はる風かわら版

たかぎはるみつ の ぼやき・意見・主張・勝手コメント・コラム、投稿、原稿などの綴り箱です。・・・

地域協働とおせっかい

2008-02-12 17:57:47 | ツーリズム
季刊ねおす 0802 MISSION コラム

地域協働とおせっかい

 ねおすの事業の柱のひとつに「地域協働」がある. それは1998年に、黒松内町からの委託事業「黒松内ぶなの森自然学校のビジョンづくり」から始まったと言ってよいだろう。翌年に開校は自然を案内するガイドの人材養成が大きなテーマとなり、外部の講師を招いたプログラムが多く、地域住民との関わりは少なかった。当時はまだ行政用語としても「協働」は登場しておらず、私達も「地域との連携」はおろか、自らの自己実現の域でしかなかったように思う。

 2003年、環境省の補助事業とも位置づけられていた養成事業が終わり、傍と立止まった時、地域とのつながりが薄かったことに気づかされた。そして、改めて「地域と共に」というキーワードを加え、「地域あってこその自然学校(地域立脚)」を目指し始めた。しかし、足元を良く見ると、それまでには気がつかなかった様々な社会問題が見えてきた。グローバル経済に飲み込まれる農業問題であり、漁業や林業が抱える社会構造的や環境に左右された問題、高齢、子育て等の福祉、行財政のひっ迫、雇用問題などである。

 これ等を知れば知るほど、「地域と共に」というキーワードは、生やさしいものではないことがわかってきた。自然学校そのものが地域に持続するためには、それ相応の「役割」を果たさなければならないことを日々痛感している。しかし、物を生産するのではなく、行政サービスを提供するのでもない私達が地域に果たせる「役割」は何か!? 

それは・・・
地域に嫌がれないように、「おせっかい」をすることだと思う。これがあったら、こうしたら、地域にとっても「いいんでないかい」「たのしいんでないかい」程度におせっかいを続ける事だと思う。
 「おまえらが、居てくれてよかったよ」という言葉が地域住民より聞えてくることを評価として、これからも、勝手に「地域協働」を提案し続けてゆきたい。

NPO法人ねおす 理事長 高木晴光

銀河系ネットワーク

2008-02-12 16:31:44 | NPO活動全般
◆ねおすのビジョン

 ねおすの経営原則は「新しい出会い」の場の創出にある。「自然との出会いばかりではなく、多様な人と出会える場」は、新しい気づきをもたらし、新たなことが創造される可能性が生まれると考えている。目指す社会は、特性が異なるテーマ(例えば、子育て、農業、福祉、自然)で活動する小さな「コミュニティ」がたくさん存在し、それらが、関係性を持ってつながりあっているネットワーク型社会である。そして、これを「社会関係資本の整備」と考え、その実現へのプロセスを実行することを組織のミッションとしている。

 すでに、ねおすの活動にはコミュニティの様相を呈している事業が複数ある。NPO法人北海道山岳活動サポートは、ねおすから派生したNPOであるが、山登りが好きな人達が集まる山岳・野外行動技術と知識を持ったコミュニティである。また、登別のフォレスト鉱山は多くの住民が関わる子どもを主な対象としたボランタリーな活動を展開している。廃校舎利用した黒松内ぶなの森自然学校は農村に立地し地域社会の一員としての日常生活と業務が重なり合っている。そして、大雪山自然学校は大雪山国立公園をフィールドとしている。それぞれの地域に住むスタッフは、ライフスタイルが異なり、また質の異なる仕事をしているのだ。各担当職員とその家族、そして関わるボランティアや地域住民、事業の参加者で構成されるコミュニティであると考えている。

それぞれのコミュニティのコアであるねおす職員は、そのコミュニティの特性によって、異なる専門性や対人関係のコミュニケーション力を高めることができる。 そして、時にはそれぞれの得意な分野を生し他のコミュニティに出向き協働や相互研修によって、緩やかにつながり合える状態・ネットワークを構築している。この交流にはコストが掛かるが、それを意識的に経営のシステムとしている。異なるコミュニティを体験することは、普段の自分の生活や仕事を振り返る機会ともなり、またリフレッシュにもなる。それは、新たな気づきとなり、「自己実現」するチャンスが増えることにもつながるからである。

 現在、子どもの事業を特化したコミュニティ(NPO)の独立を目指しているが、将来的には高齢者福祉、障がい者福祉、農業、森林・木材などをテーマとしたコミュニティも創出され、ネットワークそのものが多様になることを理想としている。

