『五番目の刑事』は1969年10月から'70年3月まで、NET (現テレビ朝日) 系列の木曜夜8時枠で全25話が放映された、NET&東映の制作による刑事ドラマ。
原田芳雄さんが『太陽にほえろ!』よりも先に“ジーパン”スタイルでジープを乗り回す、型破りなキャラクターの若手刑事=原田康二を演じ、それこそマカロニ刑事(萩原健一)やジーパン刑事(松田優作)に多大な影響を与えたであろう重要作です。
『五番目の刑事』っていうタイトルは、原田が東新宿署・捜査係の先輩たち四人(中村竹弥、常田富士男、工藤堅太郎、殿山泰司)に続く五番目の刑事だからというそのまんまの意味。
味わい深い役者さんが揃ってるだけに、チームワークも描かれるし原田刑事があまり活躍しない回さえあるけど、これからご紹介する第14話はほぼ原田さんの一人舞台。
☆第14話『夜霧に散った女』(1970.1.8.OA/脚本=西条道彦/監督=北村秀敏)
刑務所で集団脱獄事件が発生し、脱走囚のほとんどは捕獲されたんだけど、根岸竜二(高田直久)という若い男だけが行方不明のまま。
竜二は、2年前にとある大企業の汚職事件で濡れ衣を着せられ、飛び降り自殺を装って消された根岸係長(立川雄三)の弟なのでした。
そのときに逆上し、大企業の幹部らを襲撃した竜二を逮捕したのが東新宿署の原田刑事。今度こそ兄の無念を晴らすべく竜二は脱獄したんだろうと原田は睨みます。
恐らく竜二は、暗殺された根岸係長の元妻、すなわち義理の姉であるみゆき(佐藤友美)と接触するに違いない。
みゆきは浅草の高級クラブでホステスを務めており、常連客には夫を殺した大企業の幹部たちも含まれてる。そう、みゆきもまた復讐……というより暗殺の決定的な証拠を掴もうとしてる。
原田はまず、管轄外の浅草でみゆきを見つける為、浅草署の名物刑事・権藤(伊藤雄之助)に協力を仰ぎます。
“特別出演”とクレジットされた名優・伊藤雄之助さんは前年6月に脳出血で倒れて闘病し、本作が復帰第1作。
コワモテでよそ者に冷たいベテラン刑事と、相手が誰であろうと物怖じしない原田は当然のごとく対立するんだけど、実は似た者どうしな両者の距離が縮まっていく過程は、殺伐としたストーリーの中で(名優2人の味わい深い演技もあって)絶妙な息抜きになってます。
さて、原田が睨んだ通りみゆきのマンションに潜伏してた竜二は、義姉に銃を向けて逃走! 原田がジープで追跡を始め、助手席にみゆきが飛び乗ります。
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その瞬間、佐藤友美さんの白いパンティーが意図せずチラリ。フィルム撮影の(つまり現場で映像をチェック出来ない)昭和ドラマじゃよくある事で、それを見逃さないが為に我々(昭和世代)は正座してテレビにかじりついたワケです。ましてや当時はミニスカートが大流行で、女優さんたちも覚悟の上でしょう。
もちろん『西部警察』ほど派手じゃないにせよ、けっこうなスピードで住宅街をかっ飛ばすカーチェイスは、まだ規制が緩かったであろう当時ならではかも知れません。
が、残念ながら竜二は再び行方をくらませちゃう。バカだけど可愛い義弟を殺人犯にしたくないみゆきは、原田をまいて大企業の幹部らに接触し、ホステス業でこつこつ集めた情報を駆使して、一気に黒幕のまた黒幕=松村代議士(河村弘二)へと近づいて行きます。
ところがあと一歩のところでアホの竜二が乗り込んで来ちゃう。
「男」に生まれただけでもアホなのに、その上「若い」というアホ条件まで兼ね備えた竜二はアホ中のアホです。
「やめて、竜ちゃん! あなたが殺らなくてもこの男は殺し屋に消されるのよ!」
そう、黒幕にそうさせるのがみゆきの狙いだった。
「根岸係長は、この世で私が選んだ、たったひとりの人よ。私はこの2年間、貴方たちに復讐するために生きて来たわ」
「本当は、殺したいぐらいじゃ飽き足らなかったわ! その皮を剥がして、私がどんなに苦しみ、悲しんで来たかを、生きながらに味わわせたかった!」
当然、みゆき自身もこうなることは覚悟の上、と言うより本望だったかも知れません。
「原田さん、このテープで……根岸係長の無実を……無実を晴らして」
原田刑事の怒り、爆発!
これぞ燃える展開! これこそ真の刑事ドラマ!
その足でラスボス=松村代議士の選挙事務所へと乗り込んだ原田は、令状なしで引っ張ろうとします。
「おい、若いの。首を大事にしろよ」と余裕をかます松村に、原田はこう返します。
「心配いらねえよ、オレの首は5~6本あるんでな!」
「ふっ、バケモノだな」
「バケモノが鬼の顔の皮をひん剥いてやるんだい! 来いっ!!」
萩原健一さんや松田優作さんが『太陽にほえろ!』の内容に不満タラタラだったのは、この原田刑事の八方破れさに比べるとマカロニやジーパンが「甘い」と感じたからでしょう。『太陽〜』が青春ドラマである以上、それは仕方ないことなんだけど。
特に松田さんが原田さんにどれほどカブレておられたか、今回の原田刑事のコスチュームを見れば一目瞭然。(のちにジーパン刑事もまったく同じ格好をします)
当時の原田芳雄さん、弱冠26歳。それでこの渋さに加え、俺ジナル溢れる演技。そりゃ憧れますよね。
今回はそんな原田さんの燃えるアクションが観られた上、伊藤雄之助さんに佐藤友美さんという豪華ゲスト、おまけにパンチラサービスまで!
佐藤友美さんはデビュー作にして主演作の映画『さそり』でも伊藤雄之助さん、そして我らが山さんこと露口茂さんとも共演し、『太陽にほえろ!』#123ではボス(石原裕次郎)とチョメチョメしそうでしない小料理屋の女将にも扮した女優さん。
2000年代まで活躍され、多くの作品に出られてるけど刑事ドラマは他に『秘密指令883』や『東京メグレ警視シリーズ』といった渋すぎる作品しかウィキペディアには記載されてません。
この傑作選DVDの中では比較的太陽寄りのストーリーですが、心理描写が浅いのは、1960年代作品だからか、東映作品だからかは、議論が必要な部分だと思っています。
先にコメントを頂いた『太陽にほえろ!』#366のレビューを久々に読み返すと、つくづく自分は暗かったり複雑だったりする話がニガテなんだなと思いました。好みは人それぞれなのに、ちょっと批判的に書き過ぎましたね。
感じ方も歳を重ねるにつれ変わって行きますから、数年後に観直したらまた違ったレビューになるかも知れません。