九州自然学校フォーラム 報告書原稿 061223
第一分科会 「体験活動と市場拡大への自然学校を考える」
◆ 自治体の破綻 ~北海道で起きていること~
北海道夕張市が財政破綻を来たし、財政再建団体となることが決まりました。第三セクターの大型観光施設群の閉鎖ばかりでなく、再建計画によると、図書館などの公共サービス施設も閉鎖され、市民も公共サービスの負担増を強いられることになりました。また、市職員の退職希望者は4割を越え、市長の月給はなんと26万円となると報道されています。 これでは、次期市長の成り手もいないでしょう。市外へ職や住居を移す市民は後を絶たず、町を支えていた行政職員ですら、転職のため市外へ住居を移すことが予想されています。これでは、残されるのは、高齢者をはじめとする「弱者」と称される人達だけとなりかねません。地域生活の崩壊は、現実のものとなり、大型の公共投資を続けた悲惨な結果をまざまざと見せ付けられる事態が、北海道に今、起こっています。 地方交付金の大削減のために、同様の状態直前の地方自治体は数多くあります。
◆ では、九州は?
九州の各自治体の財政状況は、詳しいわけではないのですが、この苦しみには大差はないはずです。それでも、ここ何度か訪れている九州の各地で、民間でありながら「地域経営」に果敢にコミットメントしてゆく人達に出会え、私は元気を頂いています。ともかくも、九州の田舎には、「明るい」雰囲気が漂っています。
北海道と九州の間に、市民の地方財政への危機感の差がここ5年で如実に現れ、危機感があるからこそ、その対処に様々な工夫が施されて来たのだと感じています。北海道は、地域再生に遅れを取っていると、今回のフォーラムの参加を通じて実感しました。
◆ 自然学校の役割
そのひとつの表われが、「自然学校」であると思います。主催者に聞くと、「九州には百校余り」の自然学校があるといいます。北海道にも体験観光をキーワードにした業者が数多くいます。自然ウォッチングであったり、カヌー、ラフティング、登山、ホーストレッキングとその数は、百どころか、今や数百以上だと思います。業者の数としては、日本一かもしれません。しかし、自然学校と体験観光業者との違いには大きなものがあります。
それは、今回の「九州自然学校宣言」に書かれているキーワードを見てもわかります。 宣言には、連携・協働、地域に根ざした、地域の課題解決、コミュニティビジネス、公益ビジネス、国民総幸福量、環境地域づくりとった、資本主義型の組織経営では、現れないような言葉が散りばめられています。
◆ どのように市場を拡大するのか
観光は、人がたくさん住む大都市からの発地型スタイルで発展して来ました。都会の人が好むものを提供しすることが、田舎には求められて来ました。マスツアーに対応するために、小さな地域に大きな受け入れの仕組みを作ることを求められて来ました。 しかし、自然学校の戦略は、それだけでは駄目だと思います。大量の人が訪れることによる経済効果だけを指標としていては、全国津々浦々同じような体験活動になってしまいます。自然学校には、地域ならではの「個性」が必要です。その最も重要な個性とは、自然学校が地域の人々にも利用されている、あるいは、その存在そのものが、地域の「宝」になっているか、ということです。
もちろん、マスツアー対象の自然学校があってもかまいません。しかし、小さな町村に立地する多くの自然学校は、マスツアーを大量に受け入れること目指すと、地域の構造そのものを変えることも目標にしなけばならなくなります。それは、個性を没化させることにもつながります。
小さな自然学校が、小さな個性ある地域の交流を起こす役割を担うとき、大切なのは、「その地に住む人が、楽しげに幸せに生きていること」を見せることだと考えています。個人やグループで旅をするツーリストは、
その地の「人」に出会いにゆくのです。その出会いを時には演出し、時には舞台にも立って行くのが、自然学校だと思います。
地域の個性を磨き、自らも地域の「宝」となるような自然学校が、たくさん増える事により、相乗効果的に人の流れが生まれてくるのではないでしょうか。
九州に、日本中に地域立脚型の自然学校が立ち上がってくることに、大きな期待を持つと共に、九州の皆さんのように、「明るい」自然学校を北海道でも作ってゆきます。