この理想とするコミュニティ群の創出とそれらのネットワーク型協働事業、そして人材養成事業を重ね合わせた展開を、それぞれのコミュニティを個性ある銀河にたとえて「銀河ネットワーク構想」と称している。

◆エコツーリズムと地域・人づくり

一方、ねおすはエコツーリズムを経営の大きな旗印としてきた。そして、都市以外に活動拠点を持ち、スタッフがその地に居住することにより地域社会が抱える問題を現実に知るようになった。

それは、例えば、高い高齢者率からの高齢者問題、漁獲高の減少と漁村経済の問題、グローバル経済の中での農家経営の存続問題、雇用問題、都市と比べた収入の格差、地方財政の逼迫、田舎といえどもコミュニティが崩壊しつつある現状などである。エコツーリズムを産業から評価すると経済効果がその指標となる。しかし、それでは地域に内在する問題の解決を図ることは難しく、地域に立脚した事業を展開し地域社会に共存をめざすことはできない。

 これまで、エコツーリズムは、「経済」や「自然保護・保全」についてはよく話題になるが、「人づくり」や「地域づくり」についてはあまり論議されてこなかった。特に、大きな観光資源を持たない小さな地域の観光を考えるとき、それは、人づくりによる地域振興と重ね合わせる必要がある。

◆ツーリズムの限界

 エコツーリズムに社会問題の解決まで求めるのは、小さな地域社会が抱える問題は広範に及ぶだけにとても難しい。しかし、ツーリズムは人々の心に豊かさを提供するものであると捉えるならば、訪問地である地域社会の福利にも良い影響を与えるものであるべきだ。しかし、良いサービスを提供する観光業は労働集約型産業とも言える。エコリゾートが豪華になればなるほど、エコツアーの料金が高くなれば高くなるほど、つまりサービスが増えれば増えるほど、低賃金労働構造も増えるのではないだろうか。

グローバル経済に飲み込まれた世相は、人々の生活を「上流と下流」、「勝ち組と負け組み」、「セレブとプアワーカー」と平気で色分けするようになってしまった。この傾向はとどまる事はないのかもしれない。日本にも格差社会は否応なしにも訪れている。ツーリズムがそれに加担してはならないとさえ思う。
 
 コスタリカのガイドもハワイのエコリゾートの従業員も決して高い賃金を貰ってはいないだろう。もちろん、より高収入を望んでいるだろうが、彼らの笑顔やホスピタリティに触れると、その仕事を自らが楽しんでいる様子が伝わってくる。そして、その笑顔の理由を考えたとき、その地域で「暮らす」ことが、「心の豊かさ」につながり、それが笑顔に反映されているのではないかと思う。

 つまり、地域社会の福利厚生度が満足できるものなのだと考えられる。子育てが安心してできる、自分の趣味の時間が持てる、話ができる友や仲間がいる、コミュニティが生活に保障されているなど、暮らしやすい社会環境があるからこそ体現できる「笑顔」ではないだろうか。

 日本の観光は「顧客満足」は要求されるが、サービスを提供する側の満足「雇用者・地域住民の満足」が考えられてきたとはいえない。雇用者がその地域粋に定着するか否かは、賃金だけが問題ではないだろう。その地域で生活することの社会的満足が必要なのである。

 訪問者が心豊かな気持ちになれる地域は、その地域が暮らしやすい地でもある必要がある。訪問者にとっては非日常であるが、その地に暮らす者にとっては「日常」である。

 ツーリズムの健全な発展のためには、地域の「日常生活の豊かさ」をつくることが実は、とても重要だと思う。

*****

(2008出版予定の本のコラム・・・でしたが・・没となった・・・ 残念)





ガイド業の登場とツーリズム

2008-02-12 16:25:14 | ツーリズム

1980年代後半、世の中は好景気に沸いていた。その真っ只中、札幌市内で足掛け3年、複合レジャー施設の観光開発に携わった経験がある。設計段階のコンセプトメイキングから関わり、什器、調度品、設備機器の費用概算を行い、飲食、温泉、スポーツ、ゲーム、ランドリーなど全てのセクションの運営計画を練り、その立ち上げまで第一線で仕事をした。担当者3名で始めた仕事は、オープン時にはパートを加えると500人のスタッフに膨れ上がるものだった。

 開業直後はスポーツクラブの現場責任者となり、様々なスポーツ教室の展開を試行錯誤しながらも軌道に乗せ、来場者を対象に自然体験キャンプを「有料」で募集した。これが、私のエコツアー的な活動の始まりである。

