ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『はみだし刑事情熱系』2―#02

2019-04-05 00:00:20 | 刑事ドラマ'90年代









 
『はぐれ刑事純情派』の系譜に属するヒューマン刑事ドラマですが、柴田恭兵さん主演って事で、より若く、熱く、アクティブな内容で我々を楽しませてくれました。

全8シリーズの内、今回レビューするのはPART2の第2話。チョイスした理由は、たまたまBS放映されてたからですw

同じ系譜に属すると言っても、以前レビューした『はぐれ刑事~』の第1シリーズから10年近く経っており、ドラマの作り自体にかなり変化が見られます。

まず、撮影ツールがフィルムからビデオに変わってること。そして基本は1話完結ながら、主人公たちのサイドストーリーに連続性を持たせてること等が、現在の連ドラのフォーマットに近づいてます。

また、警視庁特別広域捜査隊のリーダーに扮する風吹ジュンはじめ、前田 愛、黒谷友香、加藤麻里、樹木希林と、レギュラーキャストの半数以上を女性が占めてる点が、時代の流れを如実に表してますよね。


☆第2話『復讐の婚約破棄!』

(1997.10.15.OA/脚本=尾西兼一/監督=一倉治雄)

事件の内容はもう、この際どーでもいいw

以前の記事に書いた通り、事件(被害者や犯人の心情)と刑事の心情とを半ば強引にリンクさせちゃう『太陽にほえろ!』的な作劇が、この『はみデカ』の大きな特徴であり見所だと思うんだけど、このエピソードは違ってました。

事件で描かれたのは男女の愛で、主人公の高見兵吾(柴田恭兵)が抱える問題とは質が異なるもんで、そうなると(少なくとも私は)ドラマへの興味が半減しちゃいます。

だから、メインで描かれる事件や捜査活動よりも、兵吾とその娘=みゆき(前田 愛)との「あしながおじさん」的な関係しか記憶に残りません。いや、シリーズを通して描かれる、この父娘の物語(ある種のラブストーリー)こそが、むしろ本作のメインテーマなんですね。

その証拠に、毎回ラストシーンにテロップ表示される川柳のほとんどが、みゆきに対する兵吾の想いを謳ったもの……だったような気がします。

あの川柳を毎回考えるのって、さぞ大変だった事と思います。『ゆうひが丘の総理大臣』等でもやってたけど、脚本家にとっては地獄なんじゃないでしょうか?(他に担当者がいたかも知れないけど)

それはともかく、この第2シリーズでは、みゆきの反抗期(自我の目覚め)が描かれており、先にレビューした『はぐれ刑事~』と被る要素もあったりします。

みゆきは、兵吾と玲子(風吹ジュン)との間に出来た娘なんだけど、まだ幼い内に2人が離婚してしまい、彼女は父親の顔を憶えてない。

で、警視庁に新設された広域捜査隊で、上司と部下の関係で元夫婦が再会してしまう。優秀で実直な玲子が上司(課長)で、出世の見込みが無いハミダシ刑事の兵吾が部下。

父親が自分を捨てて逃げた悪人だと思ってるみゆきは、玲子の下で働く兵吾を「親友」として認識してる。玲子も兵吾も、今さら本当のことが言えないっていう設定。

兵吾は父親を名乗りたいんだけど、みゆきが「私、一生かけて父親を憎むことにしたの」なんて言い出すもんだから、余計に何も言えなくなっちゃう。その言葉の裏には、父親への想いを断ち切って自立したいっていう、自我の目覚めがあるワケです。

そんな時期だから、母親の玲子とも何かと衝突しちゃう。些細なことで激しく口論する母娘を目撃した兵吾は、大いに気を揉むことになります。

「どうしたんだよ、いつものみゆきちゃんらしくないじゃないか」

「いつもの私って何? 大人の言いなりになってるイイ子ぶった私ってこと?」

「…………」

「私、イイ子になりたかった。お父さんいないこと、お母さん問い詰めたりしちゃ駄目だとか……お母さんと2人だから、しっかりしなきゃとか、いつも周りを気にして生きて来て……そしたら、周りからもイイ子だって見られて、だから……だからっていうか……イイ子になりたかったの。けど、それって違うんじゃないかって……」

「…………」

「だって、そうやってたら、ここ(胸)んとこにモヤモヤしたものがどんどん膨らんでくるのが、分かるんだもん……それがパチンと弾けたら……」

「…………」

「だから、私は私なんだって……自分の足で、ちゃんと立って生きて行かなきゃって。もう周りを気にしてちゃ駄目だって……そう決めたっていうか……なんか、最近ヘンだよね、私……」

「……そんなことない」

「ヘンだよ……自分でそう思うもん」

兵吾がたった一言だけ返した言葉が、以前レビューした『はぐれ刑事純情派』1―#20で安浦刑事(藤田まこと)が娘のユカ(小川範子)に返した一言「そんな事は無いさ」とほとんど同じなのが笑えますw

こんな時、父親は……っていうか、男は無力ですよね。けど、そうやって、ただ黙って聞いてあげるのが正解なのかも知れません。とにかく父親は、男は、大きな愛を持って受け止めるしか無い。このドラマはやっぱり、兵吾とみゆきのラブストーリーなんだと思います。

みゆきを演じた前田愛さんは、当時14歳。『あっぱれさんま大先生』の生徒役で注目されたジュニアアイドルだけど、『はぐれ刑事~』の小川範子さんに引けを取らない確かな演技力で、このシリーズを支えておられました。現在は中村勘九郎さんの妻にして、2児の母親。それでもまだ30台なんですね。

ちなみに第1・第2シリーズのエンディング主題歌を唄ったのは中島みゆきさん。「みゆき」っていう役名の由来かと思われます。
 

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