はる風かわら版

たかぎはるみつ の ぼやき・意見・主張・勝手コメント・コラム、投稿、原稿などの綴り箱です。・・・

エコツアープランニング

2006-06-16 17:59:49 | ツーリズム
エコツアーのプランニング
~自然と地域を来訪者に楽しんでいただく旅づくり~
Planning The Eco-tour for enjoying Visitors to Nature&Rural
                          (市民講座 講演要旨)
 
◆私達のエコツアーのコンセプト
北海道に観光に訪れる観光客は、広く雄大な景色を求める。そして、展望台から釧路湿原やオホーツクに広がる風景を眺め、「広いねぇ」という感想を発し、次々と記念写真を撮り、通り過ぎていく。そのほとんどは、「そこへ行く」ことが目的の「目的地到達型」の旅でしかない。

しかし、「雄大な風景」と形容される道東を始めとする北海道の自然、その中には実はさまざまな野生生物が複雑なバランスを保って生活している。 一方、北海道は、600万人に近い人々が暮らしている巨大な島でもある。野生と人間の暮らしがまさしく隣り合わせに存在し、その保護と開発の問題のまさに波打ち際にあるのが北海道である。つまり、人と自然との関わり合い方を学ぶことができる絶好の「環境」にあると言える。

通過型の旅では、風景は単に脳裏を流れ去るだけで、風景の中にある事象(生態、地誌、歴史、人々の暮らし、時間・季節での微細な変化など)を認識できない。自然のペースにあわせ、また、そこに生活する人々の視点など、いろいろな角度から北海道を見て、体感する旅をする事で、風景はより「現実」のものとなり、私達を取り巻く「環境」について関心を寄せるようになる。

旅人が、美しい自然にふれあい、北海道を愛するたくさんの人に出会うことで、感動をより深いものとし、自然を愛する心を育み、その「かけがえのなさ」に想いをよせ、ひとりでも多くが、保護・保存に協力してもらえるような意識を少しでも高めるツアーを作り出したい。

◆ツアーのフローラーニングを重視する
 北海道の自然豊かな地には、さまざまな地域資源(風景、生物、開拓の歴史、産業、人など)が存在している。まずは、旅のテーマ(ねらい)を明確にして、これらを組み合わせて、流れのあるストーリーを横軸にし、本物の体験、はかないもの体験、人やおいしい物との出会いなどを横軸に配置したプランニングを行う(フローラーニング)。 プランニングでは、例えば、次のような事項を演出すると参加者の満足度が高くなる。

 ・じっくりと時間をかけて滞在する。
 ・目線をかえる。(水鳥のようにカヌーに乗る、シカのように草原
  を歩く、馬に乗ってもっと高い視線から風にふかれる、同じ
  場所をいろいろな方向から見る。
 ・その地域に住み地域について詳しい人と出会い、言葉を交わす機会を作る。   それは、地元のインタープリター(案内人)ばかりではなく、宿の主人、
  商店  のおかみさん、港の漁師さん、露天風呂につかる地元のお年寄り
  であったりする。
 ・おいしく、楽しい食事 の時間を過ごす
 ・仲間(同行者)と感動を共有する

◆ツアー組み立てでの留意点
 上記のようなプログラムを展開し、参加者の満足度を高めるには、次の点を留意すべきである。

①定員は少人数。
10名前後を基本。自然への一度におけるインパクトの低減も考慮に入れているが、インタープリター(参加者にわかり易く情報を伝える解説者)の情報が行き届き、安全管理もしやすく、参加者内の意思疎通をはかれる。また、参加者の好みや要望に配慮でき、他の参加者との調整を計れる適度の人数である。

②機動力を確保する
エコツアーの対象素材は、そこへ行くと必ず見れる、出会えるという確実性の高い事象ばかりではない、「その時だけ」という、天候や時間に影響を受けるような「はかないもの」、不確実性なものも対象物となる。いろいろな角度から見せるという事は、場所を移動するし「比較」するということである。そのためには、臨機応変にツアーを展開させる必要があり、少人数で動けるワゴン車を利用した、小回りができる機動力性が求められる。

③インタープリターを配置する
自然や地域を案内する役割・インタープリターは、乗馬やカヌーなどのソフトも含め、積極的に地元の業者を活用する。これには、利益が地元に還元されるべきというエコツアーの原則もあるが、ガイドラインや資源管理調査が設定されていない現状では、地元の地域の自然をよく知る人をガイドラインの設定者として同行すると良い。例えば、「この近くにタンチョウの営巣があるので、今回は近づかないようにしよう」というような、具体的な情報を得ることができるという利点がある。

④コーディネイターを同行させる
地域に豊かな自然、資源やアクティビィティ(活動内容、現地インタープリターも資源である)があったとしても、それを有機的に結びトータル的なプログラムデザインをする人間がいなければ、エコツアーの目的は果たせない。またツアーの人数が少人数になればなるほど、インタープリターや地元の人と参加者、参加者同士のコミュニケーションは密になるので、それらを仲介するコミュニケーション能力にたけたコーディネーターの存在の有無が、満足度の高いエコツアーの成立に欠かせなくなる。

両者は、「インタープリターは人と自然の関係性づくりに、コーディネーターは人と人との関係性の加減調整」が役割となり、エコツアー進行展開してゆくことになる。コーディネイターは、インタープリターの話が参加者の興味や意識とずれていたとき、参加者にインタープリターのメッセージが届いていない時なども間に入ることになる。

またアクティビィティソフトを多めに用意し、そのときの自然の状況、ビジターの構成や希望に合わせ、自然には、インパクトが少なく、参加者には大きなインパクトを与えられるように、コーディネーターには臨機応変なツアーの進行展開が求めれる。 旅程管理を中心業務とするツアーコンダクターとの大きな違いはここにある。


◆環境教育とエコツアー
1975年にベオグラードで開催された環境教育の専門家が集まった初の世界会議で作られた「ベオグラード憲章」は、環境教育の目標的段階(関心→知識→態度→技術→評価能力)を示しているが、エコツアーを環境教育的に当てはめると、現行は、「自然や環境について感心を持つようになり知識を得る、それを自らの生活態度に反映させる」までの段階である。
 環境教育的な視点からも、エコツアーは、環境や自然に関心のある人々を増やしてゆくために、効果的な手法である。



1 コメント

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勉強になります (KOBA)
2006-10-26 19:58:33
いやはや、勉強になります。



 普段なにげなく意識していることを、こうして言語化していただける、そのスキルに感服することしきり。。

 今後も、ちょこちょこ覗き、学ばせていただきます。

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