ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『君に届け』

2018-10-16 00:00:13 | 多部未華子









 
2010年に公開され大ヒットを記録した、熊澤尚人監督による東宝映画。椎名軽穂さんの大人気コミック(アニメもロングヒット)の実写化って事で、当初から注目度が高かったですよね。

チョー生真面目で引っ込み思案な性格と、長い黒髪、鋭い眼つき、そして爽子(さわこ)という名前から「貞子」(映画『リング』シリーズに登場する悪霊)呼ばわりされ、クラスに馴染めないでいる高校1年生、黒沼爽子(多部未華子)。

そんな爽子とは対照的に、明るくチョー爽やかなキャラでクラス一番の人気者、風早翔太(三浦春馬)。

入学式の朝に言葉を交わして以来、お互い意識しながら想いを伝えられず、すれ違いを繰り返す2人が、大晦日の夜にやっと告白に辿り着くまでの日々が描かれてます。

つまり、これは恋愛映画じゃなくて、人に想いを伝えることの大切さを知り、その難しさを乗り越えて成長する、少年少女の逡巡を描いた青春映画なんですよね。

私がこの物語に強く惹かれるのは、爽子と風早、そして2人を取り巻く仲間たちの真っ直ぐな生き方と、自分を貫いていく勇気が、茶化すことなく愛を持って描かれてるから。

周りからバケモノ呼ばわりされてるのに、爽子はイジケることなく、人の役に立つことを喜びと感じ、正しいと思ったことは迷わず実行する。

例えば校内のゴミの選別などを、その係でもないのに率先してやるのって、良い子ちゃんぶってるように見られそうで、普通は躊躇しそうなもんです。(ましてや自意識過剰な思春期です)

ところが爽子は迷わない。人一倍鈍感なせいでもあるんだけどw、彼女は一日一善を照らうことなく実践してる。そんな爽子を見て、風早は素直に好意を募らせる。

クラス内で異端児扱いされてる異性に好意を抱くことも又、自意識過剰な思春期には勇気の要ることです。想いはあっても周りの眼が気になって、普通なら封印しちゃいそうなもんだけど、風早は堂々と爽子にアプローチしていく。

てな感じで、マンガだからこそ許される「んなヤツはおらんやろ~」的なキャラクターに、多部ちゃんと春馬くんは見事に実在感を与えてくれました。

これは、現実に多部ちゃんが我が道を行く人で、元より春馬くんが全身爽やか人間だから……つまり「ハマり役」をあてがわれたから……ってだけの話じゃない筈です。

どう表現したら不自然に見えないか、観客に嘘臭く感じさせないかに、お二人とも細心の注意を払って演じておられた事が、メイキング映像を観るとよく判ります。

それがこの映画の成否を大きく左右することを認識する感性と、具体的に形にして見せる技術。まるでイチロー選手みたいに天才肌の努力家である2人を主役に選んだ時点で、この映画の成功は約束されたようなもんです。

主役カップルのみならず、本来なら爽子なんか相手にしないグループ(いわゆるスクールカーストの上層階級)にいるキャラなのに、爽子のかけがえ無い友達になっていく千鶴(蓮佛美沙子)とあやね(夏菜)。

そして、ずっと前から風早への想いを募らせ、突然現れた恋敵である爽子に嫉妬し、罠を仕掛けるも、最後には負けを認めて彼女を応援する胡桃沢(桐谷美玲)。

このお三方もまた、後にそれぞれ主演格に成長する才能と実力を遺憾なく発揮し、パーフェクトに脇を固めてくれました。特に桐谷美玲さんは儲け役だと思うし、ご本人とは真逆のキャラを演じきった夏菜さんも素晴らしいです。

ほか、朴訥キャラ「龍」役の青山ハル君に、担任教師「ピン」役の井浦 新さん。爽子の両親を演じた勝村政信さんと富田靖子さん。原作のキャラに似てるかどうかは(未読なもんで)知らないけど、その役柄には皆さん完璧にハマってます。

(余談ですが、私が生まれて初めて女優さんに萌えたのは、1985年の東宝映画『さびしんぼう』に主演された富田靖子さんなもんで、多部ちゃんとのツーショット、しかも母娘という設定には感慨深いものがあります)

そもそもストーリーが素晴らしく、キャラクターの配置といい、その動かし方(活かし方)といい、青春物あるいは群像劇のお手本にしたい完成度です。

だけどそれは諸刃の剣で、出来過ぎたストーリーってのは時に嘘臭く、時に予定調和を感じたりもしちゃう。それに長期連載のマンガを2時間にまとめただけあって、再三繰り返される「立ち聞き」など、強引かつご都合主義な展開も、気にならなくはありません。

だけど、にも関わらず、何回観てもこの映画には泣かされちゃうんですよね。これほど気持ち良く泣かせてくれる映画って、そうそうありません。

以前のレビューにも書いた通り、創り手や演じ手たちの、各キャラクターに対する温かい愛と、観客に対する明確なメッセージが画面から伝わって来ること。そして堅実で真っ直ぐな脚本と演出に、奇跡的なほど素晴らしいキャスティング。

特に、爽子みたいに極端な設定のキャラを「すぐ隣にいる女の子」と感じさせてくれる、我らが多部ちゃんの魔力には言葉もありません。ただひたすら、愛してますw

未見の方、ラブストーリーが苦手な方、少女マンガに偏見がある方にも是非、一度は観て頂きたい愛すべき作品です。
 

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2 コメント

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一日一善の尊さ (gonbe5515)
2018-10-16 10:27:51
コメント連投失礼します。

>人に想いを伝えることの大切さを知り、その難しさを乗り越えて成長する、少年少女の逡巡を描いた青春映画

まさにそのとおり!素晴らしい表現だと思います。爽子と風早、爽子と千鶴・あやね、龍と千鶴、梅と風早、爽子とおとうさん・・・それぞれがそれぞれの思いを相手に伝えることの難しさ、伝えるための勇気。それらを乗り越えて伝えることの大切さ、成長。

思春期の頃であればこその悩みとためらい。その向こうにある新しい世界を、この映画は表現してくれたと思います。

この映画の爽子は多部未華子さんでなければならなかった。心からそう思います。めったにこういう類のDVDは買わない私ですが、これを買うことへの迷いはなかったです。いつでも取り出して観ることのできる嬉しさ安心感を感じつつ、日々を過ごしています。

レンタルではこうはいかない。

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>gonbeさん (ハリソン君)
2018-10-16 12:24:50
昨今流行りの壁どんスイーツ恋愛映画のはしり、みたいなポジションなのかも知れないけど、実質は古き良き青春ドラマを継承する硬派な作品で、タベリストならずとも大人のハートを揺さぶる映画なんですよね。

たぶん原作も素晴らしく、そのスピリットを大人の事情に合わせて曲解したりせず、忠実に伝えようとされた映画の創り手たち、それを的確に表現されたキャストたちも本当に素晴らしい!

原作への愛とリスペクトがあればこそで、これもマンガ実写化作品の数少ない成功例だろうと思います。まさに永久保存版!
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