私たち ボランティアグループ「わらべ」は
小泉八雲作 「稲むらの火」を 紙芝居で 防災教育の大切さを 訴えている
また 津波後 住民の手による防災と復興という視点からも 意義のある教材である
<津波だ!いなむらの火を消すな>
海辺の村です。
それは、江戸時代の末のこと、11月のはじめ、ある日の夕方でした。
紀州和歌山の広村では、秋の取り入れが終わり、田んぼには、いくつもの稲むらが並んでいました。
「米がたくさんとれたし、いいわらも残ったし、ありがたい、ありがたい。」
村人たちは、こう言って喜びました。
刈り取ったあとの稲わらは、大切な使い道があって、たばにして高く積み上げておきます。
これが「稲むら」です。
そして、村人たちは、そろそろ冬の準備にとりかかっていました。
ごおーっ
地鳴りがして、大地がはげしく揺れ動いたのです。
「おおっ 地震だ! 大地震だ!」
村人たちは、家の外にとび出しました。
「きゃっー。」
「こわいよう。」
子供たちは、親にしがみつきました。
壁がくずれ、かたむいた家から、 けむりのように、ほこりがまい上がりました。
広村をおさめる庄屋として、村人に慕われている浜口儀兵衛も、家族と一緒に家の外に出ました。
「我が家は大丈夫だが、村人たちは無事だろうか・・・。」
空には、黒い雲と白い雲とが、あやしく入り混じって広がり、遠くの雲を切りさくように、するどい光が走りました。
しかも、遠い海の向こうから
ドドン ドドン ドドン
大砲がとどろくような音が、聞こえてきたのでした。
「これは恐ろしいことになる・・・。」
儀兵衛は家族に、
「いますぐ、丘の上、一本松から広八幡神社の方へ、避難しなさい。」
と命じて、自分は家の中に入りました。
「な、何をなさるのですか。」
儀兵衛は、たいまつに火をつけながら、
「津波だ。まもなく、津波が押し寄せてくる。
村中に、危険を知らせて歩く間はない。 田んぼの稲むらに、火をつけて合図するのだ。」
儀兵衛は走りました。
稲むらの一つに、火をつけます。
よくかわいている稲むらは、ぼっと燃え上がりました。
次から次へ、つぎの田んぼへ。
儀兵衛は、走って走って・・・・。
「みんな、早く集まってこいよ。そして丘へ避難するのだ。」
「庄屋さまの所が火事だぞ。」
「庄屋さまに、何かあったら大変だ。」
「それ、火を消しに行け。」
村人たちは、すぐさま集まってきました。
こんな時には、村中一人残らず、火消しに加わることになっているのです。
「庄屋さま~。」
真っ先にやって来た若者たちが、火を消そうとすると、儀兵衛がおしとどめました。
「津波だ! 稲むらの火を消すな。」
「庄屋さま、どうしてですか。」
「津波だ! 津波が来る。 村のみんなが、集まってきたかどうか、確かめるのだ。
そして、一本松から、広八幡神社の方へ、みんなを避難させるのだ。」
「はい、庄屋さま。」
こうして村人たちが、高い所に避難した時、
「あれを見ろ!」
儀兵衛が、海の向こうを指さしました。
「なんだろう!」
村人たちは、恐ろしいものを見ました。
まさに、暗くなりかけた沖の海に、長く黒い帯が広がり、こちらに、ぐんぐん迫ってきます。
どどどどぅん
「津波だ!」
「津波が来る!」
ぐぅうおーん
つづく
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