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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

国家的差別

2022-04-22 20:07:11 | 政治

 昨日の『東京新聞』文化欄に、橋本直子氏の「日本のウクライナ避難民受け入れ 優遇?差別? 他国出身者も同様に」があった。

 ロシア軍によるウクライナ侵略により、多くのウクライナ市民が難民となって国内外に移動している。その一部が日本にも来ている。当然であるが、避難民の生活が困らないように手厚い保護を行うべきである。

 だが、私は大きな疑問を持つ。他の地域から日本に避難民としてやってくる人々に対して同じような対応をしているか、というと、決してそうではない。そもそも日本政府は日本に逃れてきた外国人を難民として認定することをせず、入管施設に閉じこめている。それだけでなく、「実習生」という方式での低賃金労働力(奴隷労働に近い)は積極的に受け入れる。語学の教員なども受け入れてはいるが、そうでない外国人に対してはきわめて厳しい対応をしている。排外主義と言ってもよいくらいだ。

 ウクライナだけではなく、ミャンマーやシリアなど、紛争が起きているところは多い。そういうところからの避難民も、ウクライナ人同様に迎え入れるべきである。

 国家が差別的対応をしているといってもよいだろう。

 この背景には、近代以降の日本の意識、欧米崇拝・アジア蔑視という差別的な意識がある。これがなかなかぬけない。日本の難民対策、あるいは外国人の入国「管理」も、その意識が強いように思える。

 この文の筆者である橋本氏は、「ウクライナ避難民の支援策は、他地域出身者にも公正に提供されるよう法制化すべきだ」と末尾に記しているが、その通りである。

 日本国家は差別的な対応をするな!といいたい。

 

 


腐敗を放置すると・・・

2022-04-22 10:00:50 | 

 わが国も政界、経済界、官界など、腐敗は至るところにころがっている。腐敗する輩をつないでいるのは、利権である。要するにカネ。カネは人間を堕落させる。一定の地位以上の者は、際限なくカネを求める。庶民が、そんなにカネを稼がなくても・・・と思っていても、彼らは際限ない欲望の亡者である。カネ、カネ・・・・・そしてカネと一緒に地位も名誉も流れてくる。彼らはそれを掬うだけだ。

 カネを得るためには、他人がどうなろうと無関心だ。とりわけ庶民などは、金もうけの手段としてしか存在価値はない。庶民の生活なんかには関心はない。

 さて、ロシアはその腐敗の極にある。おそらくプーチンによって殺されたロシアのジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤの『ロシアン・ダイアリー』(NHK出版)を読んでいるが、その腐敗は凄まじい。すでにロシアは法治国家ではなく、プーチン独裁国家といえるほどだ。行政はもちろん、司法も立法も、すべてプーチンの意向に逆らわない。

 プーチンは大統領として、最高権力者としての地位を確保するために、敵対者を殺すだけではなく、民衆を殺しても平気である。現在のウクライナ侵攻は、今までプーチンが行ってきたことをそのまま実行していると言っても過言ではないだろう。

 経済についても同様だ。こういう記述がある。

 クレムリンのイデオロギーは、表向きには人民に代わって国家が経営権を握る「国家経済」の形成を必要とする。しかし一皮剥けば国家経済は、主たる政府役人が新興財閥である官僚経済なのだ。役人は地位が上がれば上がるほど有力な新興財閥となる。

 "国家"新興財閥という考えは、プーチン自身と彼を取り巻くごく狭い範囲のグループものだ。背景にあるのは、ロシアの主要な歳入は原材料の輸出から得られるのだから、国が天然資源を支配しなければならない。つまり、「朕は国家なり」の精神だ。彼らは自分たちが国中でいちばん切れ者だから、残りの人びとにとって何が良いか、これらの歳入をどう使うかをいちばんよく知っていると考えている。・・・・

 これらの超独占企業は、今や新興財閥となった元秘密警察の連中に支配されている。プーチンはこれらの元秘密警察上がりの新興財閥しか信用しておらず、互いに諜報機関出身であるから、人びとにとって何が一番有益かを自分たちがいちばんよく知っていると考えている。何であれ彼らの手を通さねばならないのだ。プーチンとの取り巻きもおそらく彼自身も、天然資源を制するものが政治権力を制すると信じている。ビジネスがうまくいく限り、権力の座もついてくるというわけだ。

 これは新興財閥に関する記事であるが、ロシア軍の、かつての日本軍を彷彿とさせるような新兵イジメなども記されている。また年金支給を打ち切ったり、でたらめの政治をしているさまも描かれる。

 ロシア国家は、ロシアの民衆をだまし、利用し、暴虐の限りを尽くしている。それが本書には描かれている。カネのために、官僚も、司法機関の者たちも、メディア関係者も、みなプーチン政権のご機嫌を伺っている。プーチンのご機嫌を損なわなければ、カネが入る。上意下達の世界は、また贈収賄の世界だ。腐敗が進むと、取り返しのつかない地点にまで、国を、民衆をもっていく。それがロシアだ。

 ロシアを理解するための最良の本だと思う。