることを 今、ふりかえると、それらは、間違いなく、自分の人生の糧(かて)となった、子ども時代の大きな出来事だったと思えます。

本年度の運動会開催にあたり、児童生徒会が決めたテーマは、
 一致団結 ~ 感謝の気持ちを込めて、目いっぱい楽しむ ~ です。

中の川小中学校の大運動会は、今回が最後となりますが、子ども達の 「心のアルバム」に 大きく残る 思い出深いものにするためにも、 参加者の皆様も存分に楽しみ、盛り上げて 頂きたいと思います。


簡単ではございますが、これをもって、PTAを代表したご挨拶に代えさせていただきます。

それでは、怪我のなき様、本日、いち日 よろしくお願いいたします。

観る・覗く道具

2006-06-10 15:43:38 | コラム記事

 野山へゆくと鳥達のさえずりが賑やかになりました。ところが姿を見つけるのは意外と難しいものです。双眼鏡を買ったけど、さっぱり見えないと嘆いている方がいました。どれどれと覗いてみると、20倍も拡大できるものでした。倍率が大きいと当然覗ける範囲が狭まり、野鳥をとらえるのが難しくなります。6から8倍がお奨めです。

 大型のカメラ販店にゆくと、いろいろなルーペが売られています。写真の粒子や色合いを見るための5倍程度の筒状、三角錐状のものは、観察道具の優れ物です。焦点距離が決まっているので、虫や樹肌の上にかぶせて置くだけで、巨大な怪獣がうごめき、美しく複雑な模様が織り成す別世界な自然がくっきりと覗けます。

 同じ売り場を探すと、透明なガラスが両面にはめ込まれたスライドマウントを見つけることができます。これを使って、本物の花びらや草を挟み込んでステンドグラスのように飾り、日にかざしてみると、それは素敵なネイチャースライドになります。
 小さな葉脈や繊毛、花びらにある模様まで、まるで顕微鏡を覗いているようにその微細な形がわかります。

 実は、自然を見るには肉眼の1倍が最も優れた道具かもしれません。野鳥を見つけるのも、双眼鏡があるからできるのではなく、まずは自分の目なのです。
目は、マクロにもミクロにも焦点を合わせることができるのです。

(北海道新聞 06.05.28 掲載)

春もみじ

2006-06-08 11:04:51 | コラム記事
「春の森がこんなにも色づいていることをこの歳になるまで知りませんでした」
 木漏れ日のさす露天風呂で心地よく身をひたしていると、隣の男性がひとり言のような口調で話しかけてきました。一緒に学校近くの春の野山をのんびりと散策した後のことでした。

 北海道の落葉広葉樹の森は、このころ、遠くから見ると、淡い黄色や桃色、だいだい色や黄緑色など明るく柔らかなパステルカラーで彩られます。その様子はあたかも紅(黄)葉しているようです。これらは、花や葉の芽吹きの色なのです。
 「そんなものを見たことがない」と意外に思う方もいるでしょう。誰にでも見ることができるのですが、実はちょっとしたコツが必要なのです。物が見えるのは、頭で認識をする(わかる)からです。つまり見ようとしないと見えないのです。

 試しにいろいろな形の木があり、夏になると緑でこん盛りとしている山を遠くから、「どんな色があるかな」と好奇心を持って、焦点を絞るように目を凝らしてみてください。双眼鏡などは要りません。 目の不自由な方も、ぜひじっくりと全身で春の山に向かい合ってください。萌黄(もえぎ)色を感じることができるでしょう。

 ちなみに、色合いをにぎわす樹木は、ハウチワカエデ、イタヤカエデ、ヤマザクラ、ミズナラなどなど。どれがどの色かは、ぜひ森の中で確認しましょう。

(北海道新聞 5月14日掲載)

青年よ! 田舎へ来たれ!

2006-06-07 20:59:35 | ツーリズム
 北海道の南、渡島半島の付け根に位置する人口3400人あまりの小さな町、黒松内町に私自身の活動拠点を移して6年目となる。元小学校であった施設を利用し、黒松内ぶなの森自然学校を運営し、地域に根ざした自然体験活動を展開している。
 私達は、都市と自然豊かな地との交流と教育活動=エコツーリズムを旗印にし、道東・弟子屈町川湯温泉、道央・大雪山の麓の東川町、道南の登別、そして黒松内にスタッフが居住する拠点活動に力を入れている。都市から人々を送り出し、エコツアーを実施するだけはなく、ツアーの受け地(エコサイト)づくりにエコツーリズムの実践を試みている。

◆自然体験活動は地域づくりに貢献できるか
 北海道ばかりではなく、日本の各地の田舎は過疎化が進んでいる。一見のどかでのんびりとした風景が広がっていても、そこに生活する人々の暮らしは厳しい。しかし、豊かさとは何かと考えたとき、お金では買えない都会にないものが田舎にはたくさんある。例えば、それは人と人との密な関係性であったり、自然の移ろいの中で身をおける安らぎであったりする。ところが、高齢、少子は都会に比してかなりの高率であり、三人に一人は高齢者、子ども達も一学年20名ほどしかいない地域は少なくない。地方交付税も激減し、町村財政は逼迫している。このままでは、田舎から人はますます減ってゆくだろう。過疎化の先にあるものは、国力の基盤である自然豊かな地、第一次産業地域の崩壊である。 
 その解決の方向は、地域内外の人々の交流を生み出すことにある。新しい出会いこそが、新しい関係性を生み、新しい地域創造のきっかけになると思う。そのとき、その出会いを演出できる手段となるのが、誰でも参加しやすい中身のある自然体験活動である。

◆青年よ! 田舎に来たれ!
◆ 何でもある都会に比べると田舎暮らしは不便かもしれない。しかし、何が不便かと言った所で
映画が見られない、可愛い服が買えない・・、所詮そんなものだろう。要はライフスタイルの問題でしかない。どちらのライフスタイルが格好いいのかに過ぎない。
 時代は、そろそろ、ルーラルライフ(田舎暮らし)の方が、ヤバクナイ?

(NPO法人自然体験活動推進協議会への コラム寄稿)