「ガイド業の登場とツーリズム」
1980年代後半、世の中は好景気に沸いていた。その真っ只中、札幌市内で足掛け3年、複合レジャー施設の観光開発に携わった経験がある。設計段階のコンセプトメイキングから関わり、什器、調度品、設備機器の費用概算を行い、飲食、温泉、スポーツ、ゲーム、ランドリーなど全てのセクションの運営計画を練り、その立ち上げまで第一線で仕事をした。担当者3名で始めた仕事は、オープン時にはパートを加えると500人のスタッフに膨れ上がるものだった。
開業直後はスポーツクラブの現場責任者となり、様々なスポーツ教室の展開を試行錯誤しながらも軌道に乗せ、来場者を対象に自然体験キャンプを「有料」で募集した。これが、私のエコツアー的な活動の始めである。
その後も、保養研修施設や「健康」をテーマにした都市の複合ビル計画など「人が豊かに暮らす」場のハード・施設の事業開発、いわゆるディベロッパーが私の担当だった。しかし、後に「バブルの崩壊」と呼ばれる景気急落が訪れ、レジャー・スポーツ施設のリストラ計画と実施までも担当することになり、自ら立ち上げた教室の閉鎖、つい1年間前に採用した者の人員整理など、リゾート開発の山と谷(光と影)をまるでジェットコースターに乗ったように過ごした。
リストラ実行後には、新たな観光開発の仕事はストップしてしまった。おかげで、移動させられた「暇を持て余す職場」は、「本当は何をやりたいのだろう」と私に考える時間を与えてくれる場となった。しかし、それまで真剣に悩み抜いて仕事をしていたので、「思い」を固めるまでにはそう時間は掛からなかった。「人々の心豊かな生活・生き方づくり」をサポートする仕事が続けたかったのだ。そして、他人が作ったジェットコースターに乗るように仕事をするのではなく、自然の中に時間をかけて身を置きたいのだと確認ができた。
そして、1991年に「自然と人、人と人、社会と自然のつながりづくり」を経営コンセプトとした北海道自然体験学校NEOS(現NPO法人ねおす)を設立するにいたった。
エコツアーの実施や山、カヌー、ネイチャーなどのガイドが、業務、職業として現れ定着してきた時期は、この時代の大きな転換期と重なるだろう。自然豊かな地にリゾート、観光施設を作ることにより集客を図るハード型観光から、自然の中へ人を連れ出す、自然体験ができる「仕組み」・ソフト型観光の登場である。そういった観点から見ると、1990年当初は、日本のエコツーリズムの胎動期と言ってよいだろう。
しかし、当時は「お金をとって自然を案内する輩は、自然破壊を助長しているのではないか」と新聞に投書が載るような時代であった。これはつまり、自然型観光には、まだツーリズムと呼べるような土台が薄く、自然の中での「有料の遊び」が登場したに過ぎなかったとも言える。
私達にとってのエコツーリズムは、まずツアーの実践から始まり、その基盤となる考え方の必要性を感じ土台化されて来たものである。
それから10数年を経た2002年、ねおすスタッフの研修会にて、次のような ねおすツーリズムの9か条が作られ、現在の活動の指針となっている。
第1条 ねおすツーリズムは「学びの場」を創り提供します。
学ぶ人はツアーに関わる全ての人です。共に学び、気づきという知的なお土産をもちかえることをめざします。
何らかの形で、気づきが日常生活に活かされることをめざします。
第2条 ねおすツーリズムは「つながり」を意識します。
人と自然、自然と地域、人と暮らしのコミュニケーションを促進します。
地域との関わりを意識し、第1次産業、教育活動、福祉、市民活動との連 携を視野に入れます。
第3条 ねおすツーリズムは「環境保全、持続可能な利用」を目指します。
少人数の旅を提案し、自然、地域、文化への影響をすくなくするように配慮します。
第4条 ねおすツーリズムは、世界へ向けて「北海道らしさ」を発信するものです。
北海道らしさの発信を通じて、北海道の持続的な発展に貢献できるように努めます。
第5条 ねおすツーリズムは、「訪問地への愛と責任」を持つものです。
訪問地の自然、人にこだわり、その魅力を引き出し、自律を支援します。
第6条 ねおすツーリズムは、「新しい旅文化」を提案、実践します。
北海道らしい旅のモデルの提案、実践を通じて、「旅文化の向上、旅文化の創造」をめざし、日本あるいは世界へメッセージを発信し続けます。
第7条 ねおすツーリズムは、NPO活動です。
第8条 ねおすツーリズムは、私達創り手のライフスタイルに反映されるものです。
第9条 ねおすツーリズムは以下のことを意識し実践します。
・創り手は、時空のデザイナーたるように努めます。
・メッセージを発信し続けます。
・多様かつ深さを持つ内容に心がけ、ゆとりあるプログラムを提供します。
・すてきな出会いを演出します。
・かかわりを持つ全ての人々が楽しめるように努めます。
・今を楽しみ、旬を味わいます。
・アットホームな居心地の良さを提供し、追及します。
・常に安全を十分に配慮して行動します。
(2001.12.05 ねおすグループ研修会にて策定)
