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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛省:次期装輪装甲車試験選定, 三菱機動装甲車/パトリアAMV/GDLSピラーニャⅥが候補

2019-09-12 20:10:38 | 先端軍事テクノロジー
■次期装輪装甲車の試験用車種
 小松製作所が開発し評価試験で不採用となった将来装甲車について、将来装輪装甲車導入へ大きな動きがありました。

 防衛省は10日、“次期装輪装甲車の試験用車種の選定について”として96式装輪装甲車後継車両の車種選定開始を発表しました。これは小松製作所が昨年開発し能力不足として不採用となった事を受けての再選定であり、喫緊課題の装甲車ついて、自衛隊での運用を念頭に試験を実施します。防衛省によれば今年度中に試験車種の契約を締結予定とのこと。

 三菱重工製機動装甲車、フィンランドパトリア社製AMV装甲多用途車両、カナダGDLS社製LAV6.0軽装甲車両、以上が選定されています。装甲多用途車両や軽装甲車両という呼称ですが何れも89式装甲戦闘車に匹敵する、若しくは凌駕する強力な装甲車両です。試験については日本国内に実車を揃えて試験を行うのか、調査員派遣かは明示されていません。

 三菱重工が提示しました機動装甲車とは初見ですが、三菱重工製16式機動戦闘車を原型とした装甲輸送車両開発が海外での兵器見本市にて伝えられており、今回改めて自衛隊向け装甲車両として正式に提示されたのでしょう。16式機動戦闘車はフロントエンジン構造を採用し、試作車発表の当時から機関砲塔型や人員輸送型の可能性が指摘されていました。

 96式装輪装甲車は小松製作所により開発され全長6.84mと全幅2.48mに全高1.85m、汎用エンジンとして定評ある360hpの三菱 6D40エンジンを搭載しています。最大の特色は簡素な車内ながら一定の防御力を有し、我が国道路運送車両法に適合する小型さと、9000万円という安価な取得費用で1996年から2016年までの間に389両が調達されました。

 フィンランドパトリア社製AMV装甲多用途車両、八輪式の装輪装甲車です。戦闘重量は増加装甲装着時に28tと大きくなりモジュールシステムを設計時から盛り込んだ新世代の装甲車です。東欧諸国を中心に輸出も好調で、ポーランド軍では30mm機関砲搭載型が採用、フィンランド群配備の一部車両にはAMOS120mm迫撃砲塔型等多様な装備が可能です。

 カナダGDLS社製LAV6.0軽装甲車両、スイス製ピラーニャ装輪装甲車シリーズの最新型で戦闘重量では33tとなっており、GDLSでは30mm機関砲RWS搭載型や40mmCTA機関砲搭載型を提示し、前型ピラーニャⅤは120mm砲型があり第二世代戦車を置き換えた実績があります。原型は1972年に開発、第六世代型である本型は原型二倍以上の重量を誇る。

 海外製装備を主要装備へ採用した事例としては欧州共同開発のFH-70榴弾砲479門、フランス製120mmRT重迫撃砲457門、AAV-7A1水陸両用装甲車52両等、実績はあります。他方いずれも車幅は道路運送車両法車両限界の2.5mや重量20tを越える特大車輌ですが、この範疇では充分な防御力を付与できない、とした陸上自衛隊としての結論なのでしょう。

 82式指揮通信車、陸上自衛隊では96式装輪装甲車の後継車両と共に先行して制式化され232両が調達された指揮通信車の老朽化が進み、更にその派生型である87式偵察警戒車90両についても老朽化が進み、砲塔搭載型を偵察警戒車の後継に当てる可能性もあります。また北海道に集中配備されている装軌式の73式装甲車後継車両も必要となっています。

 82式指揮通信車と96式装輪装甲車後継所要だけで650両、部隊定数から最低でも800両程が必要であり87式偵察警戒車後継や73式装甲車後継に充てるならば更に数は増え、必要数は750両から1000両に達する事でしょう。装輪装甲車である為、過大な期待は出来ずまた海外製装備は一般に考えられる程安価ではありませんが、早急な選定が求められます。

 三菱重工製機動装甲車、フィンランドパトリア社製AMV装甲多用途車両、カナダGDLS社製LAV6.0軽装甲車両、感心するのは漸く陸上自衛隊もNATOやロシア中国が量産し部隊配備を進める第一線級の装輪装甲戦闘車、後者は我が国への脅威ですが、この水準の装備を取得するべく本腰を入れた点です。多次元統合防衛力、掛け声だけではないようですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (13)
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