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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

竹島問題と日韓漁業協定暫定水域 我が国離島不法占拠事案は双方で継続中

2012-08-28 23:02:51 | 国際・政治

◆日本と暫定水域、領土問題無しの韓国主張は矛盾

 竹島は韓国のもので領土問題は存在しない、と挑発している割には日韓漁業協定で暫定水域を設定し、竹島の位置づけを未だに交渉しているのは何故なんですかねえ、というのが本日のお題です。

Kimg_7969_1 現在、日韓漁業境界線は竹島が無いものとして鬱陵島と隠岐諸島との間を暫定水域として我が国も漁業権を有しており、これは日韓が合意したものです。余り込み入ったことは掲載しないつもりでしたが、天皇謝罪要求発言で急激に日韓関係が悪化する中、一つ知識として入れておいてほしい、という主旨での記事。竹島問題、韓国側は領土問題は存在しない、という外交上の発言を行っていますが、実はその韓国側が竹島の領域としての位置づけで我が国と交渉を続けていることは今回の緊張に際し、あまり報じられていません。

Kimg_8130_1 日韓漁業協定暫定水域が交渉され、暫定水域が設定されていることを以て竹島問題は韓国も当事者として交渉に応じている、これ、もう少し報道されるべきでしょう。そしてその結果、排他的経済水域とは別に日韓漁業暫定水域が確定され、竹島周辺12浬を除き鬱陵島と隠岐諸島の間の中間線付近の海域が二冠共に漁業を行うことが出来る交渉が為されたためです。詳しくは後述しますが、排他的経済水域の境界線について、韓国は竹島が韓国領の場合と日本領である場合、無かった場合を含めた日本との外交交渉に応じているのです。自国領というならば交渉に応じる意味と妥協する意味がありません。

Kimg_8180_1 1982年に採択され1996年に発効した国連海洋法条約は、200浬までの排他的経済水域を領域の延長として認め、併せて二か国間を隔てる海洋が双方の200浬を併せた400浬を下回る場合には、等距離中間線、つまり真ん中を境界線とすることが定められました。韓国が強硬に訴えるならば、この時点で竹島と隠岐諸島との間に等距離中間線を引く宣言を行うことも出来たのですが、歴史的経緯もあり、漁業協定の新協定へ交渉が行われるようになったのです。

Kimg_8294_1 この暫定水域画定への交渉について、日本海の日韓排他的経済水域の境界線では、竹島を我が国領域とした場合は竹島と韓国鬱陵島の中間に引かれるものとなり、一方竹島を韓国領とした場合は隠岐諸島と竹島の間に中間線が画定されます。日韓漁業協定そのものは後者を念頭に1965年に日韓国交正常化が交渉された際に、それに先立つ1952年の李承晩大統領による一方的竹島の占拠を日本側が解決を求めた場合、国交正常化と対韓賠償の交渉がとん挫するため、棚上げの方便として結ばれたものです。

Kimg_8389_1 もちろん、日韓漁業暫定水域は境界線の位置が日本寄り過ぎて我が国に不利であるとの指摘や、漁業反故に関する観念の相違から韓国側による乱獲を原因とする水産資源の枯渇という問題もあるのですが、粘り強く交渉を行い、特に暫定水域の境界線を我が国に寄せたものを提示することで韓国の関心を引き、交渉に引き込んだという外交手法は我が国外務省の一定の成果というべきでしょう。実際のところ、憲法上で軍事力を国際紛争の解決手段として行使しない自戒を有している我が国外務省は、それだけ責任感を重く考え、領土問題では譲歩しないのですよね。

Kimg_8460 外交関係とは国家関係の履行の連続により慣習が生まれ、これが国際慣習法として定着してゆくのですが、国家の行動がどのようにつみ重ねられたのか、という事は実のところかなり重要な意味を持ちます。日本と韓国の間に暫定水域が設けられ、この境界線の画定へ韓国が協議に応じた、ということは必然的に竹島の領有権について紛争がある、ということを韓国が繰り返された日韓漁業兼暫定水域交渉の席に就き、交渉を続けたことで行動として認めていることになるわけです。

Kimg_8607_1 竹島問題ですが1952年の李承晩大統領による一方的な領土割譲により竹島は韓国に占拠されました。当時は警察予備隊が保安隊となった時代、海上保安庁もまだ能力が充分ではなく、なによりも日韓国交正常化が1965年まで待たねばなりませんので、領土問題を討議する、もしくは必要な自衛権の行使を行うことが出来ませんでした。実は領域の占拠の期間が長いため、国際法でいうところの時効というものが成り立つのではないか、と思ったことはあったのですが、十年近く前大学のシンポジウムで当時の境港市長さんから係争中という構図をお教えいただき、理解することが出来ました。

Kimg_8684_1 政府は韓国からの挑発行為が繰り返され、半世紀ぶりに国際司法裁判所へ提訴することとしました。領土の実効支配が長く及んでいるのだから、そもそも韓国が同意しなければ国際司法裁判所での手続きに入れないと考える一方で、仮に入ったとして実効支配の期間が長いことから、勧告的意見などでは我が国の主張が通らないのではないか、という危惧を持たれる方はいるかもしれませんが、排他的経済水域で暫定水域を設定し漁業権交渉を行っている一点からも、主権行使ではなく不法占拠が続けられているのみ、という事がわかるでしょう。

Kimg_9009 ただ、一部の識者の方が言われるような武力での竹島奪還、という手法は国際法の観点からさけるべきです。海上自衛隊の能力を考えれば封鎖は簡単ですし、隠岐諸島に地対艦ミサイル連隊を配置すれば160km先の竹島周辺を制圧することは容易、韓国海軍主力の規模から恐らく一両日中に行動中の艦艇を全て無力化することが自衛隊にはできるのですが、国際法上如何なる逸脱も許されない規範とされる国連憲章二条四項の武力行使禁止原則に差し障りますし、この例外とされる憲章五一条の自衛権行使としても、即座の行為として自衛権を行使するには占拠されてより60年は時間がかかりすぎています。ここは外交的な手段を着実に続けるべきでしかありません。

Kimg_9263 オリンピック会場を含め韓国はイラク最前線から八百屋の軒先まで世界中で竹島の韓国僚友の正当性を訴えているのだが、世界で唯一ハーグの国際司法裁判所でだけは訴えないのは何故か、こんな話があるそうですが、日韓間で竹島問題は最大の外交摩擦要素であることは変わりありません。友好関係を隣国として結ぶためにも、やはり決めるべきところは決めなければなりません。何時間でも暫定水域で居ることはできませんし、一方的にどちらかが排他的経済水域の画定宣言を行えば最悪の結果にもつながりかねません。双方の主張は第三者からの意見、常設国際司法裁判所の時代から正統性を有するハーグにて求めるべきと考えるのですがどうでしょうか。

北大路機関:はるな

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