はる風かわら版

たかぎはるみつ の ぼやき・意見・主張・勝手コメント・コラム、投稿、原稿などの綴り箱です。・・・

火を熾す(おこす)

2006-06-19 17:51:50 | コラム記事
火を熾す
 料理をする、お風呂を沸かす時、石油やガスを熱源とした器具を誰もが使っています。火を熾(おこ)すという苦労はまったくなく、その便利さに何の疑問も持たずに私たちは火を手にいれています。

 野外活動でもワンタッチで火が点くコンパクトに収納ができ、2つもバーナーがある格好良く使いやすい道具が増えています。しかし、便利ということは、作業効率が良いということで、つまり一人でもできるということにもなります。大量に食事を作る時は、私達も小型のプロパンボンベとガスレンジを車に積み込んで行くこともありますが、薪(たきぎ)で火を熾し手間をかけることもあります。 作業(手)と時間(間)がかかるということは、仲間との会話も増える、交流が深まるということにもなります。

使えるマッチは3本だけで薪に火を点け、高さ50cmに横に張られた凧糸を焼き切る競争は、子どもにも大人にも人気があります。炊き点けとなる乾いた小枝等をたくさん集め、火元に小さい枝、外側へ大きなものを段階的に組み合わせる、空気が入る方向を確保するなどコツはあるのですが、どうしたら上手くゆくのか、あれやこれやと仲間と相談しながら点火する、つまり準備することも楽しさになります。

 火を扱う術(すべ)を伝える時、子ども達の目はキラキラと光り、好奇心に満ち溢れます。ましてや、木を摩擦させ、切り屑に火を点けた大人は、大魔術を成功させたようなヒーローとなり、歓声を浴びます。人の火への執着心は、間違いなく本能に組み込まれているのだなと感じます。
そして、便利になると同時に、実は失われているものがたくさんあるような気もします。

(06.06.11 北海道新聞掲載)