1980年代後半、世の中は好景気に沸いていた。その真っ只中、札幌市内で足掛け3年、複合レジャー施設の観光開発に携わった経験がある。設計段階のコンセプトメイキングから関わり、什器、調度品、設備機器の費用概算を行い、飲食、温泉、スポーツ、ゲーム、ランドリーなど全てのセクションの運営計画を練り、その立ち上げまで第一線で仕事をした。担当者3名で始めた仕事は、オープン時にはパートを加えると500人のスタッフに膨れ上がるものだった。
開業直後はスポーツクラブの現場責任者となり、様々なスポーツ教室の展開を試行錯誤しながらも軌道に乗せ、来場者を対象に自然体験キャンプを「有料」で募集した。これが、私のエコツアー的な活動の始めである。
その後も、保養研修施設や「健康」をテーマにした都市の複合ビル計画など「人が豊かに暮らす」場のハード・施設の事業開発、いわゆるディベロッパーが私の担当だった。しかし、後に「バブルの崩壊」と呼ばれる景気急落が訪れ、レジャー・スポーツ施設のリストラ計画と実施までも担当することになり、自ら立ち上げた教室の閉鎖、つい1年間前に採用した者の人員整理など、リゾート開発の山と谷(光と影)をまるでジェットコースターに乗ったように過ごした。
リストラ実行後には、新たな観光開発の仕事はストップしてしまった。おかげで、移動させられた「暇を持て余す職場」は、「本当は何をやりたいのだろう」と私に考える時間を与えてくれる場となった。しかし、それまで真剣に悩み抜いて仕事をしていたので、「思い」を固めるまでにはそう時間は掛からなかった。「人々の心豊かな生活・生き方づくり」をサポートする仕事が続けたかったのだ。そして、他人が作ったジェットコースターに乗るように仕事をするのではなく、自然の中に時間をかけて身を置きたいのだと確認ができた。
そして、1991年に「自然と人、人と人、社会と自然のつながりづくり」を経営コンセプトとした北海道自然体験学校NEOS(現NPO法人ねおす)を設立するにいたった。
エコツアーの実施や山、カヌー、ネイチャーなどのガイドが、業務、職業として現れ定着してきた時期は、この時代の大きな転換期と重なるだろう。自然豊かな地にリゾート、観光施設を作ることにより集客を図るハード型観光から、自然の中へ人を連れ出す、自然体験ができる「仕組み」・ソフト型観光の登場である。そういった観点から見ると、1990年当初は、日本のエコツーリズムの胎動期と言ってよいだろう。
しかし、当時は「お金をとって自然を案内する輩は、自然破壊を助長しているのではないか」と新聞に投書が載るような時代であった。これはつまり、自然型観光には、まだツーリズムと呼べるような土台が薄く、自然の中での「有料の遊び」が登場したに過ぎなかったとも言える。
私達にとってのエコツーリズムは、まずツアーの実践から始まり、その基盤となる考え方の必要性を感じ土台化されて来たものである。
それから10数年を経た2002年、ねおすスタッフの研修会にて、次のような ねおすツーリズムの9か条が作られ、現在の活動の指針となっている。
第1条 ねおすツーリズムは「学びの場」を創り提供します。
学ぶ人はツアーに関わる全ての人です。共に学び、気づきという知的なお土産をもちかえることをめざします。
何らかの形で、気づきが日常生活に活かされることをめざします。
第2条 ねおすツーリズムは「つながり」を意識します。
人と自然、自然と地域、人と暮らしのコミュニケーションを促進します。
地域との関わりを意識し、第1次産業、教育活動、福祉、市民活動との連 携を視野に入れます。
第3条 ねおすツーリズムは「環境保全、持続可能な利用」を目指します。
少人数の旅を提案し、自然、地域、文化への影響をすくなくするように配慮します。
第4条 ねおすツーリズムは、世界へ向けて「北海道らしさ」を発信するものです。
北海道らしさの発信を通じて、北海道の持続的な発展に貢献できるように努めます。
第5条 ねおすツーリズムは、「訪問地への愛と責任」を持つものです。
訪問地の自然、人にこだわり、その魅力を引き出し、自律を支援します。
第6条 ねおすツーリズムは、「新しい旅文化」を提案、実践します。
北海道らしい旅のモデルの提案、実践を通じて、「旅文化の向上、旅文化の創造」をめざし、日本あるいは世界へメッセージを発信し続けます。
第7条 ねおすツーリズムは、NPO活動です。
第8条 ねおすツーリズムは、私達創り手のライフスタイルに反映されるものです。
第9条 ねおすツーリズムは以下のことを意識し実践します。
・創り手は、時空のデザイナーたるように努めます。
・メッセージを発信し続けます。
・多様かつ深さを持つ内容に心がけ、ゆとりあるプログラムを提供します。
・すてきな出会いを演出します。
・かかわりを持つ全ての人々が楽しめるように努めます。
・今を楽しみ、旬を味わいます。
・アットホームな居心地の良さを提供し、追及します。
・常に安全を十分に配慮して行動します。
(2001.12.05 ねおすグループ研修会にて策定)