 その後も、保養研修施設や「健康」をテーマにした都市の複合ビル計画など「人が豊かに暮らす」場のハード・施設の事業開発、いわゆるディベロッパーが私の担当だった。しかし、後に「バブルの崩壊」と呼ばれる景気急落が訪れ、レジャー・スポーツ施設のリストラ計画と実施までも担当することになり、自ら立ち上げた教室の閉鎖、つい1年間前に採用した者の人員整理など、リゾート開発の山と谷(光と影)をまるでジェットコースターに乗ったように過ごした。

 リストラ実行後には、新たな観光開発の仕事はストップしてしまった。おかげで、移動させられた「暇を持て余す職場」は、「本当は何をやりたいのだろう」と私に考える時間を与えてくれる場となった。しかし、それまで真剣に悩み抜いて仕事をしていたので、「思い」を固めるまでにはそう時間は掛からなかった。「人々の心豊かな生活・生き方づくり」をサポートする仕事が続けたかったのだ。そして、他人が作ったジェットコースターに乗るように仕事をするのではなく、自然の中に時間をかけて身を置きたいのだと確認ができた。

 そして、1991年に「自然と人、人と人、社会と自然のつながりづくり」を経営コンセプトとした北海道自然体験学校NEOS(現NPO法人ねおす)を設立するにいたった。

 エコツアーの実施や山、カヌー、ネイチャーなどのガイドが、業務、職業として現れ定着してきた時期は、この時代の大きな転換期と重なるだろう。自然豊かな地にリゾート、観光施設を作ることにより集客を図るハード型観光から、自然の中へ人を連れ出す、自然体験ができる「仕組み」・ソフト型観光の登場である。そういった観点から見ると、1990年当初は、日本のエコツーリズムの胎動期と言ってよいだろう。

 しかし、当時は「お金をとって自然を案内する輩は、自然破壊を助長しているのではないか」と新聞に投書が載るような時代であった。これはつまり、自然型観光には、まだツーリズムと呼べるような土台が薄く、自然の中での「有料の遊び」が登場したに過ぎなかったとも言える。

 私達にとってのエコツーリズムは、まずツアーの実践から始まり、その基盤となる考え方の必要性を感じ土台化されて来たものである。
 
 それから10数年を経た2002年、ねおすスタッフの研修会にて、次のような ねおすツーリズムの9か条が作られ、現在の活動の指針となっている。

◆第1条 ねおすツーリズムは「学びの場」を創り提供します。
学ぶ人はツアーに関わる全ての人です。共に学び、気づきという知的なお土産をもちかえることをめざします。何らかの形で、気づきが日常生活に活かされることをめざします。

◆第2条 ねおすツーリズムは「つながり」を意識します。
人と自然、自然と地域、人と暮らしのコミュニケーションを促進します。地域との関わりを意識し、第1次産業、教育活動、福祉、市民活動との連携を視野に入れます。

◆第3条 ねおすツーリズムは「環境保全、持続可能な利用」を目指します。
少人数の旅を提案し、自然、地域、文化への影響をすくなくするように配慮します。

◆第4条 ねおすツーリズムは、世界へ向けて「北海道らしさ」を発信するものです。
北海道らしさの発信を通じて、北海道の持続的な発展に貢献できるように努めます。

◆第5条 ねおすツーリズムは、「訪問地への愛と責任」を持つものです。
訪問地の自然、人にこだわり、その魅力を引き出し、自律を支援します。

◆第6条 ねおすツーリズムは、「新しい旅文化」を提案、実践します。
北海道らしい旅のモデルの提案、実践を通じて、「旅文化の向上、旅文化の創造」をめざし、日本あるいは世界へメッセージを発信し続けます。

◆第7条 ねおすツーリズムは、NPO活動です。

◆第8条 ねおすツーリズムは、私達創り手のライフスタイルに反映されるものです。

◆第9条 ねおすツーリズムは以下のことを意識し実践します。
 ・創り手は、時空のデザイナーたるように努めます。
 ・メッセージを発信し続けます。
 ・多様かつ深さを持つ内容に心がけ、ゆとりあるプログラムを提供します。
 ・すてきな出会いを演出します。
 ・かかわりを持つ全ての人々が楽しめるように努めます。
 ・今を楽しみ、旬を味わいます。
 ・アットホームな居心地の良さを提供し、追及します。
 ・常に安全を十分に配慮して行動します。
 (2001.12.05 ねおすグループ研修会にて策定)

(地域マネージメントとエコツーリズム 2008 出版予定本のコラム元原稿より)